「こうなった以上、青瓦台に行く」とは?
韓国国内の動画配信サービス、Wavve(ウェーブ)のオリジナル作品として韓国で2021年11月12日から配信された「こうなった以上、青瓦台に行く(이렇게 된 이상 청와대로 간다)」。1話あたり約30分✕12話。
Wavveは、韓国ではNetflixについで利用者が多く、地上波3局とSKテレコム傘下oksusuが運営する動画配信サービスです。
そして、この作品はNetflixで言うところの「イカゲーム」のようなオリジナル作品で、テレビ放送が無くWavveの会員にならないと視聴できない限定作品。
最近はケーブル局のドラマのほうが面白い傾向が続いたので、地上波陣営のWavveにはそこまで期待していなかったのですが…
この作品、めちゃくちゃ斬新で面白かった!!!Wavve見直しました(笑)
いやほんと、今年見たNetflixオリジナルのいくつかの作品よりも、こちらのほうが斬新で良かった!!!!
Netflixに対抗する韓国産の動画配信サービスでは、ケーブル局などの番組を配信するTVINGが有力で、オリジナル作品「酒飲み都会の女たち」が韓国国内で話題になったことをこちらの記事で↓以前紹介しました。
韓国在住K-dramaライターMisa韓国で話題沸騰のTVINGオリジナルドラマ「酒飲みな都会の女たち」について、あらすじや見どころを紹介します!「酒飲みな都会の女たち」とは?韓国国内の動画配信サービス、TV[…]
「こうなった以上、青瓦台に行く」は、それに比べると、まだ観た人自体が少ないのか、そこまで話題になっていないのですが、観た人の中では評価がとても高く、「今年最高のドラマ!」と絶賛する人もいるほど、とても斬新な作品。
씨네21 という映画専門メディアが、映画評論家・記者・ライターなど30名を対象にとった「今年を輝かせた作品」アンケートでは、なんとD.P.やイカゲームなどを抑えて、堂々の1位を記録しています。
コロナが存在しない世界を前提とするドラマがほとんどな中、このドラマでは「2020年から流行したコロナが2021年には収束した」という設定で、序盤はコロナ禍の様子も描かれ、開始5分で「そんなに皮肉っちゃって大丈夫!?」というぐらいブラックユーモアたっぷりで驚き!
作品の企画自体に「配信オリジナルだからこそ可能なものを」という明確な戦略を感じるとともに、「こういうジャンルもイケちゃうんだ」という新しいジャンルの可能性を感じさせるインパクトのある作品でした。
面白くてあっという間に完走❗️あらゆる韓国社会のイシューが散りばめられたネタ満載のセリフ・斬新な演出👏 これは下手なネトフリオリジナルより最高だった✨配信オリジナルだからできる内容で企画自体が👍新しいジャンル可能性を感じる秀作。Wavve、TVINGのオリジナルは質が高くて来年の飛躍に期待😆 https://t.co/EuBm20PS1q
— Misa🌺韓国在住K-dramaライター (@misam34) December 27, 2021
現時点では、日本では観られないのですが、Wavve自体が日本進出を視野にいれているようなので、近いうちに日本でも観られるかもしれません。
また、Netflixだけではなく、韓国国産の動画配信サービスでも、こんな魅力あるコンテンツを作っているということをお伝えする意味も兼ねて、ネタバレなしで「こうなった以上、青瓦台に行く」のあらすじ・みどころ・キャストなどの情報をお伝えしたいと思います。
「こうなった以上、青瓦台に行く」あらすじ・キャスト
2020年、コロナ禍の韓国。文化体育観光部長官が、オンライン会議で失態を犯し、新しい長官を任命することに。
できるだけ不祥事リスクが少なく、国民の支持を得やすい人物を…と選ばれたのは射撃競技のオリンピック金メダリストであるイ・ジョンウン。演じるのはキム・ソンリョン(「美男ですね」「相続者たち」などのお母さん役でおなじみ)
議員経験はあれど、政治家としてはまだまだ経験が少ないイ・ジョンウンを支えるのは、文化体育観光部の職員たち。
左のチョン・スンギルは「秘密の森2」などでおなじみ。
ちなみに、文化体育観光部とは実在する韓国政府の省庁の一つで、文化・芸術・体育・観光のほか国政の広報的な役割も果たします。(日本でいうと文部科学省に近い感じ?)
不祥事などですぐに変わってしまう可能性もある長官よりも、省庁の職員=官僚たちが実際の実務を支えてる構造は日本と同じ。
そして、ジョンウンの右腕となる秘書・キム・スジンを演じるのは、イ・ハクジュ。今年は、「マイネーム」でも注目されましたが、この作品でさらにブレイク!
また、政治評論家であるジョンウンの夫、キム・ソンナム役を演じるのは、ペク・ヒョンジン。
今年はとにかく、ず〜〜っとクセのある悪役で、引っ張りだこでしたが、本作では果たして!?(笑)
憎たらしすぎる悪役で、今年は引っ張りだこのペク・ヒョンジン。ドラマ「模範タクシー」「悪魔判事」「パピネス」「一人だけ」。映画「サムジンカンパニー1995」も。実在しそうな悪役演技が上手すぎる👏
でもこの方、実は本業は画家・美術家。そして音楽家でもあるというマルチな才能の持ち主😲 pic.twitter.com/huEFy01fyI— Misa🌺韓国在住K-dramaライター (@misam34) December 22, 2021
そして、野党の女性議員として、ジョンウンとライバル関係とされることも多い、チャ・ジョンウォンを、こちらも今年ドラマで引っ張りだこだったペ・ヘソンが演じます。(ペク・ヒョンジンとは「ハピネス」でも共演したばかり)
ストーリーは、ジョンウンの長官就任後に突然発生する、夫・ソンナムの拉致事件を中心に展開します。
ジョンウンが政治的に重要な役割を任されたそのタイミングで起こってしまった事件。表向きには華やかに政治活動を行いながら、右腕である秘書キム・スジンを中心に、水面下で拉致事件の対応が行われます。
果たして拉致事件は、単なる金目的なのか?夫婦問題なのか?政治的テロなのか?
