「悪の心を読む者たち」レビュー:実話解説・犯人キャスト・韓国視聴率など

韓国ソウル在住
ブロガーMisa
名作「悪の心を読む者たち(악의 마음을 읽는 자들)」について、実際視聴した私が、作品をより深く楽しむための情報を紹介していきます。

「悪の心を読む者たち」はこんな作品!

韓国で2022年1月14日からSBSにて放送された「悪の心を読む者たち(악의 마음을 읽는 자들)」。主演はキム・ナムギル。

ポスターもかっこいい…!

韓国初のプロファイラーとして知られているクォン・イリョン氏&元記者のコ・ナム氏が書いた同名のノンフィクション小説をドラマ化したサスペンス。
この作品、観始めて5分で名作の匂いがして…1話終わったら、もう「名作きた〜!」と思いました(笑)
そして…キム・ナムギルの大人の魅力がやばすぎる!!!
個人的には、シリアスなキム・ナムギルを見られるという点では、彼の出演作ではこの作品が一番好きです。
作品としても、「シグナル」を観た時の感じ近くて、サスペンスドラマとしてオススメの名作。実話ベースであるという点も「シグナル」と重なりますね。
視聴直後の感想

韓国初のプロファイラー:クォン・イルヨン氏

このドラマは、韓国初のプロファイラー、クォン・イルヨン氏&元記者のコ・ナム氏の同名のノンフィクション小説がベースとなっています。

クォン・イルヨン氏

ドラマ化をきっかけに、主演俳優たちとも交流

「悪の心を読む者たち」あらすじ・キャスト・脚本監督

あらすじ

物語の始まりは、1998年。犯罪捜査の現場に、まだプロファイリングという概念が浸透していなかった時代。

キム・ナムギルが演じるソン・ハヨンは、いつも冷静に色んな角度から物事を考え、森と木を同時に見ることができる刑事。

このハヨンが、韓国初のプロファイラー、クォン・イルヨン氏をモデルとして作られた人物です。

一見、冷たそうに見えて、実は共感能力も優れているハヨン。

そして、早くから犯罪心理分析の必要性を感じ、保守的な警察組織のなかで新しい組織づくりに奔走するクク・ヨンスを演じるのは、演技派俳優として知られるチン・ソンギュ。

ちなみに、「クク・ヨンス」ってカタカナにすると「その年、私たちは」の女性主人公の名前と同じですね(韓国語だと微妙に文字が違いますが)

ハヨンの能力がプロファイラー向きだと見抜いたヨンスは、ハヨンを引き連れて「犯罪行動分析チーム」を立ち上げることになんとか成功します。

チームに配属されたチョン・ウジュを演じるのはリョウン。

しかし、この当時は、まだまだプロファイラーという役割自体の重要性が認識されていなかった時代。「犯罪行動分析チーム」は現場の刑事たちに煙たがられながら、自分たちのやり方で、犯人の心理を分析していきます。

従来のやり方で犯人を追っていく現場刑事ユン・テグ役を演じるのは、キム・ソジン。(映画「南山の部長たち」「モガディシュ」などに出演)

ちなみに、放送当時、韓国では、キム・ソジンが演じる女刑事のキャラクターと、彼女の演技が好みが分かれました。(確かに、ちょっと発音・滑舌が気になることが時あったかも)

ハヨンは、とにかく犯罪者の心理を理解するため、刑務所に足を運んでは、凶悪犯罪者を中心にインタビューを実施

一方で、韓国でも猟奇的な事件や、サイコパス的な犯人による連続殺人事件が続いたのもこの頃。

「犯人探し」や「犯罪そのものの残虐さ」を描くのではなく、犯罪者の心理と犯罪を追う人たちに焦点を当てたサスペンスです。

脚本・監督

監督:パク・ボラム(「熱血司祭」「ペントハウス」の補助演出)
脚本:ソル・イナ
これを観る限り、監督は初独り立ち作品のよう。(キム・ナムギルとは「熱血司祭」の縁なんですね!)そして、脚本家も過去作品情報がない。
「新人・キャリアの浅い制作陣の作品のほうがむしろ斬新でイケてる」と思って初回から期待しましたが、良い意味でSBSのオールドな感じがなく、脚本も演出も洗練された作品に仕上がっています。

ドラマの台本集も発売されています

「悪の心を読む者たち」見どころ

①犯人の心理と犯罪を追う人々に着目

「悪の心を読む人たち」がこれまでのサスペンスと異なるのは、犯人探しや犯罪の残虐さではなく、「犯人の心理」と「犯罪を追う人々」に着目しているところ。

2021年に百想芸術大賞で作品賞を受賞した「怪物」も、犯罪被害者と犯罪を取り巻く人達の「心理」に焦点を当てたものでしたが、もはや成熟しきったと思えるサスペンスジャンルにおいても、こうやって少しずつ着眼点を変えて新しい作品を出してくるのが韓国ドラマのすごいところ!

