「賢い医師生活2」9話をさらに深く:字幕の狭間解説・演出意図を考察

韓国在住K-dramaライターMisa
「賢い医師生活2」9話を視聴済みの方にむけて、日本語字幕では伝わらないニュアンスの解説や演出意図を考察します!

「賢い医師生活2」では、細かい部分まで意味をもたせた演出、セリフや、日本語字幕では伝わりきれない小ネタなどが満載!

シーズン1に引き続き、韓国視聴者の間で話題になったことなどを参考にしながら、作品をさらに深く楽しむための私なりの解説・考察を行っていきます。
※完全ネタバレありなので、視聴済みの方が対象の記事です※

「賢い医師生活2」8話に関する記事はこちら

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「賢い医師生活2」 9話のテーマ

「賢い医師生活2」9話では、なかなか普段はスポットが当たりにくい、見えないところで患者を支えている人たちの努力と苦労と、それに対する感謝が描かれていました。

8話に続いて、今回も1時間45分という長尺で、8話に続くレジェンド回だったのではないかと思います。

豪華なカメオもたくさん出演し、物語の展開としては、いよいよ最終話に向けて、これまでの伏線が少しずつ回収され始めました。

そして、40代の手つなぎにあんなにときめくとは…!!!(笑)

なお、ここまで来ると、登場人物たちの細かな心の動きが、セリフや演出で表現されている部分が増えているのですが、その分、日本語字幕ではなかなかそれが反映されていないと感じる箇所が多くありました。

ということで、今回もより作品の理解が深まるように、そのあたりを補足しながら、考察していきたいと思います!

イクスンとジュンワン

9話では、シーズン2を通じて、切ない状況が続いていたイクスン&ジュンワンの비둘기(ハト)カップルにやっと”時”がやってきました…!

バスでの再会

8話の最後で、バスの中で再会したイクスンとジュンワン。バスの出発前に、誰も他に乗客がいないバス内で「あっ…」とお互いに気がついた二人ですが、9話冒頭の様子を見ると、お互いあまり話さず、バスが出発したようです。

8話のテーマ曲だった「今でも美しいだろうか」の99ズバージョン(チョ・ジョンソクボーカル)が流れながら、バスが出発して40分ごろの二人の様子が映し出されます。

この時、イクスンがつけているBluetoothイヤホンは、もしやシーズン1の11話でジュンワンがプレゼントしたもの!?と思いながらも、あの時はややシルバーのサムスンのイヤホンだったので、同じものかどうかは映像からは確信できませんでした。

そして、イクスンのスマホの画面からは、「今でも美しいだろうか」を聞いていることが分かります。

8話でイクスンのスマホの画面が気になっていた視聴者に、ここで画面を写してみせることで「あれ?普通の待受じゃん…?(イギリスの写真?)」と、一度欺く演出意図もあったかもしれません。
実際、私もそう思いました(笑)しかし、よく考えたら、スマホはロック画面と、ホーム画面と両方ありますからね!
そして、曲の歌詞の内容を振り返ってみると…
僕は変わった 前ほど笑わずに
ちょっと痩せた 君と居た時より
彼はどう?
僕たちが一緒に過ごした日々を忘れるくらい
優しくしてくれるかな?
幸せになれよ
僕の足りないこところを 埋めてくれる
良い人に出会ったのだから
ジュンワン目線のような曲ですが、別れた相手を恋しく思い出す曲ということで、イクスンもジュンワンを忘れられない想いをこの曲に重ねて聞いていたのでしょう。
ちなみに、昌原からソウルまで、深夜バスだとだいたい約4時間かかります。12時に出発したバスがソウルに到着するのは、明け方の4時なわけです。
この日は火曜日。通常なら、明日の仕事のためにバスで一眠りするところですが、到着したときのジュンワンを見ると、おそらく一睡もできず、「到着したらイクスンになんて話しかけるか?」をずっと考えていたのではないでしょうか。
そして、盤浦高速バスターミナルに到着したタイミングから、「今でも美しいだろうか」はセブンティーンバージョンに。

後ろの席のイクスンのもとに行くジュンワン。

色々聞きたいことは山ほどある。でも、平日の朝4時に、イクスンも疲れているだろう。色々話すのは別の日にして、とりあえず今、どこに居るか?を確認しよう。別の日に会うのも、もし、イクスンが嫌なら諦めよう。とにかく、あまり負担をかけない言い方にしなければ。
4時間の間、そんなことを考えに考え抜いたということが、ジュンワンのセリフからは読み取れます。

イクジュン予約シーンの神演技

なお、このときの深夜バスでの再会は、やはりイクジュンのアシストによるものだったことが明かされましたね!

しかし、イクジュンのアシストはあくまで最後のひと押し。

イクジュンがイクスンから「12時の深夜バスに乗る」とメールを受けた直後に、ジュンワンから電話がかかってきたこと。

その日、KTXで帰るはずのジュンワンが、家族でお酒が盛り上がって、たまたま深夜バスに乗ることになったこと。イクジュンがその日その時間、病院ではなく家でバスを予約してあげられる状況にあったこと。

