「未知のソウル」レビュー:脚本・演出考察・キャスト情報・韓国での評価など

Misa
tvN週末ドラマ「未知のソウル」(日本:Netflix配信)もっと深く楽しむための解説記事です。前半には、これから見ようか迷ってる人向けのネタバレなしの内容もあります。

「未知のソウル」作品概要&感想

物語概要:顔以外すべてが正反対の双子の姉妹が、人生を入れ替える“嘘”をきっかけに、真実の愛と本当の人生を見つけていくロマンティック成長ドラマ。

タイトル・原題「未知のソウル」(미지의 서울)
話数・ジャンル全12話/ヒューマンロマンス
放送期間・放送局2025年5月24日〜6月29日(tvN土日ドラマ)
日本配信:Netflix
脚本・演出脚本:イ・ガン(「五月の青春」)
演出:パク・シヌ(「星がウワサするから」「サイコだけど大丈夫」「ボーイフレンド」)、ナム・ゴン(「愛の温度」)
企画・制作企画:スタジオドラゴン
制作:モンスターユニオン、ハイグラウンド、ネクストシーン

「未知のソウル」これから見る人へ

1話から楽しめる作品
→「同じ顔の双子が入れ替わる」という興味深いストーリー、パク・ボヨンの1人2役演技に引き込まれる
好き嫌いが分かれにくい作品
→激しい感情・暴力シーンなどがなく、共感しやすい素材。幅広い人たちにおすすめしやすい
ラブストーリメインではなく、ヒューマンロマンス
→ラブストーリーメインで観たい人、刺激的な展開が好きな人にはやや物足りない可能性。あくまでヒーリングドラマ
「二十五、二十一」「その年、私たちは」のようなエモさがありつつ、「海街チャチャチャ」のようなヒーリング要素がある作品。その上、作品の完成度としては、この3作品よりも高く、最後まで満足して観ることができる作品です。

「未知のソウル」脚本家メッセージ・企画意図

イ・ガン作家は、この作品の発表にあたりこんなメッセージを発表しています。

「“他人にも言わないような言葉や思考で 自分を責めておとしめる”という自己嫌悪は、
私にとっても、長い時間いまだに解けていない 宿題のようなものです」

「ドラマの登場人物たちも、視聴者の皆さんも、
自分自身にもう少し優しくなれたら、という願いに重点を置いて作品を書きました」

そう、脚本家自身が、「自己嫌悪」からまだ完全には抜け出せないからこそ、こんなに共感でき、癒やされるセリフが生み出されたのです。

さらに「企画意図」にも、脚本家のメッセージが明確に示されています。

私の人生はこんなにも複雑に絡まっているのに、他人の人生は、ずいぶん単純で、たやすく見えることがあります。
「私があの容姿だったら」「あの条件だったら」「あの性格だったら」…
そんなふうに想像しては、今よりずっと楽な人生だったんじゃないかと思ったりします。

けれど、いざ誰かの人生をじっくり覗いてみると、皆それぞれに痛みや困難を抱え、ただ幸せになるためにもがいている――
そんな、自分と変わらない人間だと気づかされ、ようやくその人を、愛と共感のまなざしで見つめるようになります。

では、いちばん身近な「自分自身」にはどうでしょう。

これまで、どれだけの痛みや困難を抱えて生きてきたか、誰よりも自分がいちばん知っているはずなのに――
他人には決して向けないような厳しい物差しで、自分自身を責め、嫌ってはいないでしょうか?

『未知のソウル』は、人生を入れ替えて生きることになった愛すべき双子の姉妹の物語です。

「自分の立場から見えていたことがすべてではない」と気づいていくなかで、他者の人生に深く寄り添えるようになる優しさを描き、さらには、自分自身の人生にも、もっと寛容であたたかいまなざしを向けられるようになる――

そんな“やさしい共感”を、皆さんにお届けできたらと思います。

「未知のソウル」台本集(全編韓国語):内容は下記イベントでも解説

「未知のソウル」作品解説イベント

私は、自分が深くハマったドラマについては、オンラインで作品解説イベントを開催しています。
「未知のソウル」は特に、韓国で発売された「台本集」の内容をもとに、脚本家の意図や名シーンの誕生秘話なども交えて解説を行いました。

「未知のソウル」作品解説イベント主な内容

■作品解説
1人2役の撮影方法
→撮影に欠かせなかった代役の俳優・苦労した撮影方法について
名セリフ振り返り、解説
→「愛は勝ち負けではなく〜」というセリフのニュアンス解説など
字幕の裏側解説
→セジンのセリフ「マニト」とは?ホス母が学校で「オールドミス」と言われたセリフの背景など
台本集の脚本家コメンタリー紹介
→あの名セリフ・設定は実は監督のアイディアだった
→キム・ソニョンさんの名シーン誕生の裏話
演出考察:エンディング熊のぬいぐるみに込められた意味 など
■ロケ地紹介
ロサ食堂撮影地、ホス&ミジデートシーンのお店・カフェなど
→参加者にはロケ地18箇所をまとめたNAVER MAPのURLを提供
イベントは終了しましたが、現在イベントのアーカイブ動画を視聴できるチケットを販売しています。興味のある方は、こちらをご覧ください。

