2023年百想芸術大賞:ドラマ関連受賞予想!韓国で評価された作品は?

韓国ソウル在住
ブロガーMisa
2023年4月28日(金)に開催予定の、百想(ペクサン)芸術大賞のTV部門・ドラマ作品のノミネートと受賞を予想しながら、この1年の韓国でのドラマの人気について紹介します!

百想芸術大賞とは?

百想(ペクサン)芸術大賞とは、年に1回行われる韓国のエンターテイメントを総合的に表彰する授賞式。韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれることもあります。TV部門(ドラマ・芸能・教養)、映画部門、演劇部門と分かれています。

59回目を迎える2023年は4月28日(金)17:30〜開催。昨年までと違い仁川のパラダイスシティで行われ、コロナ後初の観客ありの開催。韓国ではJTBCで生中継、TikTokで世界にも中継されます。

審査対象

2022年4月1日から2023年3月31日までに、地上波・総合編成・ケーブルチャンネル・OTTプラットフォームで提供されたコンテンツ(最低4部作、連作の場合1/3以上進行された作品)。

新人賞候補の基準は、作品の中の一定量の主演・助演級で3編以下で、デビュー年とは無関係。

年末には、各放送局ごとに「演技大賞」も行われますが、この百想芸術大賞では、すべての放送局の作品に加え、Netflixなどの動画配信サービスのオリジナル作品まですべてが表彰対象であることがポイント。

そのため、その年の韓国国内のドラマ全体のトレンドや、評価された作品を知ることができます。

ノミネートから見えるもの

百想芸術大賞は、ノミネートされるだけでもハードルが高く価値のある賞です。

作品としての「芸術性」が重視され、必ずしも「視聴率が高かった」「話題・人気だった」という作品が受賞するわけではないのがポイントです。

視聴率がものすごく高くても、芸術性が認められなければノミネートすらされません。

では「芸術性」とは何でしょうか?
公式的な定義はなされていないのですが、ここ数年、百想芸術大賞の受賞予想を続けている私なりには、このように解釈しています。

1)作品関連賞の場合
各観点(脚本、演出、美術など)で…他の作品と比べて優れているポイントがある
特に、過去にないような新しい取り組み「新規性」や「完成度の高さ」が重視される
最近は、作品のメッセージ性や社会性なども重視される傾向

2)演技関連賞の場合
その俳優の演技が作品全体に与える影響の大きさが重要
あくまで重要なのは「演技」で凄みを感じられたかどうか
(役が魅力的だったのか?演技がすごかったのか?を、区別して見極める必要あり)

今年の予想の観点

今年はやはり、社会現象と言っても過言ではないくらい2022年に話題になった「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」と、昨年末にパート1が公開されて、パート2も大きな反響があったNetflixオリジナル「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」の2作品の戦いが熾烈です。

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が10部門、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」9部門にノミネートされています。