何か一つでも抜けていたら、タイミングが合わなかったら…と考えると、やはりイクスンとジュンワンは「再び会う運命だった」のではないかと思います。

ジュンワンと電話しながら、イクジュンが高速バスの予約をするシーンで、チョ・ジョンソクの細かい演技が素晴らしいなと思った部分があります。

イクジュン「空席はあるかな」
ジュンワン「一番早いやつで」
イクジュン「一番早いの?」
ここで凄いのがイクジュンの「一番早いの?(제일 빠른 거?)」というセリフの言い出しの部分。
「제일(ジェイル:一番)」の発音に力が入って噛み気味になっており、イクジュンの慌てている心理状況を演出しています。
この時「空席はあるかな」と言いながらも、頭の中では「イクスンと同じ12時のバスを予約しよう」と思っていて、実はすでに12時のバスのページを開いて操作をしている最中。
やはり、その前の便も十分に空席あり
そこに、ジュンワンから「一番早いやつで」と言われたので、慌てててしまったわけです。
なお、9話ではこの予約シーンが前半と後半の2回出てきたのですが、実は前半と後半で、使われてるテイク(何回か演技したうちに使用した部分)が微妙に違うことに気がついてしまいました(笑)
私が「一番早いの?(제일 빠른 거?)」の演技がすごいなと思ったのは、後半部分を観た時。
後半では「ジェ、ジェイル」と言っていて明らかに噛んでいて、イクジュンが慌てている様子が伝わってきます。
「8話のジュンワンのタクシー場面で電話越しに聞いたときには、こんな慌ててる感じわかなんかったけど、ここ演技細かい!」と思いました。
一方、前半で出てきたシーンのほうで観てみると、「ジェ」に力が入ってるぐらいで、噛んではないんです(笑)
なので、前半と後半は、どうやら使われたテイクが違うようです!
多分、ディテールにこだわるチョ・ジョンソクは、嘘をついている感じを表現しつつもオーバーでないように、この台詞の言い方はすごく神経を使って何度か演技したに違いありません。
そして、過去のシーンを少しずつ何度も見せるのはシン監督の得意技。前半と後半でわざと微妙に演技が違うテイクを使ったのも意図的かもしれません。
その後の、「早いのはいっぱいだ」という部分は、実はもう12時の便の予約を完了したのに嘘をついている状況。
イクジュンは、少しでも自然に振る舞おうと、誰も観てないのに「え〜っと」と席を探すリアクションをしているのが面白いですね(笑)
そのあと、イクジュンが「KTXがなくなるまで誰と飲んでた?」と、急に話題を変えたのも、嘘をごまかすためのものなわけです。

イクスンの歌

少し話は変わりますが、イクスン役のクァク・ソニョンさんは、元々はミュージカル俳優。

今回、久々にイクジュンとラップの掛け合いをするシーンがありましたが、これはふたりともミュージカル経験豊富な俳優だからこその演出。

Twitterの方では、皆、実はミュージカル俳優である、ミナ先生役、ジェハク先生、ソンファのミュージカル舞台の様子も紹介しているので、気になる方は、観てみてくださいね!

二人のメールのやりとり

そして、結局週末に改めて会うことにしたイクスンとジュンワン。約束は土曜日6時にカロスキル。

リマインドメールをするジュンワンのスマホの画面をよく見ると、いくつかのことが分かります。

まず、リマインドメールの前には、こんなやりとりがあります。
イクスン「これが私の番号よ」
ジュンワン「うん、保存しておくよ」
このやり取りからは、「イクスンがジュンワンと別れた後、携帯番号を変えた」ということがわかります。
単純に、イギリスにいく前に韓国の番号は停止していて帰国したタイミングで、新しい番号を契約したのか。
それとも、ジュンワンともう連絡を取れないように、あえて変えたのか、はわかりませんが、少なくとも、別れてから今までの間「イクスンは連絡しようと思えば出来たが、ジュンワンは連絡したくてもできない状況だった」ということが分かります。
そう考えると、やはり6話でジュンワンが珍しくイクジュンに「元カノが忘れられない」と言ったのも、イクジュンが自分たちの関係を知っていることを理解した上で、「イクジュンを通じてイクスンに自分の思いが届くように」もしくは「イクスンになにかあったら自分に伝えてくれ」というイクジュンへの間接的なメッセージだったように思えてきます。
そして、ここでジュンワンが登録したイクスンの登録名にも注目↓
ㅂㄷㄱ
これは〜!韓国語学習者の方なら、ピンと来たのではないでしょうか。
そうです、비둘기(ハト)の文字の一部ずつを登録してイクスンを意味していますね。
自分のケータイでも、他の人にはわからない形で、イクスンの名前を登録する用心深いジュンワン。名前を見るだけで思い出す、イクスンに対する切ない気持ちの現れでもあるかもしれません。
なお、10話の予告でも、ジュンワンが、このㅂㄷㄱに電話をかけようとするカットが含まれています。

イクジュンの優しい嘘

いよいよ約束の土曜日になりますが、体調が思わしくないイクスン。

病院へ行かなければ行けない状況ですが、「家の前にも大きな病院が…」とイクスンは明らかにユルジェ病院に行くことを避けようとします。

イクジュン「ジュンワンに会っただろ?」
イクスン「ジュンワンさんがお兄ちゃんに話したの?」
イクジュン「ああ、バスの中で会ったとね」
この部分、イクジュンの最初のセリフが、日本語字幕では大きく改変されていて驚きました。
※9/11追記:この部分の字幕、現在は元のニュアンスに近い形に修正されていました…!(良かった><)
「ジュンワンに会っただろ?」の部分は、実際は「ジュンワン、お前が韓国にいるの知ってる」と言っています。(英語字幕もこの訳)
文字数制限のせいで致し方なかったのかもしれませんが、ここでイクジュンはどう考えても「ジュンワンに会っただろ?」とは言うはずはなく、この改変は作家の意図とずれてしまっていると感じました。
理由は二つ。まず、イクジュンは自分が二人が同じバスに乗るようにアシストはしましたが「実際に二人が会ったのかどうか?」は知らないはずです。
これまでイクジュンがイクスン、ジュンワンそれぞれとそういった話をしてこなかったことから考えても、バスで会ったことをどちらかがイクジュンに話すとは考えにくいです。
イクジュンが二人が週末に会うことを知らなかったことや、イクジュンがジュンワンに電話でイクスンが救急室に居ることを「まあ、そういうことだ」という言い方で伝えるシーンもそれを物語っています。
また、万が一、会ったことを知っていたとしても、こっそり自分が仕掛けた深夜バスの再会につながるようなネタを、自分から話すとは考えにくいというのがもう一つの理由です。
これまでの行動を見る限り、あくまで恋のキューピットは二人にわからないようにするのが、イクジュンの流儀。