「心理」に焦点を当てているため、サスペンス好きの方はもちろん、ヒューマンドラマや社会派ドラマを好きな方にもグッと来る深みのある内容となっています。

②犯人役の俳優たちの名演技

そして、この作品で最もフォーカスされいている「犯罪者の心理」については、犯人役の役者さんがすごい演技が上手いので、キム・ナムギルとの対面シーンも毎回見どころの一つ。

全12話の中で、様々な凶悪事件の犯人が登場しますが、どの犯人役も演技派揃い!!!

猟奇的な犯人の思考、行動がゾクゾクと伝わってくるような名演技で、韓国の放送当時も、この犯人役の俳優たちの演技が大きな話題になりました。

また、この「悪の心を読む者たち」でキム・ナムギルはSBS演技大賞の対象を受賞しましたが、その受賞コメントでキム・ナムギル自身も犯人役の俳優たちの演技を称賛しています。

③実際の事件をモチーフにしたストーリー展開

そしてやはり、ノンフィクション小説が原作なだけに、登場する事件は韓国で実際にあった凶悪犯罪事件がモチーフになっています。

放送当時、韓国のネット掲示板では「これはあの事件だね」と盛り上がり、おかげで私も実際の事件を調べてみたりする楽しみがありました。

さらに、なんと犯人の情報が公開されている事件をモチーフにしたものについては、実際の犯人と似た雰囲気の俳優をキャスティングしているのです!
(日本でいうと、例えば”宮崎勤事件”ぐらい、犯人の顔が有名な事件たち)

この点も含め、モチーフとなった事件について、さらに詳しく整理してみましょう。

「悪の心を読む者たち」モチーフとなった実話事件

1‐2話 赤い帽子事件(2003年)

事件概要
2003年3月から、赤い帽子を被った男性が、女性136名に対し、67名を暴行、53名に暴行を試みた事件。

「花札の赤色は開運を示す」との考えから赤い帽子を被り、店主と従業員がすべて女性であるカフェ、ビアホール、カラオケ店、スナックなど規模の小さい飲食・遊興業所を主に狙った。

犯人の”ソン氏”は、犯行後、手の触れた部分をタオルで拭き取り、指紋を残さないなど綿密さを見せ、2年間も捜査網を逃れたため、警察関係者の間では「赤い帽子」と呼ばれていた。

ドラマでの犯人役・実際の犯人
役名:ヤン・ヨンチョル
俳優:コ・ゴンハン「Sweet Home」「軍検事ドーベルマン」など)

(この事件は犯人の顔は公開されていない)

関連記事
「赤い帽子」、2日に1回の犯行...136人に婦女暴行(中央日報日本語版:2005.03.28)

3‐4話 ソウル城東区女児バラバラ殺人事件(2001年)

事件概要
2001年5月、4歳の女の子が父親と兄と散歩中、兄とだけ遊ばせていた隙に忽然と姿を消し、9日後に女児は、住宅街の路地で、登山用リュックに入れられた状態で発見された。ただし、頭部と下半身一部が欠如していた。

更に2日後、モーテルの客室のトイレで発見された黒色ビニール袋から、女児の下半身が見つかった。
その後、その部屋に宿泊していた40代の男性、チェ・イングが逮捕される。チェ・イングは、1998年にも5歳の女児に対してわいせつの前科があった。

女児の体から犯人の精液が検出され、犯人は「アイスクリームをあげる」と言って女児を連れだし、性的暴行を試みたが上手く行かず殺害したことを供述した。

1審では死刑、2審で無期懲役で刑が確定し、現在も服役中。

ドラマでの犯人役・実際の犯人
役名:チョ・ヒョンギル
俳優:ウ・ジョングク(「Sweet Home」「イカゲーム2、3」など)

実際の犯人:チュ・イング 写真

4‐8話 ユ・ヨンチョル連続殺人事件(2003年)

事件概要
2003〜2004年にソウルで起きた、韓国史上、最も多くの犠牲者がでた連続殺人事件で、犯人ユ・ヨンチョルは、高齢者や売春女性ら20人を殺害した。

社会への怒りや女性憎悪を動機として語った一方、金銭欲や快楽も絡む矛盾した犯行で、韓国社会に大きな衝撃を与え、韓国で「サイコパス」の概念を定着させるきっかけとなった。
2005年に死刑判決が確定したが、韓国では死刑が長年執行されていないため、いまも服役中。

なお、この事件は、Netflixで「レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件」というドキュメンタリーにもなっており、先ほど紹介したプロファイラーのクォン・イルヨン氏がドキュメンタリーにも登場します。

「悪の心を読む者たち」を見た後に、もしくは同時にこのドキュメンタリーを見ると、ユ・ヨンチョル事件はもちろん、キム・ナムギルのキャラクターやドラマの状況を理解するのにもすごく役に立つので、このドラマを観る方は必見です!

