「海街チャチャチャ」を韓国視聴者はどう観たか?時代を捉えたヒーリングドラマ

韓国ソウル在住
ブロガーMisa
「海街チャチャチャ」を観終わった方向けに、韓国での反応・視聴率・原作映画との違い・キャスト情報などを紹介します!

「海街チャチャチャ」視聴後の感想

2021年8月末から放送が始まり、10月に最終回を迎えた「海街チャチャチャ(갯마을 차차차)」。シン・ミナ、キム・ソノ主演で日本でもハマっていた方が多かったヒーリングドラマ。

放送1週目の時点で、主役の二人のキャスティングと田舎町の風景、そして最高のOST…成功要素が揃っていて「これはヒットしそうだな」と思いながらも

中盤の展開は予想した深さとはちょっと違ったため、ストーリー展開やメッセージ性というよりは、物語そのものの世界観に癒やされたくて視聴していた感じでした。

ただ、作家が表現したかったことが詰まっていた最終話がとても気に入って、全部見終わってから更にもう一度見返したくなり、観ている途中よりは観終わった後のほうがハマった作品だったかもしれません。

また、すごく意外だったのが、この作品、韓国でも50〜70代の人たちも含めた幅広い世代の人がハマっていたこと。

ある日、仲の良い50代のオンニと話している時、ぜんぜん違う話ししてたのに、突然「そういえば最近、海街チャチャチャが面白いのよ」という話題に。

また、同じように会社の同僚からも「お母さん世代でハマっている人が多い」という話を聞きました。

いつも斬新なテーマや深いメッセージ性が好まれる韓国視聴者の間で、この「ヒーリングロマンス」がここまでヒットしたのは結構意外なこと。

今日は、「海街チャチャチャ」を観終わった方向けに、韓国でのこの作品の評価や、原作映画との違い、キャスト関連情報などを紹介したいと思います。

「海街チャチャチャ」韓国視聴率

まず、「海街チャチャチャ」の韓国での視聴率から振り返ってみましょう。10%を超えればヒット水準ですが、多少上下しながらも、最終話は1話の2倍近くの12.7%を記録。

一方、韓国内のNetflixのランキングでは、10月、1ヶ月間でみてみると、実はあの「イカゲーム」を抜いて1位。

なお、その上で、作品の本当の人気度・話題度・評価は、視聴率やランキングだけでは測りきれない部分があるため、私はできるだけ韓国視聴者のレビュー、掲示板の投稿などをチェックしつつ、周りの幅広い世代の韓国の友人に、ドラマを観ているか、感想はどうか?を聞くようにしています。

その結果、「あまり好き嫌いが分かれず、幅広い層が観ていた」「放送中、よく話題に上がっていた」という意味では、今年放送された作品の中では、「賢い医師生活2」に続くぐらいの話題作・ヒット作だったと言えるのではないかと思います。

「海街チャチャチャ」がヒットした理由

これまで、韓国国内で作品がヒットするには、主に「これまでにない斬新さ」または「深いメッセージ性」がとても重要なポイントでした。

その点から考えると、実は「海街チャチャチャ」は、素材自体は特別に目新しいものではないし、似たような雰囲気で社会現象となった「椿の花咲く頃」と比べると、骨太なメッセージ性があるというわけでもありませんでした。

ここで、私の友人の50代のオンニに「何が面白かったのか?」を聞いたときの回答が思い出されます。

とにかくシン・ミナが可愛い。観てるだけで癒やされる

同じく同僚のお母さん世代もやはり、細かい内容がどうこうというより、港町の風景や、主人公二人のキャラクターと相性がとてもよく「気楽に見られた」「癒やされた」という意見でした。

ちなみに、私がオンニとこのドラマの話をしたのは、最終回後、ちょうど例のスキャンダルが大きく騒がれている時でしたが、特にこの世代の方々は「それとこれとは別よ〜ドラマはドラマよ」という感覚で、あまりその影響をうけることなく、ドラマの余韻を楽しんでいたようです。

一方、わりとドラマの細部までこだわって観る、30〜40代の世代の視聴者たちはやはり、”幼少時代の縁”と”偶然”が頻発するあるあるな展開、ホン班長の過去のストーリーの真相など、ドラマの細かい部分に対しては、様々なツッコミも見られました。

しかし、それでも、抜群のキャスティング・共感を呼ぶキャラクター描写・海街の美しい映像・懐かしさを感じるOSTらが作り上げる世界観に、結局は癒やされ、ハマって観ていたという感じだったと思います。