そして、特に親しい人に嘘をつくときにやや慌ててしまう自分の癖まで把握していると思われるイクジュンは、いくらユルジェに行くことを説得するためとは言え、自分からあの深夜バスの話を持ち出したくはなかったでしょう。
自分がイクジュンの立場だったと考えても、せっかく自分がこっそり仕掛けたのに、ここで自分から「お前たち会っただろ?」とは聞かない気がします。
とすると、イクジュンはあくまで自分から深夜バスでのことには触れずに、「ジュンワンのことは気にせずユルジェに行け」とイクスンを説得するシナリオを考えたはず。

おそらく、イクジュンの頭の中のシナリオは、

「ジュンワン、お前が韓国にいるの知ってる。こないだお前がウジュと電話代わった時、車で横で聞いてたんだ

のほうだったのではないでしょうか。

しかしここで、イクスンからのまさかの返しに慌ててしまいます。
日本語では「ジュンワンさんがお兄ちゃんに話したの?」となっているイクスンのセリフは、実は
「ジュンワンさんがお兄ちゃんに私達が会ったこと、話したの?」

と、自ら「会った」と言っているので、ここでイクジュンのシナリオが崩れたわけです。

イクジュンはこの瞬間、「実際に二人が会えたんだ」という事実を思いがけず知って動揺しつつ、「ジュンワンから聞いたのか?という問いになんて答えるのが正解なのか?」を頭フル回転して考えたことでしょう。
最初のシナリオ通りなら、「会ったことは知らなかった」という演技をすべきですが、それもややこしくなりそうだな…そんな考えを巡らせたに違いありません。
「ああ、バスの中で会ったとね」と答える前に、一瞬イクジュンが固まっている演技が、その動揺を細かく表現しています。
ちなみに、この「ジュンワンからバスで会ったことを聞いた」というのは、先ほど説明したとおり、やはりイクジュンの嘘と考えるのが自然でょう。
このシーンをもう一度、今までの解説と作家の意図を生かした訳で見るとだいぶ印象が変わってきます。
イクジュン「ジュンワン、お前が韓国にいるの知ってる」
イクスン「ジュンワンさんがお兄ちゃんに、私達が会ったこと話したの?」
イクジュン「…。ああ、バスの中で会ったとね」
実は、イクスンの立場から冷静に見ると「何でお兄ちゃん、最初から”会っただろう?”って言わなかったの?」と違和感を感じてもおかしくないのですが、このときのイクスンはそんなことまで考えが及ぶ状況ではなかったはず。
二人のその時の状況と性格を考えると、これこそが本当にリアルな会話であり、セリフに現れない部分まで細かく設定して台本を作り上げるイ・ウジョン作家が考え抜いて生み出したセリフでしょう。
メイキング映像などを見ていると、俳優と監督が台本を見ながら、セリフの意図やその時の人物の感情について、意見を交わしながらシーンを作り上げている様子をよく見かけます。
おそらく、ここでイクジュンがあえて「ジュンワン、お前が韓国にいるの知ってる」という遠回しな言い方をした意図については、監督とチョ・ジョンソクの間でも会話がなされたでしょう。
だからこそ、「ああ、バスの中で会ったとね」の前の「…。」の演技が生まれたのだと思います。
しかし、日本語字幕のような形にしてしまうと、この折角のチョ・ジョンソクの細かな演技が活かされないし、これまで細かく積み上げてきたキャラクターの特性や人間関係を無視した違和感のある会話になってしまいます。
このように緻密な台本・演技・演出によって、素晴らしいシーンが作られているので、字数制限はあるのは理解しながらも、作家や役者の演技の意図を活かした訳であってほしいと思います。

救急室での二人

こうして、イクスンをユルジェに連れて行くイクジュン。偶然入り口で出会ったト・ジェハク先生の一言から、今日イクスンの約束の相手がジュンワンだったということを知ることになります。

ここからの、イクジュンのスーパーアシストは凄かったですね!!!(笑)

「今日、イクスンと約束してたんだろ?」と聞くこともなく、「妹が救急室にいる。点滴が終わるまで1時間ぐらいかかる」「ただ、そういうことだ」と淡々と伝えるイクジュン。

そして、途中でイクスンのスマホに「大丈夫か?返信不要」と送ったのも、ジュンワンの家から病院まで30分程度であることを知っていて、二人が今頃会っているというタイミングまで計算し尽くした上でのアシストだったでしょう。

このメールは、イクスンのスマホの待ち受け画面を、ジュンワンに気付かせようと送ったものであることは間違いありません(「大丈夫か?」と聞いてるのに、「返信不要」とは…笑)

8話のレビューでは、「イクスンがイクジュンに見られる可能性があるのに、わざわざ待ち受け画面にするかな?」とも書いたのですが、スマホのロック画面ではなく、ホーム画面のほうであることが判明しましたね。

アプリが全然ないのはやや不自然ですが(笑)

ホーム画面ということは、ロックを解除して、自分が触っている時ぐらいにしか、表示されない背景なわけです。8話では、ホン大尉とメールをした直後でロックが掛かる前だったので、イクジュンが目にすることになったわけですね。

この9話のシーンでも、イクジュンからのメッセージを閉じた瞬間に、ジュンワンの写真が一瞬チラッと見えています。(これを見逃さなかったジュンワン!)

そして写真は、4話でジェハク先生が、ジュンワンのInstagram初投稿のために撮ったあの写真ですね…!

