大ヒットドラマ「SKYキャッスル」
2018年11月から韓国のJTBCで放送された「SKYキャッスル」は、最高視聴率23.7%を記録し、当時「トッケビ」が持っていたケーブルTVドラマの最高視聴率を更新した大ヒットドラマ。私も、名作だと評価している作品の一つです。
この作品は、韓国の社会でも上位0.1%に位置する上流階級の家族たちが住む「SKYキャッスル」という高級住宅街で繰り広げられる、受験戦争をめぐる物語。
この作品、脚本と役者の演技力が突出していて、日本人が見ても十分に楽しめるのですが、SNSを見ていて感じたのは、日韓で視聴者が注目したポイントや評価が微妙に違うということ。
「SKYキャッスル」は現実的?非現実的?
こちらが「SKYキャッスル」の日本版の予告編。
「SKYキャッスル」をまだ見たことのない方の中には、こういったイメージをお持ちの方も多いのではないかと思います。
確かに描き方は、刺激的ではあるのですが(役者の演技がうまいので余計に)、「SKYキャッスル」はユーモアを交えながらも鋭く社会問題に問いを投げかける、リアリティとメッセージ性を兼ね備えた作品です。
日本の視聴者の方で、SNSで「パラサイトと似た部分がある」とコメントしている方がいましたが、それも一つの表現かもしれません。
展開に一気に引き込まれて、時にはブラックコメディ的要素もありつつ、最後は考えさせられる感じ。
また、
「SKYキャッスル」驚異的な視聴率上昇
「SKYキャッスル」が、観始めたら止まらなくなる中毒性があるドラマであることを示しているのが、韓国での視聴率の推移。
1話は1.7%だった視聴率が、右肩上がりに上がっていき、最終話ではなんと23.8%という驚異的な上昇を記録しました。
私もブログで様々な作品の視聴率を紹介していますが、ここまで初回から視聴率が上がった作品は他に見たことがありません。
※話数の多さで観るのを躊躇している方、元は20話なので、1話ずつは50分前後の短めになっていると思われます。
「SKYキャッスル」受賞歴とキャスト
「SKYキャッスル」は、2019年に全放送局のドラマの中から選ばれる百想芸術大賞にてTV部門演出賞を受賞。
*脚本、作品賞をとってもおかしくない話題性でしたが、同年はこれまた名作の「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」が脚本・作品賞を獲った年でした。
俳優では、イェソ役のキム・ヘユンが新人賞を、
チャン教授役のキム・ビョンチョルが助演賞を、
主役のイェソ母を演じたヨム・ジョンアが最優秀演技賞を受賞しました。
韓国でも特に絶賛されたのが、俳優たちの演技。「演技の穴が一人も居ない」というぐらい、助演の役者まで全員が安定的な演技力でドラマを盛り上げました。
いわゆるスター俳優が居なくても、初回視聴率が1%でも、本当に面白くて上質なドラマであれば、しっかり評価されるのが韓国ならでは。
そして、このドラマに出演した若手俳優たちは、その後、ぞれぞれ大人気になっています。
双子のソジュン役を演じたキム・ドンヒは、その後「梨泰院クラス」でもブレイクし、「人間レッスン」では主役に抜擢。
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なお、制作発表会で、監督が「特にこだわった」と話していたのが、表情演技。
ディテールまで名俳優たちとこだわって作り上げた各シーンは、演技も演出も視聴者を唸らせる水準。
予告編では、刺激的なシーンが使われるので一見、昼ドラみたいな印象を受けるかもしれませんが、このドラマの面白さは派手なシーンよりも、各キャラクターが抱える心の闇を描く繊細な演出や、メッセージが込められたセリフにこそあります。
俳優たちの素晴らしい演技力と、視聴者を夢中にさせる中毒性、それでいて社会問題に問いを投げかける深いメッセージ性を兼ね備えた韓国ならではの名作「SKYキャッスル」、まだ見ていない方は、是非観てみてください!