しかし、この2作品、同じ”話題になった”と言っても、何が話題になったのか?何が評価されたのか?という観点では、かなり性質が異なります。
百想芸術大賞の受賞予想においては、このように「面白かった」「人気があった」というなんとなくの感覚から、「それぞれの作品がどんな観点で優れていたのか?」をしっかり見極めることが重要です。
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の場合は、まずはなんと言ってもパク・ウンビンの演技力。
キャラクター自体もとても愛されましたが、それは彼女の確かな演技力があってこそなので、パク・ウンビンに関しては最優秀演技賞はもちろん、個人として大賞を受賞しておかしくないと思います。
そして、脚本の社会性・メッセージ性。自閉症スペクトラム障がいを扱ったドラマとして、これまでの作品より一歩踏み込んだ描写を行い、多面的な視点を提示した点などが評価されました。
このあたりは、とても百想芸術大賞が好む”芸術性”を兼ね備えているのですが、一方で作品の後半の展開については「リアリティが落ちた」という声も多く、「作品の完成度」という点では残念さが残るため、これが受賞にどこまで影響するかがポイントです。
一方、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」の場合、韓国でも関心の高い学校暴力問題を扱い、テレビ放送よりも表現の自由度が高い動画配信サービスのオリジナル作品という利点を生かして、問題をかなりリアルに生々しく表現。韓国視聴者の間でも大きな話題になりました。
特に注目されたのが、いじめる側を演じた俳優たちの演技。
物語の中心となったソン・ヘギョやイ・ドヒョンより、むしろいじめる側の俳優たちの演技力のほうが、子役も含めて高く評価されました。
「キャラクターの魅力度・愛され度」でいうと、ウ・ヨンウなのですが、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」では俳優たちの「演技の凄み」が高い評価を受けたため、演技賞においては、ウ・ヨンウよりもグローリーが多く受賞するだろうと予想します。
一方で、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」は、被害者が加害者に復讐する過程を描いている作品であるため、「続きが気になってどんどん見てしまう」「復讐が成功して爽快!」というような、エンターテイメント性・大衆性は確かに高いのですが、社会的なメッセージなど百想が重視する”芸術性”という観点においては、ウ・ヨンウに軍配ありという印象。
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」は、特に芸術性が重視される作品賞、脚本賞は受賞が難しいのではと考えます。
ちなみに今年のノミネートを見て最初に思ったのは、地上波で放送されたドラマが、演技賞も含め、一つもノミネートされていない!=地上波全滅!!!ということ。
ノミネートされたのは、すべてケーブル局の作品または、動画配信サービスでしか見られないオリジナル作品だけでした。
そして動画配信サービスでは、Netflixの一人勝ちでしたね。
いや〜これは、地上波の制作陣は衝撃を受けたのではないかと思います(笑)
これは授賞式の振り返りの記事でも、すこし掘り下げてみたいと思います。
ということで、早速各賞の受賞予想に行きたいと思います!
(今回、新人演技賞の「新兵」を除いては、すべての作品を視聴済みです)

新人演技賞(女性)

キム・ヒオラ(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
ノ・ユンソ(イルタ・スキャンダル〜恋は特訓コースで)
イ・ギョンソン(私の解放日誌)
チュ・ヒョニョン(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
ハ・ユンギョン(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)

今年の予想は、一番最初に発表される、女性新人演技賞から。

先ほど審査基準で紹介したように、「作品の中の一定量の主演・助演級で3編以下で、デビュー年とは無関係」なので、年齢も演技のキャリアも様々な候補が並びました。

特に「私の解放日誌」で印象的なお母さん役を演じたイ・ギョンソン(59歳)は、演劇俳優としてのキャリアは50年目ですが、ドラマ作品の出演歴としては”新人”扱いなのが興味深いですね。

また、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」でトングラミ役を演じて愛されたチュ・ヒョニョンは、韓国ではもともとバラエティ番組で有名であり、昨年の百想芸術大賞では芸能賞を受賞。

そして、なんと今年も2年連続で芸能賞にもノミネートされています!!

2022年は、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」や「エージェント物語」など、俳優としての活躍も目立ちましたが、芸能の方も同時にノミネートされるとは演技・芸能両方の分野で大活躍ですね!

新人演技賞の場合、視聴者から愛されるようなキャラクターを演じた、フレッシュな新人がノミネートされるため、ついつい人気作品で話題になった俳優や、個人的に応援したい・好きな俳優を予想で選んでしまいがち。

しかし、大事なのはあくまで演技力。ここで新人賞を獲る俳優は、ゆくゆくまで”演技派”として認められるような俳優なのです。

ということで、作品全体への影響度と、”演技の凄み”があったかどうかで見極めるとすると、

私の予想は…

受賞予想:キム・ヒオラ(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)

です!