せっかく再会したジュンワンにも、相変わらず自分の体調をごまかし、真実を話そうとしないイクスンですが、一方で別れて1年経つ今も、ジュンワンへの愛を感じさせる写真をスマホの背景にしているとは、葛藤と愛情の深さが伺えます。

イクスンのカルテを観て、これまでイクスンが自分を遠ざけていた理由を知り、スマホの写真から、今も自分と同じ気持ちであることを確認したジュンワン。

そんなタイミングで、二人を邪魔するのは、またもやジェハクコール(笑)

カロスキルの約束をイクジュンに話したのは、GOODJOB‼だったのですが、病院前でイクジュンの車に乗っているイクスンにジュンワンが気が付きそうになった時と同じように、良いところでジェハク先生の電話が二人を邪魔します。

これはある意味、ジェハク先生とイクスンのジュンワンをめぐる三角関係!?のような演出です(笑)

ちなみに、この救急室のシーンについては、複数の医者の先生が「実際の病院では、ジュンワンのように自分の担当患者以外のカルテを勝手に見たら問題になる」ということを指摘していました。

昔は自由に見られたものの、今は、いくらその病院の医師とは言え、自分の担当患者以外のカルテを見るのには、申請や承認が必要とのことです。

追記:別のドクターのレビューにて「シーズン1でジュンワンがイクスンの主治医だったことがあるため、経過観察ということで閲覧は問題ない」と解説されていました!

さて、とにもかくにも、この救急室で、遂にハトカップルの愛が再び動き出す兆しが出てきました。

なお、振り返ってみると、すでにシーズン1で、二人のこの日の状況を暗示しているような演出があります。

先ほど少し触れた11話のジュンワンがイクスンにBluetoothイヤホンを差し出すシーン。

ここでジュンワンがイクスンと一緒に聞いた曲の名前覚えてますか…?

そうです「ER=救急室」です。「病院関係者が1番嫌う曲」と言っていましたね。

しかもこのシーンで流れている歌詞…「もう一度、愛するように戻ってくる」なんです!!(鳥肌!!!)

この時点で、二人が一度別れること。そして、救急室で再び愛が始まることは決まっていたのでしょう。

ちなみに、「賢い医師生活」シリーズにおいて、この「救急室」は他のカップル以外でも「相手への愛を再確認する場所」として使われています。

特に、それまで気持ちを隠していた人物の気持ちが明かされる場所として、

倒れたギョウルに駆けつけたジョンウォン
倒れたミナに駆けつけたソッキョン
熱が出たイクスンに駆けつけたジュンワン

という形で、今回描かれたように、救急室は最も危険な状態を救う場所であると同時に、そんな危険な誰かを想う人たちの愛が見える場所でもあるのです。

救急室の入り口のハートの形が、カップルによって変わるのも、こういった設定の一部でしょう。
ちなみに、今回、ギョウルとジョンウォンのストーリーはほとんどありませんでしたが、母親のことをずっと隠しているギョウルが、ジョンウォンに母親のことを話すきっかけになるのも、もしかしたら救急室では?と思っています。
例えば、ソウルに連れてきたギョウルのお母さんが、もし具合が悪くなったとしたら、連れてくるのはユルジェ病院でしょう。
「何かあったらすぐ自分に話してほしい」と救急室のカーテンの中で話していたジョンウォンが、運びこばれたギョウル母と、慌てふためくギョウルを救急室で見かけることになるとか…?
残り3話も、救急室のシーンに注目したいと思います。

チョン・ギョンホ:ソロ曲「回想」

なお、8話で冒頭でちらっと登場した、チョン・ギョンホの歌う「回想」は、9話でも使われただけではなく、9話放送の翌日、正式にチョン・ギョンホのソロ曲として配信されました。

チョン・ギョンホの声質と曲がとてもあっていて、良い〜〜〜!MVが出るのも楽しみです…!

豪華過ぎる卓球大会

さて、9話の大きな見どころといえば、卓球大会。こういうギャグを入れ込んでくるところが、「応答せよ」シリーズも手掛けた制作陣らしいですね。

そして、その「応答せよ1988」にも出演していたユ・ジェミョンさんがここでまさかのカメオ出演!(笑)

日本ではもはや「梨泰院クラス」のチャン会長のほうが有名かもしれませんが、今回のような、おとぼけキャラクターも上手なユ・ジェミョンさん。こんな贅沢な使い方は、シン監督だからできることですね。

映像医学科のシン・ヒソン教授という設定。フェローの先生との「イクジュンが卓球同好会に入ってた」という会話では、シン教授が「マジック同好会にも入ってたらしいぞ」と言うセリフがありますが、ここは少しセリフがカットされており、

イ教授が入ってない同好会があるか?マジック同好会まで入ってたらしいぞ

と、大学時代から大学中の同好会に顔を出していたイクジュンのキャラクターが表現されています。

しかし、「勝ち残ってるのは、実力ではなく、うちらと同じ理由だ(=全て相手が呼び出されたことによる不戦勝)」ということを見抜いているシン教授。

そして、それまでまさに自分たちは、一度も戦ってなかったことを表すかのように、イクジュンたちとの対決では、二人で交代で打つという基本ルールも守らず、即失格に(笑)

失格になった意味がわからずキョトンとする教授に、流れた「メェ〜〜〜〜」という効果音は、「応答せよシリーズ」でおなじみのもの(笑)「応答せよ」ファンの方々はテンション上がったことでしょう!

ちなみに、この卓球シーンについては、医者の先生のレビューで興味深い話がありました。

それは、「医者の中で一番卓球が得意なのは精神科の先生」ということ。

理由は、精神科の隔離病棟では、患者が体を動かすためにも卓球台が設置されていることが多く、他の科の先生より卓球に慣れているから、ということ。長く勤めている先生ほど、卓球の腕が上がっていく、というぐらい卓球をよくするんだそうです。

なお、この卓球大会のシーンについては、その後メイキング映像で、実際の撮影の様子が明かされました!

この動画は「卓球王が居たんですが、居なかったんです」というタイトルで、最初に「ユルジェ卓球大会の真実」というテロップから始まるのですが、こういう裏側を惜しみ無く共有してくれるところが最高!!!