「こうなった以上、青瓦台に行く」見どころ
①韓国社会のイシューが詰め込まれたブラックコメディ
「こうなった以上、青瓦台に行く」が面白いのはなんと言っても、韓国社会でイシューとなっている、ありとあらゆるネタがストーリーとセリフに散りばめられているところ。
たとえば、1話の開始5分で最高に笑えた、「新しい文化体育観光部長官を誰にするか?」の会議シーン。コロナ禍という設定で、ちょっと笑えてしまう口元透明マスクをつけた官僚たちが議論し合う場面では、わざと韓国語字幕をつけてマスクだと声が聞き取りにくいことを表現(笑)
そして、膨大な候補者リストの中から「まずは女性に絞ろう」「息子が軍隊免除者もダメ!」「脱税疑惑もNG!」とどんどん候補者を減らしていく様子は、実際の政治家の不祥事ネタをベースにしていて超リアル&ブラックな演出で大爆笑。
とにかくセリフの隅々まで風刺が効いていて、セクハラ、メディア問題、暴力事件、宗教団体、就職難、エンタメ業界の闇…などなど、もう韓国社会のありとあらゆるネタが盛り込まれています。
私もさすがに100%はネタを読み取りきれていないのですが、実在の人物を風刺しているような描写も多いようで、おそらく韓国人が見ると、私が感じた何倍もリアルでブラックな感じなはず。テレビ放送だととても実現不可能そうなシュールな描写には、何度も驚かされました(笑)
台詞の言い回しや、テロップの使い方もすごく斬新…!
まだまだ男社会の政界を舞台にしながら、女性政治家が主人公。ただし、ストーリーは、彼女を取り巻く男性秘書・スタッフたちの目線や心の声を中心に描かれているのも面白いです。
特にイ・ハクジュが演じる秘書目線がメインになるので、この作品ではイ・ハクジュをたっぷり堪能できます(笑)
また、長官を取り巻く職員たちが、あらゆる自体を想定して緻密に計画して、実務をこなしていく様子は、まさに極限職業!エクストリームジョブです(笑)
印象的だった敏腕職員を演じたイ・チェウンは、独立映画界では知られた名俳優なんだとか
②巧みなストーリー構成
そして「こうなった以上、青瓦台に行く」は、セリフや演出だけではなく、全体のストーリー構成も秀逸。「長官の夫 拉致事件」を中心に置きながら、一つの事件を複数の視点から立体的に描きます。
誘拐事件というサスペンス要素を中心において展開することで、政治に詳しくなくてもわかりやすく、30分✕12話という短い構成(1時間ドラマにすると6話分)の中でも、世界観を深く楽しめる構成にしている点が素晴らしいです。
政治という一見とっつきにくい世界を舞台にしながらも、そこで働く人々にフォーカスを当てて描いている点は、やはり韓国ドラマらしいポイント。
そしてもちろん、単なるコメディとして終わるのではなく「結局、政治とは何なのか?」「私たちは何を真実として見極めるべきなのか?」という問いも投げかけるメッセージ性もあります。
ということで、全体を通じてリアルな描写・風刺・メッセージ性のバランスが絶妙で素晴らしい作品です。
「こうなった以上、青瓦台に行く」監督・脚本家情報
なおこの巧みな脚本を書いたのは誰?と調べてみたら、なんと脚本家には4名の作家+監督の名前が並んでいました。
監督:ユン・ソンホ
「こうなった以上、青瓦台に行く」日本での放送予定
現時点で、「こうなった以上、青瓦台に行く」の日本放送に関する情報はありません。
Wavveオリジナル作品のため、ライバルのNetflixで配信される可能性は極めて少なく、CSでの放送も可能性が低いのではと思います。
TVINGと同じように、Wavveも近いうちに日本進出を狙っていると言われているので、そのタイミングを期待したいと思います。
また、日本放送・視聴方法に関して情報を入手したら、こちらでもお知らせします。
最後に
「こうなった以上、青瓦台に行く」のあらすじ・キャスト・見どころをなどを紹介しました。
内容が面白かったのはもちろん、「こういうジャンルも作れちゃうんだ」という、配信サービスのオリジナルシリーズの新しい可能性を感じ、TVINGに加えてWavveもやるじゃん!という、韓国産配信サービスのコンテンツ制作力の底力を感じたインパクトのある作品でした。
オリジナル作品らしく、シーズン2があってもおかしくない終わり方だったのと、シーズン2を望む視聴者の声も多いため、おそらく来年にはシーズン2が制作されるのではと期待しています。
作品に含まれるネタ自体はとても韓国的なものなのですが、政治の世界で起こる問題は、日本とも共通する部分があり、込められたメッセージも普遍的なもの。
何より、日本のエンタメ界ではなかなか生まれにくいジャンルの作品なので、是非、日本でも公開してほしいなと思います。
韓国配信:2021年11月12日〜
Wavveオリジナル・全12話
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