「愛と、利と」レビュー②原作小説との違いからモヤモヤを読み解く

韓国ソウル在住
ブロガーMisa
「愛と、利と」について、観終わった方向けに、原作とドラマの違いを紹介します!

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ドラマと原作の違い

「愛と、利と」を観て、「原作を読んでみたい…」と思った方も多いと思いはず。

とはいえ、まだ日本語翻訳版が出ていないので、原作を読んだ私が、内容を紹介して読んだ気分になれる記事を書こうと思います。

こんなに付箋貼ったり、マーカー引きながら読んだの初めて…(モヤモヤが原動力に 笑)

原作小説はAmazonでも購入できます。韓国語学習者の方はぜひ!

①スヨンとサンスとの関係

ドラマと原作との違いで、最も衝撃的なのは、実は原作では、スヨンはほとんどサンスに関心がありません(笑)

「私のことを好きな男」として、やや見下しているようなフシすら感じられます(衝撃w)

それを表す、こんなくだりがあります。ギョンピル事件が起こる直前、スヨンがひとり考え込んでいる場面での記述です。

スヨンは、サンスが自分を愛しているということは、はっきりと感じていた。しかし、自分が愛する男、指先が震え、突然の雨粒が頭に落ちるかさえ心配になる男は、サンスではないことは明確だった。

そして、最後まで、スヨンがサンスを愛した、というようなはっきりとした表現は出てきません。

一方、ドラマでは「結局、スヨンもずっとサンスが好きだったけど、幸せになる勇気がなかった」という形で、エンディングを迎えます。

ドラマではもはや、正社員か契約社員の違いとか、打算的な考えとか、そういうことはあまり重要ではなく(原作ではそこがとても重要なんですが)

人を愛する前に、自分を愛することができず、幸せになる勇気がないスヨンとサンスの一進一退がフォーカスされ、それを通じた二人の成長が描かれます。

ドラマでは結局、スヨンは11話の嘘つきゲームで話していたように、

私もハ係長が好き。もしかしたら、私のほうが先に好きだったのかも知れない。最初に見たときから好きだった

が、スヨンの本音だったというふうに描かれますが、これももちろん、原作にはない場面・セリフ。

このスヨンとサンスの関係性が、ドラマと原作の一番の違いです。

②スヨンとジョンヒョンとの関係

一方、原作では、スヨンはむしろジョンヒョンを深く愛したということのほうがはっきりと描かれています。

ドラマ冒頭でもあったように、会社の飲み会の席で「二人付き合ってるの?」とからかわれた時点で、原作ではすでに二人は本当に付き合っています。

ドラマではこのシーンは単なるエンディングの”釣り”でしたが…

ジョンヒョンのキャラクター自体も、原作とドラマではだいぶ違います。原作では…

一緒にいると他の女性からの視線を感じるほどのイケメンの長身。
初めは、甘いデザートのような男性。美しいが、口直しにしかならない男だと思った。

ちなみに、このときスヨンは、甘いデザートのようなジョンヒョンと比較して、サンスのことはなんと「パサついた鶏むね肉のような男」と表現していて、これには吹き出しました(ひどい 笑)

ジョンヒョンが自分に気があることを偶然に知り、会社でからかわれるよりも前に付き合い始めていたスヨンとジョンヒョン。

しかし、ジョンヒョンとしばらく付き合ったスヨンは、こんなことを思います。

ジョンヒョンは、繊細で優しいタイプではなかった。代わりに、慎重で言ったことは守るはっきりした男性だった。

そして、ジョンヒョンと同居するようになり、関係が変わってきてしまった後でも、スヨンは、

自分が愛する人はジョンヒョン、自分を愛する人はサンス。

と自分の気持ちを表現しているのです。

ドラマを見ながらも感じていたのですが、原作を読んで更に感じたのは、このジョンヒョンをもっとドラマで魅力的に描いてほしかったということ。

ドラマではチョン・ガラムという俳優のこれまでのイメージからしても、キャラクター設定自体も、原作とは違う「繊細で優しいタイプ」に描かれてしまっており、

さらに、原作にはない「スヨンは弟を無くしている」という設定も追加されたことで、スヨンのジョンヒョンへの気持ちは、弟を面倒見ているような同情に近い感情のようにも描かれています。

そのため、観ている側としては、スヨンがジョンヒョンではなく、サンスを選択するのが最初から既定路線すぎたのが、ラブストーリーとしてはやや物足りなく感じました。

個人的にはチョン・ガラムは好きで応援していますが、似たような純粋な二番手くんが多いので、次はぜひ新しい姿を…!