現場に居たら、笑ってしまいそうな状況ですが、むしろそんな中でも真剣に演技する俳優たちと、観ている俳優たちの演技にも拍手を贈りたいです!!
この動画でも「メェ〜〜〜」が使われています(笑)
そして、いよいよ準決勝。ソンファが来たことで、急にカッコつけたイクジュンは、劣勢の状況からデュースまで持ち込むことに成功。
「デュースに持ち込んで、やりたいことがあるだ」と言っていたイクジュンは、突然ダンスを踊りだします(笑)ソンファを笑わせたかったんでしょうね。

そして、こちらが本物のデュース(듀스)の「나를 돌아봐」という曲の映像。イクジュンが真似したサビのあたりにタイミングを合わせています。

ソッキョンが知っているほど、韓国では有名な曲。
「賢い医師生活」シリーズを通して、イクジュンはもう何種類踊りを見せてくれたかわかりませんが、これは監督の欲なのか、チョ・ジョンソクのチャレンジ精神なのか(笑)いずれにしても、毎回素晴らしいクオリティです。
そして、急に踊りを踊ってしまったせいで、足がつってしまったジフン先生。
足がつる=쥐(チュィ)가 나다
*쥐(チュィ)は「ネズミ」の意味

なので、ここで突然、「猫になれ」と言ってるセリフは実際には、「”にゃ〜”やって」と言っています(笑)

しかも、決勝戦が終わった後、また足がつったジフン先生は、「쥐쥐쥐(チュィチュィチュィ)〜〜〜!」と言いすぎて、少女時代の「Gee」になってしまってますね(‎Baby Baby Baby〜と乗っかるイクジュンw)

なお、この決勝戦で登場した最強のお二人は、皆さんお察しの通り、本物の卓球選手の方。

女性の方は、1988年ソウルオリンピック女子ダブルスのヒョン・ジョンファ選手、男性は、ロンドンオリンピック団体、銀メダリストのチュ・セヒョク選手。

特にヒョン・ジョンファ選手は、韓国に卓球ブームをもたらし、その活躍が映画化「コリア(邦題:ハナ 奇跡の46日間)」されたほど有名な選手です。

ポン先生と救急室の仲間たち

9話では、「裏方で頑張っている人たち」というテーマで救急室にフォーカスが当たると同時に、これまで「99ズの同級生」という設定でありながらも、あまり99ズとからみがなかったポン先生の活躍も描かれました。

99ズが一番知りたい人

7月末にYouTubeで公開された「ユルジェアワーズ」で、実はポン先生は、99ズたちから「”この人を知りたい”賞」に選ばれています。

「ドラマでは”99ズについて一番知っている人”の設定なのに、実際はあまり一緒に撮影するシーンがない」ということで99ズもポン先生とのシーンが増えることを望んでいました。

オーディション映像の時から、ひょうひょうと凄い演技をやってのける姿が印象的だったのですが、ユ・ヨンソクも「すごく独特で、NGを出すと自分で自分に腹を立てる様子がとても不思議で気になる」と話していました。

また、「99ズについて語る人」としてだけ、登場するにはあまりにももったいないぐらい、その後、人気ドラマでブレイクしたポン先生役のチェ・ヨンジュンさん。

今回、ポン先生にやっとフォーカスがあたったのは、そんな99ズのラブコールと、視聴者人気も背景にあったかもしれません。

ヨン先生の葛藤

最も患者の生命に関わる危険な瞬間を支えている救急室の先生たち。でも、その瞬間は意識のない患者、そして周りを見ている余裕がない家族にとっては、その後手術をしてくれた先生こそが、命の恩人のように思えます。

患者が救えたなら十分だ 誰が救ったなんて患者が知らなくても良い

というポン先生は、どんな状況でも淡々と今、自分がやるべきことに集中します。(カッコいい!!)

なお、医者の先生のレビューによると、今回ポン先生がしている処置の中には、患者のためにはベストだけど、そこまで救急で処置して何かあったら責任問題になるから、あまり積極的にはやりたがらないような処置も含まれていて、そういう意味でポン先生の対応は本当にカッコいいんだとか!

一方で、まだ若いレジデントのヨン・ジェミン先生は、手術をした医者だけが感謝される様子に、悔しさを隠せません。

ポン先生に対して、

誰にもわかってもらえない人魚姫のようでした

というなんとも、小説のような表現で自分のもどかしさを表現します。

人魚姫のストーリーと言えば…

15歳になると人間の世界に行くことができるようになった人魚姫が、船の上で誕生日を祝う王子様に一目惚れ。
嵐の影響で、船から海に投げ出されてしまった王子様を人魚姫が救いますが、そこに人間の娘がやってきたため身を隠す人魚姫。
王子様は、目を覚ました時、目の前にいた娘が自分を救ってくれたと勘違いしてしまう

というところから、「本当は自分が救ったのに」という救急室のヨン先生の状況と重なるわけです。

これに対して、ポン先生も実は、ユニークな表現で返します。「早く仕事に戻れ。みんなは目の回る忙しさだ」というセリフは、実は

早く仕事に戻れ。お前の友達、セバスチャンたちが大変だ

と言っています。「セバスチャン」は、ディズニーの「リトル・マーメイド」で人魚姫(アリエル)の面倒を見るカニですね(笑)

なので、ここでポン先生が両手でカニの手のような仕草をしているわけです。

看護師の先生たちの苦労

そして、私も今回涙してしまったのが、NICU(新生児集中治療室)の看護師の先生たちのエピソード。

赤ちゃんたちを24時間、交代で見守る先生たちは、立ちっぱなし、抱きっぱなしで、体中に大きな負担が負担かかっている様子。

一瞬やってきて「うちの子も抱いてくれなきゃ」とクレームを言うお母さんに笑顔で対応する看護師さんの首には、シップが貼られています。

他の先生達も、腕にサポーターを付けたり、自分の体を酷使して、患者と向き合っていることが描かれました。

そして、子どもが元気になり、自分に感謝する患者の母親に「僕は一日5分ぐらいしか診てないんですよ。お礼なら看護師の先生に」と言うジョンウォン(ジョンウォンのこういう、言うべきことはしっかり言うところ、素敵!)