ドラマでの犯人役・実際の犯人
役名:ク・ヨンチュン
俳優:ハン・ジュヌ「ハピネス」「となりのMr.パーフェクト」など)

実際の犯人:ユ・ヨンチョル 写真↓

一見、好青年な感じもすごく似てる・・!

関連記事
連続殺人犯のユ·ヨンチョル(54)が刑務官に被害者の幽霊が見えるという話を打ち明けた(毎日経済:2024.11.01)

6‐10話 チョン・ナムギュ連続殺人事件(2004年)

事件概要
2004年から2006年まで、ソウルや京畿道周辺で14名を殺害、19名に大きな負傷を追わせた連続殺人事件。2004年7月に逮捕された、先程のユ・ヨンチョルと同時期に発生した事件として有名。

犯人のチョン・ナムギュは、「血の匂いをかぎたい「100人殺さなければならないのに、達成できずに捕まったのが悔しい」と発言するなど、殺人そのものに快楽を感じていた異常性を持つ。

死刑を言い渡されたが、2009年11月、40歳のときに服役中に自殺。

ドラマでの犯人役・実際の犯人
役名:ナム・キテ
俳優:キム・ジュンヒ(「私の夫と結婚して」「トリガー」など)

実際の犯人:チョン・ナムジュ 写真

放送当時、これも「かなり似てる・・!」と話題になりました。
「私の夫と結婚して」のパク・ミニョンの邪魔をする上司役の俳優さんですが、未だにこの役のインパクトが強すぎて忘れられません・・・

11‐12話 カン・ホスン連続殺人事件(2005年)

事件概要
2005年10月から2008年12月まで高級乗用車を利用して被害者を誘引する方式で計10人に性的暴行をしたり、殺害した。凶悪犯と言えば、よく思い浮かぶイメージと相反する好感型の顔と特有の話術を誇り、プロファイラーと捜査官を当惑させた殺人鬼として知られている。2009年に死刑確定判決を受けて服役中。

大韓民国でサイコパスを語る時、ユ·ヨンチョル、チョン·ナムギュなどと共に一番先に言及されるほど悪名が高い犯罪者。

直接的な利害関係のない不特定多数を相手に殺人衝動を解消したという点で、他の連鎖殺人犯と似ているが、幼い頃の精神的外傷や社会的疎外感などはなく、プロファイラーの分析によると「自分の欲望をよくわかっており、自己管理ができる人」という点で、これまでの連続殺人犯とは異なる特性が注目された。

ドラマでの犯人役・実際の犯人
役名:ウ・ホソン
俳優:ナ・チョル(「ヴィンチェンツォ」「弱いヒーロー」など)

実際の犯人:カン・ホスン 写真

その他

その他、事件として大きく扱われませんが、ドラマや映画でもよく登場する「華城連続殺人事件」などもちらっと登場します。

1986年以降に、10代〜70代までの女性が殺害・強姦された事件で、映画「追憶の殺人」、ドラマ「シグナル」でも取り上げられた、韓国で最も有名な連続殺人事件であると言っても過言ではありません。

なお、この事件は色んな作品でよく出てくるので、「殺人の追憶」を観ておくと、韓国のサスペンスもの理解が深まります。

「悪の心を読む者たち」日本での配信・放送情報

「悪の心を読む者たち」は、2025年8月現在、Netflixで配信されています。
常にNetflixで配信されいるわけではないので、まだ見てない方は是非この機会に御覧ください!

악의 마음을 읽는 자들(悪の心を読む者たち)
韓国放送:2021年1月14日
SBS 金・土ドラマ 22:00〜
公式HP
おすすめ記事
関連記事

韓国在住K-dramaライターMisa「私の夫と結婚して」日本版の成功をビジネス観点から読み解きます。(ネタバレなしの内容です)Amazonプライムのオリジナル作品として、2025年6月27日から配信された、韓国[…]

関連記事

MisatvN週末ドラマ「未知のソウル」(日本:Netflix配信)をもっと深く楽しむための解説記事です。前半には、これから見ようか迷ってる人向けのネタバレなしの内容もあります。「未知のソウル」作品概要&感想[…]

関連記事

韓国ソウル在住ブロガーMisa韓国で現在6話まで放送中の「괴물 (怪物)」について、実際視聴した私が、これから観る方に向けて、どんなドラマか?(キャスト・韓国での反応・日本での放送予定など)を紹介していきます。「[…]

*画像はSBSからお借りしました。