③ミギョンのキャラクター

同じように、ミギョンのキャラクターも、原作ではもっと魅力的に描かれています。

原作のミギョンは、もっとキャリアウーマンなイメージ。

支店とは別のオフィスに席があり、サンスと近づくきっかけとなった社内のプレゼン大会でも、むしろミギョンがリードして仕事をすすめます。

ドラマでは、ミギョンは最初からサンスにぞっこんで、仕事より恋愛に夢中。わざわざ大会でも、サンスが主導で仕事が進められる形に変更されています。

「あれ、サンスって仕事ができない設定じゃなかった?」という違和感は、こういう意図的な設定変更の影響なんですね。

驚くことに、原作ではミギョンは、ギョンピルに加え、ソッキョンとも社内恋愛の経験がある設定で、そのせいでサンスに好意は抱くものの、最初はまたもや社内恋愛をすることに躊躇します。

また、サンスとミギョンのラブラインも、もっとしっかりと描かれ、サンスが一度は本気でミギョンと結婚まで考えます。

ドラマの中のサンスは「まだ100%ではない」と言いながらミギョンと付き合いはじめるものの、結局、99.5%ぐらいずっとスヨンを好きだった感じがします(笑)

後ほど詳しく説明しますが、サンスが「ミギョンか?スヨンか?」と悩む過程は、原作の方のテーマである「愛の利害」を表現する重要な要素でもあります。

正社員で仕事もできて、余裕のある家庭で育ったミギョンが自分を求めてくれることで、サンスは、契約職のスヨンにあしらわれて傷ついたプライドを回復することができる。

また、彼女と結婚すれば、確実に安定した生活が待っている。

そんなサンスの打算的な考えも、原作では表現されています。

やはりここも、ドラマ化にあたりスヨンとサンスのラブラインを強調するために、ミギョンが「仕事そっちのけで主人公を一途に愛する、お金持ちのお嬢さん」というやや典型的なサブ女性キャラクターに薄められてしまっているのです。

原作が描いた「愛の利害」

「利害」に翻弄される4人

原作で描かれた「利害」とは何か?もう少し、掘り下げて考えてみます。

「愛の利害」というと、自分の利益のために恋愛をするドロドロのマクチャンドラマも作れそうですが、

この作品の登場人物たちは、マクチャンドラマの登場人物ほど強く、ずる賢くはありません。

損得勘定というよりもむしろ、社会的な地位の違いからくる各人の自尊心の欠乏=劣等感が、純粋な愛を難しくし、結果的に自分自身を深く傷つけてしまう過程を生々しく描いてると思いました。

ドラマでは、会社での立場や生活環境の違いは、キャラクターの背景程度にしか表現されていない感じですが、原作ではこの違いがキャラクターの恋愛にも大きな影響を及ぼします。

例えば、全くサンスに興味がなかったはずのスヨンですが、ミギョンがサンスに気がある事に気づき、ジョンヒョンとこんな話をするシーンがあります。

「面白いこと教えてあげようか?」と切り出したスヨンは、どうやらミギョンがサンスに気があるっぽいということを話した後、こう言います。

ミギョンさんは、とにかくすべてを持ってるわ。家も車も…おまけに性格もいいし、賢くて仕事もできる。
でも、ハ係長はまさに”平凡”そのもの。いまいちなの。女性にとっては男性として魅力がないわ。

可愛そうなサンス…!(笑)

そして、それを聞いたジョンヒョンは、こう言うのです。

だから”面白い”って?自分に夢中だった人を、全てを持っているパク代理が好きだっていうから?