このときの母親が、持ってきたお弁当の差し入れと、感謝の手紙のシーン。感動的な手紙の内容と、看護師役の役者さんたちが本当の看護師さんのような雰囲気だったので、すごくグッと来たシーンでした。(これはきっと、実際に大変な思いをしている看護師さんたちへの慰労になったことでしょう

きっと、こうやってドラマで描かれるだけでも、「そうか、救急室の先生たちや看護師の先生たちにももっと感謝しなければ」と思う人は増えるはず。
患者からわかりやすく感謝される手術の執刀医だけではなく、救急室の先生たちや看護師の先生たちなど、スポットが当たりにくい人々の努力と苦労まで丁寧に描くのはさすが賢医です。

新しく生まれる愛…?

そんな中、9話では、ユルジェ病院に、新たな愛の誕生?を匂わせる演出もいくつかありました。

まず、ギョウル先生を意味深に見つめる、キム・ゴン先生!

やっぱり〜〜〜〜〜〜(笑)!!

6話のレビューで、キム・ゴン先生役がイ・ジョンウォンであることは絶対意味がある、登場からギョウルを気に入っていると思わせる演出があると予想していたので、思わずニヤッとしました(笑)

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なお、ここでのギョウル先生とキム・ゴン先生の会話で、ギョウル先生が「教授に聞かれたらそう答えて」と言っているのですが、こちら実際には、

ギョウル「教授が質問するかもしれないわ。予想質問よ」

と言っています。個人的にはこの言い方が、一見ぶっきらぼうに見えて後輩に優しいギョウルの性格を表していて、「これはキュンと来るな〜」と思いました。

そして、もう一組、ウケたのがユンボクの恋(笑)。ソンビンの「ユンボク、しっかりしろ〜〜〜〜!!!」のシーンは可愛かったですね。

頼りなさそうな、ソンヨン先生ではなく、それこそキム・ゴン先生とかをおすすめしたい。(いや、でもやっぱりいつものキャラの通り、悪い男かも 笑

ユンボクは演技もうまいので、シーズン3があったら、ソンビンとドラゴンのような、ユンボクの新しい恋物語が描かれそうだなと思います。
ホンドが、誰かかっこいいヌナを好きになる展開も良いなあ… 笑)

「賢い医師生活1」キャストインタビューが満載!

ミナとソッキョン

8話でいよいよソッキョンのミナへの気持ちが明らかになったコンゴンカップル。ミナ役、アン・ウンジンのInstagramからは、撮影現場で実際の二人のケミも最高な様子が伝わってきます。

中庭で、ソッキョンが珍しく考え込んでいるシーン。横には幼い頃からの友人であるジョンウォンが居ます。

シーズン1で描かれたように、今は5人組の99ズですが、元々は、ジョンウォンとソッキョンが幼馴染みで、ジュンワンとイクジュンが幼馴み。そこにソンファが加わった形です。

なので、99ズの中でも、幼馴染みペアの関係性は特に深く、逆にソッキョンとジュンワンはあまり会話が成り立たなかったりします。

はたから見ると、何を考えているかわからない”クマさん”こと、ソッキョンを一番理解できているのはやはり付き合いの長いジョンウォン。

ソッキョンがすでに自分のミナへの気持ちを確認し、この後自分がミナに気持ちを伝えたら起こるであろう色々なことについて考え中だ、と見抜いています。

やはり、感情だけでは動けないのが40代の恋愛。

ジョンウォン、イクジュン、ソッキョンが3人で中庭にいる時、ミナからソッキョンに電話がかかってきます。

おそらく「先生のためにアイスクリーム買ったんですけど、どこですか?」と尋ねたであろうミナに、いつもだったら「アイツらと一緒にいるから、俺は大丈夫だ。看護師さんにでも上げて」と言いそうなソッキョンが、断らなかったのは、やはりソッキョンがもう心を決めていることを表していますね。

これまで「新西遊記」を観ている時以外に、笑うことがあまりなかったソッキョンが、ミナに対しては満面の笑顔を見せます。

ここで、またもやイクジュンのアシスト(笑)

ジョンウォンが「キューピットは忙しいな」と言っている部分は、実際は「烏鵲橋が今度はそっちに行ったのか」と言っています。

烏鵲橋(オジャッキョ)
七夕の日に、牽牛(日本で言う彦星)と織女が会うために、カラス(鳥)とカササギ(鵲)が銀河に集まって自分たちの羽で作る橋。ここから「キューピット」の意味で使われる
*ちなみに、この「烏鵲橋」の話は、「ヴィンチェンツォ」の最終話でも登場しました

みんなの烏鵲橋であるイクジュンですが、スーパー烏鵲橋らしく、相手に合わせて、アシストの方法を変えていることがわかります。

自分から恋愛の話を決してしないが、自分でしっかり考えて動けるジュンワンには、情報だけをそっと伝え、お互い奥手なウィンターガーデンカップルには、「プロポーズ受けたってよ!」という芝居まで打ってみせ、自分の気持ちすら気がついていなそうなクマさんには、

チュチュを逃したら超ウルトラバカ野郎だ
とストレートに説教をする。
でも…スーパー烏鵲橋の弱点は、「自分の恋愛にはめっぽう弱い」ということ(笑)
ということで、いよいよ10話では、ミナの5回目の告白があるか、その前にソッキョンから告白するか…楽しみです!