アーカイブ視聴チケットはこちら

「未知のソウル」作品解説・こぼれ話

ここからは、作品解説イベントの内容の一部や、こぼれた話などをご紹介します!(ネタバレ有り・視聴済みの方向けの内容です)

「未知のソウル」”あるある”の一歩先の脚本

イベントのお申し込みの際のアンケートの声でも多かったのですが、この作品の魅力の一つが、今までの韓国ドラマの”あるある”を崩すような描き方をしている点。

特に、10話の最後の展開(ホスにおきた異変)を見た時は、私も正直「え〜〜〜〜っ!」とかなりテンションが下がったのですが・・(20年前の韓ドラのあるある展開だったので)

結果的には、それをちゃんとミジとホスが成長する機会として回収してくれました。ちなみに、このような展開にしたのは、パク・シヌ監督の意見が大きく反映されたといいます(詳しくは、イベントで解説)。

それから、もう一つ、あるあるを超えて、とても深いと感じたのが、ホスの先輩のチュングのキャラクターと二人の関係性。

これまでの韓国ドラマの描き方であれば、チュングの障がいはあくまで設定の一つ。もしくは、障がいがゆえに、特別な別の才能を持った人物として描かれがちでした。

この点については、韓国でも以下のようなレビュー記事が出たほどです。

韓国ドラマにおける障がい者描写の大半は“ひとり”のキャラクターを“善意的”に、あるいは“超人的”に扱うことが多かった。つまり「対話」や「対等な葛藤」の枠組みからは外れていた。

ここで取り上げられているイ・ホスとイ・チュング)のシーンは、その意味で画期的だ。彼らが「時に衝突し、時に助け合う関係性」を見せたことで、筆者は彼らを「競争相手であり、同志」としてとらえている。
(ハンギョレ21記事「『未知のソウル』のあの弁護士、車椅子に乗っている私の友人が強く共感していた」 2025-07-10)

なお、このように「二人が信念の違いからぶつかる姿を見せたかった」というのは、台本集にも脚本家の意図として明示されてもいます。

個人的には、ホスがチュングに言った

 「先輩が弱点と呼ぶ その部分が 先輩を強く特別な存在にしている 弱い姿に心が引かれ その弱さゆえに 尊敬することは 悪いことですか?」

というのも、とても画期的なセリフで、とても印象に残っています。

このセリフが違和感なく入ってくる背景には、物語全体を通じて「弱さ」をどう受け入れるのか?という点が描かれており、障がいも弱さ(と本人が考える点)の一つとして描かれているからでしょう。

一方で、チュングが主人公ホスと対立し、邪魔をするという行動からは、最後まで敵対する”悪役”として描かれるのかな・・?と思いきや、最終的にはホスが「先輩、だって僕のこと好きですよね?」とまでいうぐらい、チュングの行動の裏にある、ホスへの愛情が随所に垣間見れます。

韓国ではこのチュングの登場シーン、「ホスが家まで来たからって、嬉しくてチュングがおしゃれして出てきたんじゃないか?(笑)」と言われたほど。(なんで私服なんだろうと思ったらこれは、チュングの自宅マンションの1階という設定なんですね)

脚本家は台本集にて、チュングが「一番嫌いなのは自分です」と答えたホスを採用した理由として、「自分を誰より嫌う人は、他の人から嫌われることを恐れないとチュングは考えた」と解説しています。

「敵か味方か?」という単純化された関係性ではなく、「自分と似ている」と思って共感しながらも、信念の違いで対立する。でも、相手への執着も愛情の現れの一つ・・と、関係性がとても立体的に描かれています。

「未知のソウル」キャスト関連①パク・ボヨンオススメ作

「未知のソウル」を観て、主役の二人にハマった人へのおすすめ作品をそれぞれ紹介します。

まず、パク・ボヨンについては、同じようなヒューマン系では、Netflixオリジナル「今日もあなたに太陽を〜精神科ナースのダイアリー」は欠かせません。(この作品は、私の2023年のベストNo.1ドラマ!)

「青龍シリーズアワード」では、パク・ボヨンはこの作品の演技で最優秀演技賞も受賞しています。

さらにヒューマン系では、彼女の比率が高くはないのですが、Disney+オリジナル「照明店の客人たち」でしょうか。(ただし、素材が独特なので物語の好き嫌いは分かれるかも。私もあまりハマりはしませんでした)

それ意外だと、ラブコメ・ロマンス作品が多いのですが、正直あまり個人的にヒットした作品はなく。むしろヒューマンドラマを選び始めたあたりからが女優としても評価が上がっていると思います。(あえて観るなら、韓国でもヒットした「力の強い女 ト・ボンスン」ぐらい?)

むしろ、子役時代の映画をまだ観てない方がいたら、オススメです!