「そうなのかな?」と答えるスヨン。いや〜、ここ衝撃でした(笑)

そう、原作は、こういう超現実的なキャラクター描写というか、生々しさが魅力なのです。

このように原作では、スヨンはミギョンのことを「自分にはないものをすべて持っている人」としてかなり意識しています。

例えば、ドラマで、スヨンがサンスに「何であのとき、ためらったのよ!」と怒るシーンがありますよね。

原作にも同じシーンがありますが、流れが全く違います。

原作では直前に、スヨンが成果を出したミギョンの代わりにやっていた仕事を、あっさりと引き上げられてしまうシーンがあり…

衝撃を受けたスヨンは、退勤しようとしていたサンスに外から連絡し、わざと当日中の仕事を依頼します。

そして、遅くまで二人で残業をする中で、「あのとき、どうして来なかったのか?」をサンスに問いただすのです。

さっきのジョンヒョンとの会話にあるように、やはり、スヨンにとってサンスは「自分のことを好きな男」。

つまり、自尊心を満たしてくれる存在なわけです。

だからこそ、ミギョンの仕事の件でプライドが傷ついた瞬間、スヨンはサンスに連絡し、まず「私にまだ、気持ちがあるの?」から問い詰め始めます。

そして、「私はジョンヒョンさんと上手くいってるから、気持ちを整理して」と言った挙げ句、「パク代理のことをどう思う?」と聞くのです。

ドラマとは全然キャラちがいますよね(笑)

「あのとき、どうしてこなかったの?」を問い詰めるシーンは、実はこんな流れの中で出てきた会話だったのです。

原作でのこのシーンは、とにかく自尊心を傷つけられたスヨンのドロドロした気持ちが溢れていて、サンスに対する愛情は全然感じられません。

私は、ドラマであのシーンを見たときに、

「え、あんなに好きそうだった感じなのに、あそこでちょっと戸惑っただけで、完全アウトなの??そんなにいきなり塩対応になる??」と思ったのですが

元々、全然設定が違うシーンをアレンジしていたわけです。

ちなみにサンスはあの時、どうして一瞬、戸惑ったのでしょうか?

ドラマでは、15話の「真実ゲーム」で、サンスはこう話しています。

自信がなかったんだと思う。「僕が一人の人の人生を、本当に責任取れるのか?」そんなところまで考えて…
僕はいつも、先回りして考えてしまうんだ。不幸を避けるために…

思わず、「いや、まずは付き合ってから言えよw」と突っ込んだのは私だけじゃなかったはずですが…(笑)

しかし原作では、スヨンに問い詰められた後、サンスの心の声としてこんな描写があります。

スヨンの言葉どおりだった。関係を発展させるかどうか、怖くなった。スヨンがテーラー=契約職の窓口係であること、はっきりとは知らないが、外れのよく知らないの大学出身(*)であること、全てが引っかかった

*ドラマではスヨンは高卒ですが、原作では大卒の設定

ドラマではサンスがきっぱり否定していましたが、原作ではやっぱりそこが気になったことになっています。

このセリフの違いなんかははまさに、原作が「愛の利害」寄りであり、ドラマが「愛の理解」寄りであることを表しているなと思います。

あの衝撃事件は何だったのか?

原作の流れで見ると、あの衝撃の「ギョンピル事件」も、かなり違ったように見えてきます。

前提として、原作ではスヨンがギョンピルと本当に一夜を共にしたのかどうかは、明確に描かれていません。

原作にも「録音の続きがあるけど…」という記述だけはあるので、「嘘かもしれない」と想像できる感じにはなっています。

ただ、砂の城を壊すように、すべてを元通りにできないくらい自分の手で壊してしまいたくなった過程は、このように描かれています。

ジョンヒョンを愛していたスヨンですが、ジョンヒョンの状況が苦しくなり、同居をはじめたことで、二人の関係が少しずつ変わってきてしまいます。

そして、同居を始めた後の試験で再び不合格になり、自暴自棄になるジョンヒョンに「私のこと愛してる?」と尋ねるスヨン。

ジョンヒョンは、こう答えます。

愛してた。そう確信していたけど、今はわからない。愛してるからここに居るのか、ここに居るしかなくて、愛してると言ってるのか…

スヨンはこの言葉に、自分も同じかも知れないと思いながら、涙を流します。

その後二人で一緒に休みをとって、ジョンヒョンと一緒に過ごした数日後に、突然サンスにあの言葉を言うのです。

ジョンヒョンさんと別れようかな?