ソンファとイクジュン

前回8話で、中心的に描かれたソンファとイクジュンの関係。9話では途中まで「ソンファがあまりでてこないな…」と思ったのですが、最後の10分で一気にソンファとイクジュンの物語に引き込まれました。

偶然つないだ手

またいつものように、ロサとジョンスのシーンに続いて、ソンファとイクジュンが並んで歩くシーンが登場します。

急に雨が降ってきて、走り出しますが…(このカット好き)

水たまりを避けようとふいに手をつないだ二人。

このシーン、よく見ると「気をつけろ」と水たまりを指していたイクジュンの手を、ソンファの方からつないでいるのが分かります。

これは「手をつないだ」というより、ソファが水たまりを避けるのに、いつも頼りになるイクジュンの手を、何気なく「掴んだ」に近いかもしれません。

ちなみに、直前のロサとジョンスのシーンでも、手を繋ぐ演出がありましたね。

この時アップになった二人のつないだ手のカットで、またまたチョ・ジョンソクの細かい演技が見て取れます。

イクジュンが手をにぎることをためらう気持ちを、親指を動かすことで表現しています。

次の瞬間、ソンファの方から「あっ…」と手を離していますが、イクジュンもかなり動揺したのでしょう。

そして、手を話した瞬間、イクジュンが一瞬舌を出す細かい仕草も動揺を表現しています。

ここにもし、吹き出しをつけるとしたら、こんな感じでしょうか。

まいったな。線を守らなきゃいけないのに…

という感じかもしれません。

そしてイクジュンが「ハードル競技だと思えばいい」と話した後、最後にソンファが、それまでと違う表情でイクジュンの顔を見つめているカットがありますが、皆さんはここをどう読み取ったでしょうか?

まさか、コーヒーの蓋を傘にしているイクジュンに驚いた表情ではないでしょう(これ、アドリブなのかな?笑)

私は最初、手をつないだことの動揺かと思ったのですが、見返すうちに、ポイントはそこではなく、その後のイクジュンのセリフにあるように思えてきました。

手を話した後のイクジュンのセリフ

「‎ハードル競争だと思えばいい‎。前方にあと3つ見えるぞ。‎よし頑張ろう。‎ちゃんとゴールしろよ」

となっていますが、もうすこし韓国語のニュアンスを生かした訳にすると

 「ハードル競技だと思えばいい。前方に後3つ見えるぞ。よし各自で、無事に越えようぜ
という感じ。ここでは、알아서(よしなに、適当に、というニュアンス)という単語があることで、「(さっきの水たまりは手を貸したけど)残りは自分ひとりで頑張れ」というようなニュアンスになっている点がポイントです。
「夕立の中、水たまりを飛び越える」というのは、先週のソンファの状況のような、人生の中で、予想もせずに突然身に振り抱える辛い出来事を象徴しているようですが、そんな時いつもそっと手を貸してくれたイクジュン。
そんなイクジュンが、「この先は、それぞれで乗り越えよう」と言った瞬間、ソンファには色んな感情が沸き起こったに違いありません。
友達として過ごしているように思えたイクジュンが、実はソンファとの間にしっかり線を引いて接していること。
つまりそれは、決して「手をつないだとしても何も感じない友人」ではなく、「線を超えないように我慢している関係」なのであり、イクジュンの我慢によって成り立っている=イクジュンに無理をさせている事に気がついたのでしょう。
同時にそれが、「友達でいたい」と言った自分の意志を尊重しようとする、イクジュンの大きな愛情であることも感じたことでしょう。
そして、今のままの関係でいる限り、二人の人生はあくまで別々であり、イクジュンは永遠に自分の横に居てくれて、寄りかかれる存在ではないことにも改めて気付き、それを切なく想う自分の気持ちにも気がついたのではないでしょうか。
イクジュンという男性の魅力と、自分に対する大きな愛。一方で、自分のために我慢をさせてしまっていることへの申し訳なさ。
そして、自分が作り上げた状況なのに、今の関係性を切なく感じてしまった自分自身の感情への気づき。
そんな複雑な感情を見事に表現した、ミドさんの名演技にも拍手を贈りたいです…!

8話→9話のソンファの気持ちの変化

なお、私は、このシーンで突然ソンファがイクジュンを意識したというより、ソンファが母親のことで辛い思いをしていた8話から、9話にかけて、ソンファに少しずつ感情の変化が起こったのでは?と予想します。

母親のことで頭がいっぱいだった8話の状況から、少し落ちついたところで、きっとソンファは冷静にその時のイクジュンの優しさを思い出したに違いありません。夜中に実家まで送ってくれたり、鉄板をプレゼントしてくれたり。

そしておそらく、イクジュンがソンファの部屋の前で門番をしていたことも、ユンボクあたりから耳に入ったことでしょう。

9話では、ソンファの登場シーンが多くありませんが、一緒にキャンプで夜遅くまで過ごしてもサバサバと会話していたソンファが、9話ではどうもイクジュンを意識し始めているのではないか?という表情を何度か見せます。

そして、それはまるで、大学時代に、ソンファがイクジュンを意識して目でチラチラ追っていたあの頃の表情に近いのです。

最後まで見た後に、もう一度卓球大会のシーンを見返してみて、特にそれを感じました。

手術が終わるやいなや、急いで卓球大会に駆けつけるソンファ。自分の身なりまで(汗臭くないか?)気にするのは、まるで好きな人の試合を応援しに来た大学生のよう。

そして、決勝戦の直前のシーンでは、ジュンワンに肩をもんでもらいながら、相方の先生と話しているイクジュンの横顔を見つめる、ソンファの様子が後ろに映っています。なんだか、話しかけるタイミングを見計らっている雰囲気。

ここでソンファが「温かいお茶でも飲む?」と言いますが、イクジュンに「いや、持っててくれ」と言われた瞬間のソンファの表情は、水たまりシーンの表情に近いものがあります。

イクジュンがそういったのは「勝ってから飲む」とカッコつけるためだったわけですが、このソンファの表情は、今までずっと助けてもらうばかりだったイクジュンに何かしてあげたいと思って差し伸べたものを、断られた感じがしてしゅんとした気持ちを表現しているのかもしれません。