キム・ヒオラもドラマ界では”新人”ですが、演劇・ミュージカル俳優であり、キャリアは13年目。

演技の凄み・作品への影響度という意味では、「私の解放日誌」イ・ギョンソンとも悩みましたが…

キム・ヒオラは、グローリーでは、特別に分量が多かったわけではありませんが、候補者の中では最も”演技の凄み”を感じました。

韓国でも新人賞にノミネートされた事自体も話題となっており、演技に対する評価も高いため、受賞の可能性が高いと予想します。

なお、キム・ヒオラは、実は「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」にも出演していたのをご存知ですか?

6話で脱北者の母親役を演じました。

さらに、「賢い医師生活2」7話でも肝移植を待っているイクジュンの担当患者として出演しています。(顔が黒かったのでだいぶ印象が違いますが、チェックしてみてください〜!)

新人演技賞(男性)

キム・ゴヌ(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
キム・ミノ(新兵)
ムン・サンミン(シュルプ)
チュ・ジョンヒョク(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
ホン・ギョン(弱いヒーローClass1)

次は、男性新人演技賞。昨年は、「D.P.−脱走兵追跡官−」のク・ギョファンが受賞しました。

ENAで放送された「新兵」だけ未視聴なのですが、この中で演技という観点で際立つのはやはり、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」のキム・ゴヌと、「弱いヒーローClass1」のホン・ギョンでしょう。

個人的に大好きだったのは、「シュルプ」のムン・サンミンでしたが、演技はまだ発展途上。

キャラクターの魅力度で言えば、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」のチュ・ジョンヒョクだったかと思いますが、ここはやはり冷静に演技力で見極めなければなりません。

演技の凄み&作品全体を引っ張ったという意味で、私の予想は、

受賞予想:ホン・ギョン(弱いヒーローClass1)

としておきます!

ホン・ギョンは、実は2021年の第57回百想芸術大賞の映画部門で「潔白」で新人演技賞も受賞している実力派です。

候補の中では間違いなく演技派なのですが、むしろ心配としては、映画でも新人賞を獲ってるので、ドラマでも受賞させてくれるかどうか?ということでしょうか。

「弱いヒーローClass1」は、日本では未視聴の方も多いと思うので、映像も紹介しておきます。(メガネの青年がホン・ギョンです)

助演賞(女性)

キム・シンロク(財閥家の末息子)
ヨム・ヘラン(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
イ・エル(私の解放日誌)
イム・ジヨン(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
チョン・ウンチェ(アンナ)

続いて、助演賞(女性)。昨年は、「地獄が呼んでいる」のキム・シンロクが受賞。キム・シンロクは今年もノミネートされていてすごい!

ヨム・ヘランも2021年の百想芸術大賞で「悪霊狩猟団カウンターズ」で本賞を受賞しているほか、ノミネートだけでいうともはや”常連”という感じ。

ということで、演技の実力で言えば、キム・シンロクとヨム・ヘランはもはや殿堂入りレベル(笑)なのですが、今回ノミネートされている作品での演技で考えると…

受賞予想:イム・ジヨン(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)

は、結構カタいのではないかと思います…!

先ほど紹介したように、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」はとにかく俳優たちの演技が高く評価されましたが、その中でも最も高く評価されたのがイム・ジヨンでした。

2011年に映画でデビューし、ヒョンシク主演ドラマ「上流社会」でドラマレビュー。
それまではどちらかというと清楚な役が多く、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」で初めて見せた悪役演技が大きな話題となりました。

グローリーと言えば、ヨンジン=イム・ジヨンというぐらい「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」ヒットの功労者と言え、ここはかなり予想に自信がある部分です。

助演賞(男性)

カン・ギヨン(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
キム・ドヒョン(財閥家の末息子)
キム・ジュンハン(アンナ)
パク・ソンフン(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
チョ・ウジン(ナルコの神)

続いて、助演賞(男性)。昨年は、「D.P.−脱走兵追跡官−」のチョ・ヒョンチョルが受賞。

こちらも愛されキャラクター&人気としては「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」のカン・ギヨンだし、個人的には、「アンナ」のキム・ジュンハンの演技力にもしびれたところでしたが、

「演技の凄み」という観点では、この中で間違いなく突出していた

受賞予想:チョ・ウジン(ナルコの神)

を予想しておきます!!!