コロナ以降、海外旅行にも行けず、おうち時間が長くなったことで、韓国でも、週末に自然を感じられる場所(海・山・川)などに車で出かけて「ヒーリングタイム」を過ごすのが人気となった昨今。

バラエティ番組は、田舎で生活する企画が以前以上に増えるなど、時代の空気を取り入れる流れが起きていましたが、「海街チャチャチャ」もまさに、この瞬間の時代の空気と人々のニーズを上手く捉えた”企画勝ち”の作品だったと思います。

「ヒーリングドラマ」の珍しい成功例

ちなみにこれまで、韓国ドラマの中で、ヒーリング系の作品は「一部の視聴者からは熱狂的な支持を得るものの、大ヒットはしない」というイメージがありました。

私自身は、結構ヒーリングドラマが好きで、「30だけど17です」「天気が良ければ訪ねて行きます」などは大好きな作品ですが、

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どちらも、観た人の満足度は高いものの、大ヒットには至らなかった作品です。

「ヒーリングドラマ」というと、愛らしさを狙ったキャラクター設定がやや子供っぽくなってしまったり、セリフや世界観が感性的になりすぎてしまって、小説を読んでいるような独特な世界観になってしまう傾向があり、ハマる人には深くハマる一方、万人受けはしない障壁になっていました。

それはつまり、どの作品も、傷を抱えた主人公を中心に起き、そこに対して直接的な癒やしのメッセージを投げかけることで、視聴者の共感を得ようとするスタイルだったため、どうしても「主人公のキャラクターや抱えている傷に感情移入できるか?」という点で、好みが分かれてしまっていたわけです。

一方で、コロナ禍においては「癒やし」を求めているのは、何も、傷を抱えた人ばかりではありません。

ずっと家にいることだけでも、知らないうちに溜まっていくストレス。コロナ前は都会派だった人たちも、なぜか自然や田舎の風景に癒やされる…ということがあるのではないでしょうか。

「海街チャチャチャ」でも、後半にホン班長の抱える傷・トラウマの話が登場しますが、そこはこの作品の核心ではありません。

都会から離れて、ちょっと不便でも、近所の人の存在を感じながら、自分らしくゆっくり丁寧に生きる人々の様子。そして、どこか懐かしくて美しい海街の風景。

この作品の世界そのものが、観る人に癒やしを与えてくれます。

これらは、これまでの「ヒーリングドラマ」の構造とは異なるものであり、それこそがヒーリングドラマでありながらも、幅広い視聴者の共感を得た理由だと言えるでしょう。

「リアルな現実を描くこと」のその先

なお、「海街チャチャチャ」が話題になっていた9〜10月には、Netflixオリジナル作品「イカゲーム」が世界的にヒットしていた時期。

一方、先ほど紹介したように、10月の1ヶ月間を振り返ってみると韓国のNetflixランキングでは「イカゲーム」を抑えて「海街チャチャチャ」が1位となっていました。

「イカゲーム」と「海街チャチャチャ」は、視聴者層や評価ポイントが全然違うので、一概に「どちらが人気だった、評価された」とは言えないのですが「やはり幅広い層に好まれた」という点においては、「海街チャチャチャ」のほうに軍配が上がるのではないかと思います。

「イカゲーム」は、世界の国々では「資本主義社会の問題をリアルに描いた」という点がよく評価されていますが、韓国国内では、その描写については、特に目新しいとは評価されていないことは、こちらの記事でも紹介しました。

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こちらの↑記事でも紹介したとおり、韓国では、すでに何年も前から、社会問題や過酷な現実をリアルに描いた作品が多く登場していたからです。

社会問題に対して、国民の間で活発な議論が起こり、それが何度も国を動かしてきた韓国社会では、すでに人々の関心は「問題を可視化すること」から「問題をどう解決するのか」というポイントに移っています。

今年の上半期は、「悪には悪を」「公平な裁きを望めないなら私的復讐を」というダークヒーローものが流行し、「模範タクシー」や「ヴィンチェンツォ」といった作品が人気を博しました。これは、近年韓国社会で常にホットイシューとなる「法や正義の限界」という社会問題に対する一つの”解”を示したものと言えます。

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一方で、あまりにこのような刺激的な作品が続いたため、最近は「観ていて疲れる」「もっと楽に見れる作品を」という声が増えていたのも事実です。

「海街チャチャチャ」は、そんな癒やしを求める人々のニーズを捉えた作品であると同時に、「イカゲーム」が描いたような競争社会、資本主義社会で消耗する人々に対する「新しい生き方」(=一つの”解”)を提示している作品とも言えます。