「SKYキャッスル」どこまでがリアル?(以降ネタバレあり)
「SKYキャッスル」で描かれたことは、どこまでがリアルだったのでしょうか…?ここからは、ネタバレありで韓国で当時話題になったことを振り返ってみたいと思います。
放送終了後のオフショット(イェソ家族編)
「SKYキャッスル」に登場するような家族は、ドラマの設定の通り、上位0.1%しか存在しない超セレブ層ということで、一般的な家族とはかけ離れた存在ですが、ドラマの中に登場した設定には、実はかなり実話をベースにしたものが含まれていました。
まず、学校の試験問題流出については、2018年に淑明女子高等学校で実際に起った事件をモチーフにしていると言われています。
校内で権力を持つ教務部長の双子の娘が、それぞれ文系と理系で全校1位の成績を取りましたが、実際は父親が問題を入手し、答えを娘たちに教えていた事が発覚した事件。
これにより、教師の親と子供が同じ学校に通えない制度が作られるなど、大きな話題となった事件でした。
また、ドラマでセリがハーバード生を偽っていた設定。「そんなことってあり得るの!?」と思いましたが、これもなんと、実際にあった事件をモチーフにしたんだそう…!
実際には似たような事件いくつかあり、複数を組み合わせてモチーフにしたのではと考えられますが、ドラマの設定と近いのは、2007年に起きたスタンフォード大学での事件。
韓国人学生が8ヶ月間、学生のフリをしてキャンパスの寮で生活をしていましたが、大学でアルバムを作ることになったときに偽学生であることが発覚したというセリの設定とかなり近い事件が実際にあったのです。
実際の事件でも、セリと同じように親や周囲からの名門大学進学に期待する重圧に耐えられずに、そのような嘘をついてしまったと言います。なお、海外の名門大学では、韓国人学生に限らず、結構こういう事件が起こるんだそう。
また、ドラマの中で描かれた、勉強のストレスで万引きをする子どもたち。
こちらも、ドラマ放送後に、ある番組でコンビニの店主がインタビューに答え「実際にある話」と語っていました。
万引きは一例として、受験や勉強の過剰なストレスは、様々な形で子どもたちの心に影を落としているといいます。
ドラマを観たほとんどの韓国視聴者にとってSKYキャッスルの住人のような生活は「未知の世界」ですが、ドラマで描こうとした受験戦争や、自分が叶わなかった夢を子どもに託す親の様子などは、とても身近なものであり、考えさせられる内容であったと言えます。
韓国では、ドラマが大ヒットとなり「あれは実話なのか?」ということで、実際のセレブママや、入試コーディネーター、精神分析学者などにインタビューする番組や記事が多く出ました。
衝撃的だったのは、セレブママがインタビューで「SKYキャッスルで描かれているのはまだ甘い」と話していたこと。
ドラマで、イェソママが、ヘナが生徒会長を辞退するように仕向けるシーン。「実際そういうことはありえますか?」という質問に、セレブママは、「それぐらい、なんてことない。実際はドラマよりもっと過激なこともありました」と答えていました。
インタビューを受けてやや誇張して話しているのかもしれませんが…ひぇ〜〜〜
ちなみに最近、日本でも「SKYキャッスル」を彷彿とさせるような事件の報道がありましたね。医学部進学を9年間強要し続けた母親を娘が殺害したという事件。
最近の韓国ドラマでは、こういった特定のテーマを扱ういわゆる”ジャンルもの”の場合、脚本を構成する際にチームを組んで徹底した調査が行われると言います。
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制作陣のインタビューなどを観ていると、今回のように「実際にあった事件」をモチーフにしているケースはとても多いです。
「愛の不時着」も、パラグライダーで北朝鮮に不時着なんてありえない!?と思いますが、実は実際にあった事件がモチーフになっています。
「SKYキャッスル」韓国で話題になったこと
「SKYキャッスル」のドラマそのものに対することで、放送当時、韓国で大きな話題となったのは、やはりキム・ソヒョンが演じたキム・ジュヨン先生のキャラクター。
インタビューによると、キム・ソヒョンは、役づくりに当たり、きらびやかな「SKYキャッスル」の奥様たちをコントロールする存在であるキム・ジュヨン先生をどのように表現するか?について、かなり悩んだそうです。
そこでまず決めたのが、髪型とファッション。先生の衣装は「黒」で統一することで、威圧感を演出したいと考えたそうです。「トッケビ」でも出てきた”死神”のイメージから黒を選んだんだとか。
ちなみに、最も一緒のシーンが多い、イェソママのヨム・ジョンアが、キム・ソヒョンより背が高かったそうで「二人で向き合うシーンはなかなか迫力が出ないので、ハイヒールが必須だった」とも話していました。
二人の身長差、各シーンで確認してみると面白いです。
なお、日本語字幕ではどこまで雰囲気が伝わったかわかりませんが、キム・ジュヨン先生のセリフや声のトーンは、通常のキャラクターに比べてもかなり独特なものがありました。
キム・ソヒョンも「セリフ言い方が一人だけ時代劇のようで、かなり苦労した」と言います。
特にイェソ母・ハン・ソジンとの会話出でてきた、
”전적으로 감당하시겠습니까?(すべてを引き受けられますか?)”