「良い映画にはチョ・ウジン」というぐらい、映画界では演技賞を総なめしているチョ・ウジン。

Netflixオリジナルの「ナルコの神」では、中国語と、様々な韓国語なまりを駆使しながら、敵なのか味方なのかわからないキャラクターの多様な姿を細かく演じ分け、ハ・ジョンウやファン・ジョンミンを上回るほどの存在感で作品の中心を支えていました。

チョ・ウジンでなければ、演じるのが難しかったのでは?というぐらい、多面性のあるキャラクターだったと思います。

最優秀演技賞(女性)

キム・ジウォン(私の解放日誌)
キム・ヘス(シュルプ)
パク・ウンビン(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
ソン・ヘギョ(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
スジ(アンナ)
続いていよいよ、最優秀演技賞(女性)。昨年は「二十五、二十一」のキム・テリが受賞しました。
候補者については異論がなく、視聴率が高かった他のドラマの主人公よりも、「アンナ」のスジを候補に入れたあたりがさすが百想!という感じ。
「私の解放日誌」のキム・ジウォンも、実はこういう影のある役がとても似合うということを再発見した印象的な作品でした。
キム・ヘスは昨年の「未成年裁判」に続いての2年連続のノミネートですね。
ここは実は、少し悩みました。
この中で選ぶとすると、迷うことなくパク・ウンビンなのですが、パク・ウンビンについては、個人としてTV部門の大賞を受賞する可能性もあるからです。
しかし、TV部門の大賞はやはり、作品が受賞するだろうということで…
受賞予想:パク・ウンビン(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
と予想します!
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」のソン・ヘギョについては、韓国国内では、演技派というよりは外見が魅力的な人気女優という感じ。
主演をつとめた「太陽の末裔」が大賞を獲った、2016年の第52回百想芸術大賞でも、最優秀演技賞は受賞できず、人気賞を受賞しています。
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」については、これまで多く演じてきた美しい女性、ロマンス演技と比べて、「変身した」という点は評価されましたが、百想芸術大賞の最優秀演技賞というものすごく基準の高い演技賞を受賞できるかどうかは、疑問です。
もしここでパク・ウンビン以外が受賞するようであれば、久々の時代劇でも圧倒的演技力を見せたキム・ヘスでしょうか。
そして、その場合は、自動的にパク・ウンビンは大賞受賞となるでしょう。

最優秀演技賞(男性)

ソン・ソック(私の解放日誌)
イ・ビョンホン(私たちのブルース)
イ・ソンミン(財閥家の末息子)
チョン・ギョンホ(イルタ・スキャンダル)
チェ・ミンシク(カジノ)

最後に、最優秀演技賞(男性)。昨年は「赤い袖先」のイ・ジュノが受賞しました。

ここは実は、色んな意味で候補が少し意外でしたね。

まず、多くの方がここに「財閥家の末息子」の主役のソン・ジュンギが入ることを予想したと思いますが、イ・ソンミンだけを選んだあたりが、やはり演技力を重視する百想芸術大賞らしいなと思いました。

そういう意味では、個人的には「私の解放日誌」は、人気のあったソン・ソックはもちろん、演技という観点ではイ・ミンギのほうが凄かったと感じたのでノミネートに漏れたのは残念…!

他にも、「ビッグマウス」でロマンス以外での演技力も見せたイ・ジョンソクや、それまでのイメージとは全く違う”演技変身”を見せてくれた「愛だと言って」のキム・ヨングァン、「弱いヒーローClass1」の主人公で演技力が評価されたパク・ジフンも、事前候補には入っていたのではないか?と思います。

しかしながら、この候補の中では、

受賞予想:イ・ソンミン(財閥家の末息子)

だと予想します!!!