そう考えると、素材や見た目は斬新でも、メッセージの描き方は典型的な「イカゲーム」。一見、あるあるな素材とストーリーだけど、リアルな現実の”その先”を表現している「海街チャチャチャ」という見方もでき、2つの作品がまた別の色に見えてきます。

ある新聞で、大学教授がこの「海街チャチャチャ」を取り上げたコラムでは、まさに「イカゲーム」と比較しながらこんなコメントを残しています。

「海街チャチャチャ」のコミュニティが「イカゲーム」の現実を解決する代替案だ。イカゲームのファンには申し訳ないが、私は率直に外国人が、韓国が刺激的な方法で現実を批判する「尖った国」ではなく、その問題に対してコミュニティという代案を提示する「温かい国」と記憶することを望む。(「매일경제」매경춘추:21.10.25)

なお、ドラマだからといって「完全にありえないファンタジー」にするのではなく、リアリティを保ちながら「本当は自分もこうありたい」「こうだったらいいな」と思わせる描き方は、「賢い医師生活」とも共通する部分があるなと思いました。

「ソウルで一流大学を出ること」「医者など立派な職業につくこと」「ソウルで家を持つこと」が絶対的な成功モデルである韓国社会において、ソウルの歯医者を辞めて田舎町で開業するヘジン。ソウル大出身でありながら大企業を辞め、特定の職業に就かずに、自分ができることで人を助けて生活するホン班長。

何気なく描かれていることは、韓国社会のこれまでの”常識”とは少し違う、”これからの時代”の新しい生き方を表現していると感じさせるものも少なくありません。

そこまで感じるかどうかは観る人ぞれぞれですが、多くの人が自然と「ああ、こういう生活もいいなあ」「癒やされるなあ」と思えたのは、作品の企画だけではなく、脚本・演出の細部まで、”今の時代の空気感”と”人々の潜在的ニーズ”をしっかり把握して、作り込まれているからでしょう。

原作映画「どこかで誰かに何かが起こると必ず現れるMr.ホン」

なお「海街チャチャチャ」には、実は原作が存在します。2004年の映画「어디선가 누군가에 무슨 일이 생기면 틀림없이 나타난다 홍반장(邦題:どこかで誰かに何かが起こると必ず現れるMr.ホン)」。

主演はキム・ジュヒョク、オム・ジョンファ。キム・ジュヒョクは、映画やドラマで活躍していましたが、残念ながら2017年に、交通事故でこの世を去ってしまった俳優さんです。(私も好きだったので、当時大ショックでした…)

韓国版の予告編(日本語字幕なし)

ドラマで観ていたキム・ジュヒョクより、少しふっくらしているなと思ったら、親近感のあるキャラクターに仕上げるためにわざと9kg体重を増やして撮影に臨んだんだそう。
見ての通り長いタイトルは、韓国映画の中でも歴代2番めの長さだそうですが、この作品は「長すぎるタイトルのせいでヒットできなかった隠れた名作」とも言われています。
日本では配信サービスではなく、DVDレンタルで見る感じになるんですかね?
私は「海街チャチャチャ」を観終わった後に、ネット配信で観たのですが、色んな意味で驚きました。
細かい設定は、ドラマ化にあたり、時代に合うようにブラッシュアップされている
一方で意外と、キャラクターの基本コンセプトは原作に忠実。2004年当時にこの設定ができた原作映画はすごく先進的
ストーリー展開も原作が生かされた部分が結構多い
ということで、107分の映画にしておくのはもったいないぐらいキャラクターが魅力的で、当時としては先進的な感覚を持った映画であり、これによくぞ注目して2021年にドラマ化したなと、プロデューサーさんに拍手したくなりました。
具体的に、ドラマと原作の違い・共通点について代表的なものを挙げてみます。