どちらにしても、この卓球大会のソンファの様子は「急にイクジュンを意識している」ということを感じさせます。

今までのソンファとイクジュンの関係なら、「お茶が冷める前に勝って戻ってくる」とカッコつけるイクジュンに、ソンファが「も〜、オーバーね」と突っ込むところでしょう。

その後、結局負けて戻ってきたイクジュンにも、突っ込むことなく、姿勢正しく座っているソンファの様子は、あの出会いの試験会場で、イクジュンを意識していたソンファの様子を思い出させます。

入試会場で出会ったあの日、イクジュンを意識するソンファ。(イクジュンも同じく)

結局、自分でお茶を飲んで「熱っ!」と言うイクジュンに対しても、何も突っ込まないソンファ。完全にいつもと調子が違いますよね。

8話から9話にかけて、そんな心情の変化があった上での、あの水たまりシーンだったと思います。

雨のシーンと言えば…

ちなみに、雨の中を二人で走るシーンと言えば、映画「クラシック(邦題:ラブレター)」を想い出すのは私だけでしょうか?

シーズン1のOST「君にとって僕は 僕にとって君は」が主題歌だった映画でもあり、雨の設定はこの作品へのオマージュの意味もあるかもなと思ったりします。

ソン・イェジン、チョ・インソン、チョ・スンウ…と今見ると豪華過ぎるキャストが出演している、韓国映画の名作。この映像、歌も映像も懐かしくて切なくて、何度も見直してしまいます。

CULTURA「賢い医師生活」特集:内容はこちらで紹介

9話バンドシーン「君は僕に惚れた」

そして、そんなソンファの誕生日。ソンファ自らが選んだ曲「君は僕に惚れた(넌 내게 반했어)」を熱唱します。

この曲は、2004年に発表された曲でNO BRAINという男性グループの曲。

この曲は、「君は僕に惚れた」と叫びながらも、実は歌っている僕も君を好きだ、という内容になっているのがポイント。
僕と君の目が会った瞬間
飛び散った情熱の炎
Oh! Stand by me Stand by me Stand by me
望むなら夜空の星も取ってあげるのに
Oh! Stand by me Stand by me Stand by me
僕の頬に口づけして
まさに、イクジュンの告白を受けたソンファが「私もあなたが好き」という、まだ伝えられない想いを、歌にのせて表現しているような曲ですね。

大学時代回想シーン

そして久々に、大学時代の回想シーンが登場します。シーズン1でも描かれた、ソンファの誕生日のシーンをソンファ目線から描いたもの。

ソンファの誕生日=4月ということは、3月に大学に入学して2ヶ月目。毎年、11月頃の入試の時に出会った二人が、合宿での再会も経て、お互いへの想いをちょうど募らせていた頃でしょう。

ソンファのために指輪を買ったイクジュンが、ソンファに振られて落ち込むソッキョンの話を聞きながら、ソンファに「急な用事ができた」とキャンセルの連絡をし、指輪を捨ててしまったあの日。

ソンファも入試の頃から、イクジュンが好きだったことについては、こちらのシーズン1の記事でも考察していましたが、

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やはり、クールに返事を返しながらも、家では、ソンファがイクジュンを想ってドキドキしていたことが、今回ではっきり分かりましたね。

ソンファの誕生日にすれ違ってしまった二人の運命が、20年ほど経った今、もう一度交わることになるのか…!?

なお、ここまでの演出で、やはり「イクジュンからは決して、線を超えられない」ということが十分にわかったので、二人の運命を変えるのは、やはりソンファから線を超えるときでしょう。

イクソンカップルのこの後の展開については、韓国視聴者の方の分析で興味深いものがありました。

それは「イクジュンが自転車で事故にあい、心配して駆けつけたソンファが告白するのではないか」というもの。

シーズン1でソンファ自身の乳がんの疑い、シーズン2でソンファ母の病気…と、「イクジュンがソンファ側を心配する」という展開はこれまでもありました。ここから、ソンファが自分の想いを伝えるとしたら、今度は、イクジュン側になにか起きるのではないか。

私はこれを聞いて、一理あるなと思い、むしろウジュに何か起きるもあり得るかもしれまれないと思いました。

というのも、今回何気なく挟み込まれた、ウジュとイクジュンが漢江で自転車に乗って帰ってきたシーン。これは何か次の展開の伏線に思えてなりません。

よ〜くみると、玄関で鏡にイクジュンが映っていて、これまでの法則に乗っ取ると、イクジュンになにか起こる?(=ウジュに何か起こる?)

そして、今回新たに確信した「救急室の法則」を考えると、イクソンカップルも、救急室で隠していたソンファの気持ちが、イクジュンに伝わるという展開があってもおかしくなさそうです。

一方、イクソンカップルがスムーズに行かない理由は、やはり先程の大学時代の一件に大きなポイントがあるので、「雪岳山に行った時にソンファが昔の自分の気持ちを告白?」という線も捨て難いなと思っています。

いや、雪岳山はコンゴンカップル(ミナ&ソッキョン)、イクソンカップルは救急室という展開…?

少なくどちらかの展開は、シーズン2の中で描かれるはずなので、答え合わせを楽しみに待ちましょう。

「賢い医師生活2」10話予告

10話の予告では、いよいよ99ズの雪岳山旅行と、ミナ先生の最後の告白に向けて動きがありそうです。しかし、相変わらず心配な、ギョウル&ジョンウォンのウインターガーデンカップル(涙)

10話は、8月26日(木)の放送です!(その次、9月2日は放送休止で、11話は9月9日になります。)

最後に

というわけで、「賢い医師生活シーズン2」の9話について考察をしてみました…!

なお、解釈はあくまで勝手な考察(ある意味妄想)なので、もちろん、これが正解というわけではありません(笑)

みなさんそれぞれが、作品を深く理解するきっかけになったら嬉しいです!

それではまた、10話の記事でお会いしましょう〜!

10話の記事はこちら

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*画像はtvNからお借りしました