演技力という意味では、イ・ビョンホンとイ・ソンミンの戦いだと思うのですが、イ・ビョンホンの場合、「私たちのブルース」がオムニバス形式だったのもあり、やはり出演分量が少ない。

一方、イ・ソンミンは、「財閥家の末息子」全体を引っ張り、彼の出番が減った以降は視聴率が下がるぐらい、「財閥家の末息子」=イ・ソンミンの演技が最大の魅力・見どころだったと言えるからです。

芸術賞

ノ・ヨンシム(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌:音楽)
リュ・ソンヒ(シスターズ:美術)
ソン・ナクフン、チョ・ジニョン、ファン・イヌク(人気歌謡:撮影)
チャン・ジョンギョン(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~:撮影)
ファン・ジネ(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌:視覚効果)

続いて、芸術賞。ここではTV部門の芸能、教養番組も含まれるため、ドラマ以外の作品の良し悪しは、さすがににわかりませんが…

受賞予想:リュ・ソンヒ(シスターズ:美術)

と予想します。

「シスターズ」では青い欄などモチーフをうまく使いながら、視覚的なインパクト、映像の美しさが話題になりました。

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の温かい世界観を作り上げた、クジラなどの視覚効果とも悩みましたが、作品の成功への貢献度という意味では「シスターズ」の美術を予想しておきます。

脚本賞

キム・ウンスク(ザ・グローリー ~輝かしき復讐~)
ムン・ジウォン(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
パク・ヘヨン(私の解放日誌)
チョン・ソギョン(シスターズ)
ホン・ジョンウン、ホン・ミラン(還魂)

続いて、脚本賞は、脚本家の名前でノミネートされます。

昨年は、「未成年裁判」のキム・ミンソク作家が受賞。

ここにファンタジー作品の「還魂」のホン姉妹がノミネートされたことや、逆に「私たちのブルース」のノ・ヒギョン作家が外れたことは驚きでした。

脚本賞は、百想芸術大賞の”好み”がはっきりしているため、毎年比較的予想しやすいのですが、今年については完成度という意味で残念さが残る作品も多く、予想が難しいです。

百想芸術大賞の”好み”としては、「私の解放日誌」パク・ヘヨン作家、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」ムン・ジウォンなのですが、どちらも後半の展開が失速したところがあり、完成度という意味では、過去の受賞作と比べると物足りない印象。

一方、百想芸術大賞では、脚本賞はもちろん、個人で大賞も受賞した経験のある、大ベテラン・キム・ウンスク作家。

「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」は、それまで得意としてきた「ロマンス」から「ジャンルもの」に転換した初作品でそれを成功させたという意味では評価される可能性があるのですが、作品の持つメッセージなど百想芸術大賞の大事にする「芸術性」という観点とは少し違う気もするのです。

ということで、悩み悩んだ結果…

受賞予想:パク・ヘヨン(私の解放日誌)

と予想しておきます。

パク・ヘヨン作家は、「私の解放日誌」放送後、2022年の大韓民国大衆文化芸術賞にて大統領表彰、韓国放送作家賞も受賞。

「私の解放日誌」は「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」ほどの大衆的な人気は得られず、観る人によって好き嫌いが分かれる作品ではあります。

ただ、非常に日常的で個人的なテーマで、あれだけのドラマの世界観を作り上げたというのは、まさに脚本家の”文章の力”がなければ不可能なことだと言えるでしょう。「崇めて」というキーワードを生み出したのも印象的でした。

ということで「脚本の力」という意味では、パク・ヘヨン作家の受賞を予想します!