こうして、スヨンはだんだんと、サンスと二人で会うようになり、「オフィス・ワイフ」のような関係になっていきます。

しかも、あくまで一線を越えないように、スヨンはいつもミギョンがくれたネックレスをして、サンスに会うのです。

実際、サンスも一線を越えたくなりますが、そのネックレスを見て、ミギョンを思い出して何度も我慢します。

ドラマの刺激的な”釣り”演出よりも、原作のこういう生々しさのほうがよっぽど面白いのに!!(笑)

しかし、ついにある時、サンスが線を超えて、スヨンにキスをします。そして、こう言います。

「整理を始めよう」

と。お互いの恋人と別れよう、ということです。

原作の、ここに至る二人の心情の変化には、純粋に「愛」だけではない、やはり「自尊心」の問題が見え隠れします。

サンスは、偶然に大学の先輩から、ミギョンが実は昔ギョンピルと付き合っていたことを聞き、突然裏切られたような気分になります。

一方のスヨンも、ジョンヒョンと一緒に勉強している仲の良い女性が、ジョンヒョンに誕生日プレゼントをした事実を知り、彼女との関係が気になりはじめるのです。

つまり、サンスとスヨンの関係が加速する背景には、それぞれ「自分のことを好きだと思っていた人に裏切られた」という感情が大きく影響しているわけです。

そして、ある日、スヨンは、ジョンヒョンのスマホを見て、一緒に勉強している女性との友達以上の関係を確信してしまいます。

ショックを受けて涙を流すスヨン。

ここで先ほど紹介した、この描写があります。

スヨンは、サンスが自分を愛しているということは、はっきりと感じていた。しかし、自分が愛する男、指先が震え、突然の雨粒が頭に落ちるかさえ心配になる男は、サンスではないことは明確だった。

自分が愛する人はジョンヒョン、自分を愛する人はサンス。

さらに、スヨンはこんな事も考えます。

サンスの気持ちを受け入れれば、今よりも安定した豊かな生活になる。そして、更に新たな欲が生まれて、それを満たしていけば、すべて過ぎ去ったこととして、幸せになれるのではないか?

しかし結局は、自分の手ですべてを終わらせてしまうことを決意するのです。

この「砂の城」は小説でも重要なモチーフ。愛は砂の城のような脆いものであることを表しています。

そして、その直後に、あのギョンピル事件が起きます。

原作に書かれている、このときのスヨンの気持ちは、文学的な表現も多く、読む人によって解釈が異なる部分かもしれませんが、、、

私は、スヨンがジョンヒョンの気持ちが他に行ってしまったことがわかった瞬間、同時に自分がジョンヒョンを深く愛していたことにも気がついてしまい、いくら打算的に考えても、サンスの元にも行けない状況になってしまったのだと、思いました。

一方、ドラマでは、ジョンヒョンへの愛がそこまで強調されていないので、「ジョンヒョンとの関係ももう破綻しているし、サンスの愛を受け入れるのも怖い…」という設定で描かれたように思います。

原作の結末

ギョンピル事件で衝撃を受けたサンスは、なんと別れ話をするはずだったミギョンに対して、それまでのスヨンとの仲をすべて告白し、許しを求めます。

スヨンに理由も聞かずに「それでも一緒にいたい」と思った、ユ・ヨンソクの純愛サンスとは大違いでびっくり(笑)

ミギョンはサンスを許し、そのまま二人は付き合いますが、しばらくして結局別れることに。

サンスは、実は失ったのはスヨンではなく、自分を愛してくれたミギョンだったことに気が付きます。(え〜、遅いよ 笑)

スヨンとジョンヒョンも銀行をやめ、ミギョン・サンスもそれぞれ別の支店へ。

そして4年が経ち、サンスとスヨンはカフェで偶然再会。

スヨンは、米国会計士の資格をとり、外資系企業で働き、江南に住んでいます。

サンスも、「どうしてあの時ギョンピルだったのか?」を聞きたい気持ちはありましたが、スヨンに未練があるわけではありません。

「お互い、いい人に出会わなきゃね」というスヨンに、「もう出会ったよ、ミギョン」と自分から言うくらい、サンスはむしろミギョン失った喪失感のほうが大きく残っている感じの会話が描かれています。