1)原作との共通点

基本的に、作品の「骨格」となる部分は、原作がそのまま生かされています。

ヘジンはソウルの歯科で過剰診療を拒否し、院長と喧嘩して田舎の町へ。そこで開業し友人でもある歯科衛生士のミソンと一緒に暮らす
ホン班長は誰にでもタメ口、何か起これば間違いなく現れるお助けマン。過去に誰も知らない空白期間がある(ただし映画は3年)
ヘジンは気が強くて自分を持っている性格。ホン班長に気持ちを伝えるのもヘジンから
丘の上におじいさんの船がある
ヘジンの頼みで、ホン班長は父親の前で彼氏のふりをする
ヘジンは後半、先輩から再びソウルでの仕事の提案を受ける
この他にも、ヘジンが越してきた当初、町内の清掃日を仮病で乗り切ろうとするくだりや、歯科の患者がセクハラをしてホン班長がやっつけるシーンなど、意外と細かいシーンまで一緒で「原作をよく生かしたな〜」という感じがします。
何とこのシーンも、原作にあります
そして、ホン班長のキャラクターは、この作品の最も重要な部分なので、原作をかなり活かしたものだろうと思いましたが、驚いたのはヘジンのキャラクター。
ドラマでも最初の方は、シン・ミナの愛らしい外見とは裏腹に、成功志向・計画型・自分のスタイルがはっきりしたヘジンのキャラクターが印象的でしたが、2004年に描かれた映画のヘジンも、完璧主義で自立した女性というキャラクターの骨格はそのままでした。
ドラマの脚本を担当したシン・ハウン作家も、インタビューにて、この原作を「韓国映画史の中でも”キャラクター性が優れた作品”として代表的な作品」と話しており、原作のキャラクターの魅力を最大限に活かしながらも、特にヘジンのキャラクターについては「17年の間で変わったジェンダー感覚を取り入れて、現代的な女性に仕上げようと努力した」とインタビューで答えています。
なお、この当時に「ソウルでの成功物語」ではなく、「ソウルを飛び出して田舎暮らし」という設定にしたのは、当時としては斬新だったのでは?という感じ。
ただ、映画の場合は「田舎暮し」の部分は、ドラマほどフォーカスされておらず、どちらかというと「田舎でホン班長という不思議な魅力の男性に出会った」というところがストーリーの中心になっています。

2)原作との違い

ドラマでは、二人の周辺の人物たちのストーリー、そして田舎町の様子も作品の大きな魅力の一つでしたが、原作映画ではそのあたりはほどんど描かれていません。
ヘジンとホン班長が幼少時代に会っていたエピソードはない
ヘジンは田舎町と何の縁もなく、たまたまやってくる
ヘジンのあこがれの先輩チPDは登場しない
ミソンの恋物語はない
街の人達のキャラクターやストーリーについてはほとんど描かれない
ヘジンの父親は大企業の会長の設定
ホン班長がギターを弾いたのはカフェではなく小洒落たレストラン
ホン班長の空白期間は、結局映画では謎のママ
107分の映画を、16話のドラマにするにあたり、周辺の人物たちのストーリー、田舎町の魅力が伝わるような描写、ヘジンの過去の恋愛、二人の過去の縁、ホン班長の過去のストーリーなどを追加したことがわかります。
映画にはなかった周辺人物たちの設定、エピソードは、特に作家の鋭い時代感覚を感じさせるものが多いです。
小学生の子供たちから、ガムニばあちゃんの世代まで、恋愛・結婚・出産・離婚・老後…各ライフステージのキャラクターを世代ごとに設定し、現代のジェンダー感覚を取り入れたり、様々な愛の形まで表現しながら、今の時代の幅広い視聴者が共感しやすいような内容に仕上げています。
企画意図に「自分の人生の主人公は自分だ・それぞれの存在に価値がある」とあるだけに、男で一つで娘を育てるカフェのマスターや、娘を失った悲しみを乗り越え明るく生きる中華料理屋のナムスクまで、振り返ってみればみるほど、細部まで本当によく考えられたキャラクター設定だったなと思います。
また、逆に映画の「ヘジンは実は、大企業の令嬢」というのは、2004年当時らしい設定であり、下手したら今でもあり得る設定なのですが、これをドラマでは、父親の職業については特別にフォーカスしないだけではなく、再婚相手がいるという設定にしたのも秀逸。
ヘジンが再婚相手の母親を呼ぶ際、「オンマ」ではなく「オモニ」と少し距離のある感じで呼び(日本語訳にするとどちらも「お母さん」になってしまうのですが)、それでも”家族”として二人が会話するシーンなど、メインのストーリーではない部分まで、型にはまらない様々な家族、人生のあり方を描いていました。
「海街チャチャチャ」はセリフなどで直接的に伝えるメッセージよりも、キャラクターの設定や、ちょっとした演出に作り手が表現したい世界観・メッセージが込められていたため、気軽に軽く観ることもできれば、深く味わうこともできた作品だったと思います。

3)作家も悩んだ「タメ口」設定

なお、シン・ハウン作家のインタビューで特に興味深かったのが、ホン班長のタメ口の設定に関するエピソード。これは、今回のドラマ化にあたって、最も悩んだ点の一つだったそうです。