脚本の制作体制の変化や、新人作家も活躍できる環境については、著書でも紹介↓

関連記事

韓国在住KdramaライターMisa2022年5月21日に初の書籍「韓国ドラマの知りたいこと、ぜんぶ」を発売することになりました!いつも、ブログやSNSを観ていただいている皆さん、ありがとうございます。この度[…]

演出賞

キム・ギュテ(私たちのブルース)
キム・ソクユン(私の解放日誌)
キム・ヒウォン(シスターズ)
ユ・インシク(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)
イ・ジュヨン(アンナ ディレクターズカット版)
続いては、演出賞。ここも監督個人がノミネートされます。
昨年は、「イカゲーム」のファン・ドンヒョク監督が受賞しました。
毎年、演出賞は予想を外していて、いまいち「百想の評価する演出とは何か?」が掴みきれてない部分もあり、ここは一番自信がありません(笑)
実は今年は、ここに「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」のアン・ギルホ監督が入っていたはずでした。
グローリーについては、俳優たちの演技とともに演出も高く評価されており、ここにノミネートされていたら、迷うことなくアン・ギルホ監督の受賞を予想したと思います。
しかし、パート2配信後まもなくして発覚した、自身の学生時代の暴力問題により、ノミネートから外されたと思われます。
…となると、ますます予想が難しい!!!
「アンナ ディレクターズカット版」は、確かに演出は印象的だったけど、視聴者の間では、必ずしも”ディレクターズカット版”を評価する声だけではなかった印象。
「シスターズ」のキム・ヒウォン監督は、「ヴィンチェンツォ」に引き続き、斬新で美しい演出で近年注目を集めている監督で、そろそろ演出賞を受賞してもおかしくない。ただ、「シスターズ」は個人的に苦手な作品だったのもあり、この作品の演出の評価については自信がない…。

ということで、

受賞予想:ユ・インシク(ウ・ヨンウ弁護士は天才肌)

と予想しておきます。

演出賞は、ジャンル的に、ヒューマンやロマンスよりも、演出が作品に与える影響が大きいサスペンス系の作品が受賞する傾向があります。

そんな中、ユ・インシク監督は、実はヒューマンドラマの大ヒット作「浪漫ドクターキム・サブ」で、2017年の第53回百想芸術大賞で演出賞を受賞した経験もあります。

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」がヒットした原因の一つとして、クジラの特殊効果や音楽などをうまく使った、温かく愛らしい世界観があったと思うので、ヒューマンドラマ演出のプロとして、ユ・インシク監督の受賞を予想しておきます。

【Misa著書】GWの韓国旅行でロケ地巡り!

作品賞


*写真左から記載。カッコ内は、韓国/日本放送・配信

「私の解放日誌」(JTBC/Netflix)
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」(Netflix)
「私たちのブルース」(tvN/Netflix)
「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(ENA/Netflix)
「シスターズ」(tvN/Netflix)
昨年は、「D.P.−脱走兵追跡官−」が受賞。
こちらも脚本賞と同じように、百想芸術大賞の”好み”がはっきりしているので、毎年悩まずに予想的中させる部門なのですが、
今年はほんとに、どれも決め手に欠けて予想が難しい…!!!!!
作品賞を考える際に大事なのは、これとは別に「TV部門大賞」があるということ。
大賞は必ずしもドラマ作品が受賞するとは限りませんが、芸能・教養番組よりはドラマ作品が受賞する可能性が高い。
そして、作品賞とTV部門大賞はダブルで受賞することはないので、「大賞をドラマ作品が受賞するかどうか?」を考えた上で、作品賞を予想する必要があります。
これまでの傾向で行くと、大賞はどちらかというと芸術性をベースにしながらも、より大きく話題・人気を得た「今年の顔」的な作品。
一方の作品賞は、たとえ視聴率が低くても、作品としての芸術性が優れている「名作」的なものが選ばれる傾向にあります。
まず、私は大賞を「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」と予想。(この理由は後ほど)
なお、ここ10年ぐらいの受賞結果を見ると、脚本賞を受賞する作品が、作品賞も受賞する傾向。
そうすると、脚本賞にもノミネートされている「私の解放日誌」「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」「シスターズ」が候補に。
「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」のキム・ウンスク作家の作品は、百想芸術大賞で脚本賞や大賞は獲っても、実は作品賞を獲ったことありません。
「作品賞」のカラーとは少し違う感じなのです。その点では、「シスターズ」も同じ印象。
ということで、ここは最後まで悩みましたが、
受賞予想:「私の解放日誌」
と予想しておきます。