結局、ギョンピルとのことも聞かないまま、スヨンの希望で、当時スヨンが住んでいた家(原作では一度も行ったことのない設定)を二人で観に行きます。

そして、その近くの上り坂を二人で上り、丘の上から住宅の風景を眺めながら「ここ、良いでしょ」という会話で終わります。

このエンディング、作家は悩みすぎて何パターンも書いたそうですが、、、

正直、このラストは、よくわからなかった…(笑)

エンディングは、ドラマ版のほうが好きかな…

というわけで、比較してみると、4人の男女の「愛」と「利害」が交差する様子を生々しく描いた原作小説が、ドラマ化にあたって、サンスとスヨンのラブストーリー&成長物語に書き換えられたことがよくわかります。

もちろん、ドラマは必ず原作に忠実でなければいけないわけではありません。むしろ、ドラマに最適な形で大いにアレンジされればよいと思っていますが…

この作品の場合、設定もメッセージも変えたにも関わらず、出来事や流れだけはそのまま生かしているため、ところどころに、そのほころびというか、チグハグ感が若干感じられます。

一方で、「愛の理解」寄りだったドラマでは、ラブストーリーは二人がメインだったものの、周辺の人物たちの描写がより豊かになっていて、それを通じて様々な愛の形を表現していました。

ギョンピルの自己犠牲的な愛。サンス母とミギョン母の立場を超えた友達としての愛情。スヨン父の母に対する愛情などなど。

両方の内容を知ると、よりこの作品が楽しめるのではないでしょうか…!

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妄想版「愛と、利と」

最後に、原作を読んでみて、「もし自分がこれをドラマ化するなら…」と考えてみた内容についてまとめてみます。

紹介したように、原作は…

サンスとスヨンがメインというわけではなく、4人の関係が入り混じって描かれる感じ
「それは愛なのか?自尊心を満たすためなのか?」というそれぞれの行動が生々しく描かれる

という感じで、確かにこのままドラマ化すると、あまりに生々しくて視聴者が共感しにくい懸念はありますが…

だからといって、サンスとスヨンをラブストーリーをメインにし、結局、二人は最初から両思いだったという前提にしたのは、ちょっともったいないと思いました。

主人公の男女のラブラインを強調し、サブのキャラクターはあくまでそのラブラインを引き立てる役割、というのは確かにわかりやすくはあるのですが、設定としてはやや古い感じ。

最近は、主人公より二番手の男性が人気が出て、「私は◯◯派」と盛り上がる作品もあるので、むしろここでジョンヒョンやミギョンが魅力的に描かれたほうが、「スヨンとサンスはどちらを選ぶのか!?」という視聴者の盛り上がりポイントができてよかったのでは?と思うわけです。

なお、原作で描写されているジョンヒョンのキャラクターを踏まえ、もし私がプロデューサーならキャスティングしたいのは、推しでもあるイ・ジョンウォン。

 

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甘いスイーツという感じではありませんが、原作のキャラクターで重要だと感じた、鋭さと揺るがなさがある感じ。

「ゴールデンスプーン」「家族です」などにも出演していて、次はいよいよ主役級の作品が検討されています…!

ジョンヒョンが、アルバイトという立場でも堂々として、サンスとは全く逆の魅力をもっているキャラクターだったとしたら、だいぶ作品の雰囲気が変わったのではないでしょうか?

ちなみに、イ・ジョンウォンは「賢い医師生活2」では、ユ・ヨンソク演じたアン・ジョンウォンの元で学ぶインターン生としても共演しているので、そういう意味でもこのキャスティングはワクワクします(笑)

そして、同じようにミギョンのキャラクターも、仕事そっちのけで恋愛に夢中になるお金持ちのお嬢さんではなく、仕事にも熱心で、サンスを心の底から理解しようとする女性として描いたら、もっと面白かったのにと思います。

私が原作を読んでの印象は、カン・ソラかなあ・・・

 

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そうなると、元カレ役のギョンピルもチャン・スンジョにしたい感じ(笑)(ムン・テユも大好きだけど!)