というセリフは、キム・ジュヨン先生のモノマネをするときの定番のセリフとして、話題になりました。
と、ドラマでは近寄りがたくカリスマのあるキム・ジュヨン先生を演じたキム・ソヒョンですが、ドラマヒット後はかなり多くのバラエティ番組にも出演しました。
なんとこちらの番組では、イェソ役を演じたキム・ヘユンと一緒に「江南スタイル」を踊っています(笑)
なお、バラエティといえば日本のNetflixでも見られる「知ってるお兄さん」にも、ジニ役を演じたオ・ナラと一緒に出演しています。
二人のキャラクターの口癖で、どっと笑いが起きたシーン
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「SKYキャッスル」結末に対する議論
さて、韓国で最も話題になったことは、実は最終話について。
放送終了後のオフショット(チャ教授・家族編)
SNSを見ると、日本では「ハッピーエンドで良かった!」という声が多く見られましたが、韓国では最終話はかなり否定的な意見が多かったのです。
最終話だけ、急にみんなが善人になり全てがハッピーに終わってしまったため、「SKYキャッスルではなく、EBSキャッスルになってしまった」と言われたほど。
*EBSは韓国の教育放送。教科書的な内容になってしまったというような意味です。
また、あまりにも最終話だけ違うと「作家が拉致された説」まで飛び出しました(笑)
放送終了後のオフショット(入試コーディネータ編)
なお、韓国視聴者からは主に以下のような点の指摘が多く見られました。
ヘナ殺害の真相が明らかにされなかった。刑事が言っていた「ウジュ以外が犯人であるためにはいくつもの偶然が重なければならない」を覆す真相を説明すべきだった。
学校で子どもたちが突然授業をサボってウジュを追いかけるシーンはちょっと見てて恥ずかしかった。演出が古い。
イェソおばあさんと母が、いくらなんでも突然寿司を分けてあげるほどの仲になるのはおかしい。
ウジュが人生を考えると言って、ヨーロッパ旅行に行くという展開が、結局「金持ちの子である」ことを再確認させてしまい残念だった。
*出典:ハンギョレ:2019-02-02記事よりお借りしました。
また、一部の視聴者から「SKYキャッスルの最終話の再撮影を求める国民請願」が出されるなどの動きもありました。
放送終了後のオフショット(ウジュ家族編)
作品を見る目が厳しい韓国視聴者ならではの評価ですが、それだけ最終話の直前までの評価がとても高かった証とも言えます。
「SKYキャッスルは残念さが残る作品。名作にはなりきれなかった」という声がとても多く、名作だと期待したからこその厳しい反応だったと思います。
確かに「SKYキャッスル」のような刺激的な展開で視聴者を惹き付けるタイプの作品の場合、最後の終わり方はとても難しい。
「SKYキャッスル」の後に、視聴率の記録を塗り替えた「夫婦の世界」では、全てをハッピーエンドにしたり、語りすぎるのではなく、余韻を残した開かれた結末が印象的でした。
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原作がある作品ではありましたが、同じ放送局でもあるので、今思うとジャンルが似ている「SKYキャッスル」で出た視聴者の不満の声を教訓にした部分があったのかもしれません。
こうやって毎回視聴者が、率直で鋭い意見を発信し、制作陣がそれを次の作品作りに活かすというサイクルこそが、韓国で面白い作品が生まれ続ける秘訣だと言えます。
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とはいえ、「SKYキャッスル」の終わり方は、日本の視聴者にとってはある程度満足できる内容だったのではと思いますので、この作品は日本でも多くの方におすすめしたい名作の一つです。
まとめ
ということで、今回は名作「SKYキャッスル」について、関連情報をご紹介しました…!
今後は、過去の作品の中から、特にオススメなもの・私が深くハマったものについては、少しずつこのように関連情報などを紹介していきたいと思います!
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