ただね〜、「私の解放日誌」が脚本賞も作品賞もダブル受賞というのは、やっぱり引っかかるんです(笑)最後の展開は、物足りない点もあったので…。

そうすると、過去に脚本賞の受賞歴がある、キム・ウンスク作家が脚本賞なのかな〜。

いやでも、キム・ウンスク作家が「シークレットガーデン」で脚本賞を受賞したファンタジー全盛期とは、今はトレンドがぜんぜん違うし、グローリーの脚本はやっぱり「作品性」という観点では賛否がある印象。。。

逆に、作品賞が「私たちのブルース」?ただ、脚本賞にノミネートされてない作品が、作品賞を獲るとは考えにくい…。

・・・と考えだしたらきりがないので、一旦予想はどちらも「私の解放日誌」ということにしておきます(笑)
作品賞・脚本賞はほんとに今回悩ましいところです…!

TV部門大賞

ということで、最後はTV部門大賞。

改めて説明しておくと、「TV部門大賞」というのは、TV部門=ドラマ、芸能、教養番組すべての中から大賞を選ぶものであり、必ずしもドラマが選ばれるとは限りません。

また「大賞ノミネート」というのがあるわけではなく、各賞でノミネートされている作品の中から、作品だけではなく、俳優、監督、脚本家個人が選ばれることもあるため、非常に予測が難しい賞でもあります。

昨年は「イカゲーム」が受賞。

ここは、先ほど作品賞のところでお伝えしたとおり、

受賞予想:「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」

と予想します。

実は最初は、パク・ウンビンが個人で受賞することを予想していたのですが、昨年の「イカゲーム」の例を思い出しながら、最終的に作品が受賞する予想に変更しました。

パク・ウンビンの演技あっての作品であり、個人で受賞しても申し分ないと思うのですが、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は作品としても業界に様々な影響を与えました。

脚本の完成度という意味では課題は残ったものの、描かれた世界観やテーマの扱い方は、過去の「グッド・ドクター」などと比べても大きく進化していたこと。

また、世界的に人気があるデスゲームというテーマを扱い、ある意味”韓国ドラマらしい”作品ではなかった「イカゲーム」に対し、韓国ドラマが得意とするヒューマンドラマジャンルで世界ヒットの功績を作ったこと。

そして、これは百想芸術大賞で評されるポイントかどうかはわかりませんが、大ヒットしてもIP(知的財産権)をNetflix側が握っていたためビジネス的な恩恵を受けにくかった「イカゲーム」の事例を踏まえ、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」では、IPを制作側が保有。

作品の大ヒットを受けて、海外でのリメイクやミュージカル、ウェブトゥーンなどの展開で、制作側が2次的な収益を得られる状態を実現し、IPビジネスの理想的な事例としても業界で大きく注目されました。

また、ENAという新規チャンネルでの放送だったにもかかわらず、作品が素晴らしかったため、口コミでどんどん広まっていき、社会現象にまでなったことで、改めて、コンテンツの力が最も重要であることを感じさせた作品でもありました。

「イカゲーム」も作品自体には、国内では賛否がありながらも、作品がグローバルでヒットし、業界にもたらした影響度の大きさが十分に評価され大賞になったことを考えると、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」もやはり、作品単位での大賞となるのではと考えました。

グローバルヒットという意味では、実は「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」は、ウ・ヨンウ以上の実績を残しており、どうしても直近の作品なので印象は強いのですが、「2022年の顔」ということや、作品の話題度・社会や業界への影響度などを考えると、やはりウ・ヨンウのほうが受賞の可能性が高いのではと思います。

当日のスケジュール・中継について

4月28日(金)当日のスケジュールはこちらの通り。昨年よりも時間が早いので要注意です!!