今回ミレ・ミジの母親を演じたチャン・ヨンナムさんとは、この作品でも親子を演じており、パク・ボヨンも「そのせいか、とても演技の呼吸が合った」と話していました。オオカミ少年は、若き日のソン・ジュンギ!まだブレイク前のユ・ヨンソクも出演しています。

そしてやっぱり、パク・ボヨンといえば、大ヒット映画「過足スキャンダル」も欠かせません!

「未知のソウル」キャスト関連②パク・ジニョン オススメ作

パク・ジニョンは私も大好きな俳優の一人ですが、「未知のソウル」のホスにハマったのであれば、やはり「ユミの細胞たち2」は欠かせないでしょう。ただ、あくまで「ユミの細胞たち」はやはりシーズン1から観てこそなので・・このシリーズ未視聴の方はぜひ、シーズン1からお楽しみください!(「ユミの細胞たち」シリーズは、私の好きなドラマTOP5に入るくらいお気に入りの作品です!)

「ユミの細胞たち」シーズン1視聴時の紹介記事はこちら

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そして、私が最初にジニョンにハマった作品が実は、主人公ユ・ジテの少年時代を演じた「花様年華~人生が花になる瞬間」です。物語自体はややオールドなのですが、今よりもさらにフレッシュなジニョンが見られます。(*配信は変動的なようなので最新情報をご確認ください)

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さらに、「未知のソウル」の一つ前の作品である「魔女」も個人的には大好きです。不思議な現象を統計学で解決しようとするジニョンのキャラクターがやや独特で、やや暗めのトーンに好き嫌いは分かれるのですが、「ムービング」のカン・プル作家の原作らしく、ヒューマンドラマ要素が強い脚本が好きです。

そして、現時点でまだ日本公開未定ですが、映画「ハイファイブ」では、ホスは全く違うジニョンを観られるので、公開されたらぜひ御覧ください!

「未知のソウル」字幕の裏側解説

作品解説イベントで毎回好評なのが「字幕の裏側解説」。字数の限られた字幕上では、どうしても表現しきれない部分や、韓国の文化や社会を知っていなければわからないネタなどを補足説明することで、セリフをより深く味わうことができます。ここでは、イベントで紹介した一部と、紹介できなかったものを紹介します。

3話:倉庫前でのセジンとイルナム(青年会の幹事)の会話
イルナム:「1人か?ミジは逃げた?」
セジン:「撤回しろ 縁起でもない」

ここのセジンのセリフの部分、実際は「”テテテ(퉤퉤퉤)”しろ、早く」と言っており、言われたイルナムは「ふっ、テテテだなんて」と笑い返しています(この部分は字幕なし)

この「”テテテ(퉤퉤퉤)”」というのは、縁起の悪いことを言ったときに、言った言葉を取り消す(吐き出す)意味で使います。日常生活ではまだ聞いたことはありませんが・・ドラマではたまに登場しますね。

先日配信されたばかりのNetflixオリジナルドラマ「トリガー」(キム・ナムギル主演)の1話でもこのセリフが登場しました。字幕ではだいたい「撤回しろ」という風にやくされますが、音に注目して聞いてみると面白いです。

8話:ミジとホスの会話
ホス「僕が送りたかったな」
ミレ「“義理堅い兄弟”みたいに お互いに送ってたら 永遠に家に帰れないわ」

ここで登場する”義理堅い兄弟”という部分は、韓国語では「의좋은 형제」と言っていて、これは韓国の有名な昔話「義理堅く仲の良い兄弟」のことを指しています。この昔話は、ざっとこんな内容です。

田舎に住む仲の良い兄弟がいて、夜中にそれぞれ「兄にもっと食べ物が必要だろう」「弟にもっと分けてやらねば」と思い、相手の倉にこっそり米俵を運び入れる。翌朝、米が減らないので不思議に思っていたら、夜中にまた会ってしまい、お互いを思い合っていたことを知る…という美談。

ということで、これはお互いを思い合う関係性の気恥ずかしさを、童話に例えて表現したセリフです。

韓国では日常会話でもこのように、映画やドラマや昔話などを例に上げて「まるでXXかよ!」みたいな表現がとても多い。それが当たり前の通じちゃうので、本当に”コンテンツ好き”な人たちだなと思います。

解説イベントでは、さらに

セジンのセリフ「マニト」とは?ホス母が学校で「オールドミス」と言われたセリフの背景など

などなど、字幕だけでは伝わりにくかった部分について詳しく解説していますので、気になる方はぜひご視聴ください!

アーカイブ視聴チケットはこちら

「未知のソウル」台本集(全編韓国語):内容は解説イベントでも解説

「未知のソウル」OST情報

「未知のソウル」OSTで特に印象的だった2曲をご紹介します。

「黄色い春(노란봄)」チェ・ユリ

「夕焼け(노을)」10cm

「未知のソウル」OSTは日本でも購入可能

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*画像は番組HPからお借りしました。