 

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今、二人でやってるドラマ「私たち、他人になれるかな?」で二人とてもお似合いだし、ギョンピルのように掴みどころのないキャラクターをとても上手く演じそうです!(「知ってるワイフ」でも銀行員役をやってたし)

あ、見返したら「知ってるワイフ」もKCU銀行&信用協同組合だった…!


*tvN 아는 와이프 HPより

なお、原作に、サンスが、スヨンとミギョンの違いについて考える場面で、こんな表現があります。

ミギョンはいつも自分によりそって、関心を共有しようとした
スヨンはいつも自分の観点に固執して、サンスが考えもしない視点で鋭い指摘もした
スヨンの意見に折れてあげるのは、何もプライドが傷つかなかったが、ミギョンには、説明でちょっとうまく行かないだけでも狼狽してしまう

さらに、なかなかスヨンと気軽に会話できないドラマのサンスとは違って、原作のサンスはスヨンにタメ口で

「ほんと、お前には何でも話せるんだよ。できるとか、できないとか考えずに。だから、お前が好きだったんだ」

と、まで言うほど(笑)

しかし、最終的には、自分を心から愛してくれたミギョンを失った大きさに気が付きます。

原作のサンスは結局、本当に自分を愛してくれた人が居たのに、自分の自尊心の不足から、その愛の大切さに気がつくことができず、自尊心を満たしてくれる相手を求めたわけです。

はじめからサンスとスヨンのラブストーリーありきではなく、ミギョンとジョンヒョンのキャラクターをもっと立たせて、こういった「愛」と「自尊心」の問題をリアルに描いたほうが、逆に新鮮で面白かったのでは?と思いました(共感できるかどうかは、別として 笑)

…ということで、私の妄想はここまで!

「愛と、利と」ロケ地情報

最後に、Twitterで紹介した、ロケ地情報もこちらでもう一度紹介しておきます。

まずは、KCU銀行ヨンポ支店のロケ地。

撮影に利用したのは入り口の外観だけかと思いきや、サンスたちがタバコを吸っていた路地建物のすぐ横にあったし、非常階段もこの建物の裏側で実際に撮影されたようで、なかなか見ごたえがありました。

そして、CGで「Time's up!」という名前に変えられて居たカフェは、3号線東大入口駅から徒歩15分の「意外の組合」というカフェ。

「意外の組合」は「キム秘書はいったい、なぜ?」のロケ地として、詳しい行き方や、周辺のロケ地など、韓ドラTrip!で紹介しています。

最後に

というわけで、長々と「愛と、利と」について説明してきましたが、私もおかげでだいぶ自分の中でのもやもやが整理できました…!

韓国ドラマが昔と比べても、かなり細部のクオリティが高くなり、「あれにはこんな意味が込められている…!」という解説が流行りの昨今。

かといって、すべてのドラマが緻密に作られているわけではなく、最近は作品数が増えて、むしろ突っ込みどころが多いドラマも増えているなと感じます。

モヤモヤしたからと言って、それは必ずしも観る側が「深く読み取りきれなかった」ということでもないと思うし、期待が大きいこそ、言いたいことも多くなる。

「愛と、利と」は、やっぱりところどころに原作と設定を変えたひずみが感じられて、私がここまで時間を掛けて原作を読んだり、記事を書いたのは、面白くてハマったからというより、「これ、自分だったらどうしたかな〜」という好奇心のほうが強かったかも知れません(笑)

とはいえ、友達とあーだこーだ言いいあいながら観たのは楽しかったし、やっぱりユ・ヨンソクのメロ職人っぷりを再確認できてよかったかな(「賢い医師生活」シーズン3早く〜〜〜〜)

この記事が、みなさんのモヤモヤ解消に、少しでもお役に立てば嬉しいです〜!

追記:なんと原作小説の著者イ・ヒョクジン作家がこの記事を読んでくださったようで直接メッセージ頂きました><

ユ・ヨンソク出演「賢い医師生活」関連の記事はこちら

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*画像はJTBC公式ページからお借りしました