16:00〜17:00 レッドカーペット
17:30〜20:50 授賞式
今年も、すべてTikTokで独占世界生中継されます…!(ただし字幕はなし)
*独占ということなので、おそらく日本のCSなどでの中継はなし。

生中継を観たい方は、あらかじめTikTokのアプリをダウンロードした上で、アカウント登録し、百想のアカウントをフォローしておくことをおすすめします。

必ず「前日までに・事前に」以下をしておきましょう!!!!

①TikTokアプリDL
②beaksang2023 で検索
③フォローボタン→SNSログイン

フォローはこちらのページの真ん中にある「Follow Baeksang Account」から。

最後に

ということで、2023年の百想芸術大賞のTV部門・ドラマ作品の予想をご紹介しました!

今年は、「豪華作品・大作の戦い」とも言われますが、確かに話題作は多いものの、それぞれの作品が「でも◯◯が惜しかった」という部分があるため、予想は困難を極めました(笑)

年々、観る方も作品に求める基準が上がり続けているため、なかなかみんなが満足する作品が出にくくなってきているんですよね。

作品関連の賞の場合は、どうしても全体のバランスもみながら、各賞の作品が決まる感じなので、一つ予想を間違えると、共倒れで他の賞の予想も外れてしまう…今年も「大賞が何なのか?」によっては、各賞のバランスにも大きな変動がありそう。

予想はどこまで当たるかわかりませんが、今回の記事で、各作品で韓国で話題になったことや、受賞の傾向や基準などがわかり、当日の授賞式を楽しめる材料になったら嬉しいです!!

なお、映画部門のノミネート一覧・予想はこちらから

著書↓では、百想過去10年間の作品関連賞の受賞結果も掲載してます

関連記事

韓国在住KdramaライターMisa2022年5月21日に初の書籍「韓国ドラマの知りたいこと、ぜんぶ」を発売することになりました!いつも、ブログやSNSを観ていただいている皆さん、ありがとうございます。この度[…]

2022年百想:予想&結果

関連記事

韓国ソウル在住ブロガーMisa2022年5月6日(金)に開催予定の、百想(ペクサン)芸術大賞のTV部門・ドラマ作品のノミネートと受賞を予想しながら、この1年の韓国でのドラマの人気について紹介します!百想芸術大賞と[…]

関連記事

韓国ソウル在住ブロガーMisa2022年百想芸術大賞のTV部門のドラマ作品の新人賞・人気賞・芸術賞・脚本賞・助演賞の受賞結果・理由・コメントを翻訳して一挙にご紹介します!今年のテーマ・審査方法2022年5月6[…]

2021年百想:予想&結果

関連記事

韓国ソウル在住ブロガーMisa2021年5月13日(木)に開催予定の、百想(ペクサン)芸術大賞のTV部門・ドラマ作品のノミネートと受賞を予想しながら、この1年の韓国国内でのドラマの人気について解説します!百想芸術[…]

関連記事

韓国ソウル在住ブロガーMisa2021年百想芸術大賞のTV部門のドラマ作品の新人賞・脚本賞・助演賞の受賞結果・理由・コメントを翻訳して一挙にご紹介します!はじめに2021年5月13日に開かれた第57回百想(ペ[…]

2020年百想:予想&結果

関連記事

ソウル在住ブロガーMisa2020年6月5日(金)に開催予定の、百想(ペクサン)芸術大賞のドラマ部門のノミネートと受賞を予想しながら、この1年の現地・韓国でのドラマのトレンドについて解説します!百想芸術大賞とは?[…]

関連記事

ソウル在住ブロガーMisa2020年の百想芸術大賞;ドラマ部門の受賞結果・理由・コメントを翻訳して一挙にご紹介!韓国での最新ドラマの人気・評価を知ることができます。はじめに2020年6月5日に開かれた第56回[…]