インタビューの質問自体が「タメ口の設定は、かなり人の好き嫌いが分かれる部分だが、これをそのまま生かした理由は?」となっているのですが、このホン班長のタメ口については、まさに、ドラマ開始当初、韓国視聴者の間でなかなかの物議を醸していたポイントでした。

ここは字幕だとなかなか伝わりにくい&日本と感覚が異なる部分なのですが、韓国では特に年上の人に対する礼儀はかなり重要視されます。

身内の両親に対しても礼儀は忘れない・尊敬語を使う文化なので、ホン班長が街のハルモニ・ハラボジたちに、タメ口で話しかける様子に、最初は「何だこのキャラクターは」「けしからん」「礼儀がなってない」と批判の声や、このタメ口のせいで「抵抗がある」「見てられない」と不快感を示す視聴者も多かったのです。

私は、それらの文化を知ってはいましたが、放送中に視聴者のこの反応を見ながら「ここまで年上への礼儀に敏感なんだな〜」ということを改めて感じました。

韓国語の台詞を見ると、全部がタメ口なわけではなく、途中途中は尊敬語の表現も入っているのですが、何と言っても基本的に語尾に「요=日本語だと”です”の部分」がついていないことが多いため、「〜です」というよりは、「〜なんだ」「〜だよ」という感じのタメ口になっています。

シン・ハウン作家はまず、このホン班長のタメ口については、本人のキャラクターを表現する最もポイントとなる部分であると同時に、ヘジンとの関係性の変化を描く上でも重要な要素であると考えたそうです。

そのため、ヘジンとの関係性を描く上では、最初はどうしてもぶっきらぼうな感じの「タメ口」が必要。

ただし、もし「誰にでもタメ口」という設定を無くしてしまうと、「”自分より若そうに見える初対面の女性”というだけで、ため口で話す男性主人公」になってしまう。それは、2021年のドラマの設定としては避けたい。(この辺の作家の感覚、ほんと素晴らしい!

ちなみに、台本の初稿では、タメ口の設定を無くし、普通に丁寧語で話す設定にしてみたそうですが、やはりホン班長というキャラクターの持っている、ちょっと変わってて謎めいる、自由な雰囲気のキャラクターの魅力が半減してしまったそうです。

また、ヘジンとの距離が縮まるにつれて、やっと見えてくる親しさや愛嬌も、最初から丁寧語であることで十分に表現できなくなってしまったため、「タメ口は賛否が分かれるだろう」ということを理解しながらも、最終的にはそのままタメ口の設定を活かすことを決断したとのこと。

そしてそうしたことで、今度は「ホン班長が誰にでもタメ口な理由」をしっかり設定しなければならないと考えたシン・ハウン作家。もともと「変わったやつ」という部分をより濃く表現したり、神経を使ったといいます。

ドラマの中では、ホン班長の「自分の大事な人達を、自分のせいで失ってしまった」というトラウマが明らかにされながら、実は親しげに見えて、タメ口は人と一定の線を保つための一種の”防衛”なのであるということが表現されていきます。

シン・ハウン作家は、「この”タメ口は一種の防御”という設定は、最初から明確だったわけではない」と言います。

ターニングポイントとなったのは、第9話でヘジンの父親と話すシーン。作家は、このシーンを書きながら自ら「ホン班長は、本心を話すときだけ丁寧語なのだ」ということに気が付き、ホン班長というキャラクターをより深く理解できたのだといいます。

9話で初対面からタメ口だったホン班長が、「ヘジンは愛されて育ったのがよくわかります。彼女の横に良い人が現れることを願います。」とヘジンの父親と二人で話すシーンだけ、丁寧語になっているのはこのためです。

この部分、作家は「気がついた・理解した」と言っていますが、映画の方では、そもそもドラマほど父親とホン班長の会話が少なく、逆に最初からタメ口というよりはいつもより丁寧に話している感じのため、原作者がそこまで意図していたのかは確かではありません。

しかし、この9話のシーンを通じて、シン・ハウン作家自身が、よりキャラクターを深く理解したというのはとても興味深いですよね。

なお、作家のインタビューは、こちらのドラマ台本集の第2巻の最後に収録されています。(韓国語・日本語訳はありません)

他にもキャラクターの詳しい設定、ドラマではカットされた部分、ヘジンからホン班長、ホン班長からヘジンへの手書きの手紙も収録されていますので、韓国語学習者の方にはおすすめです。

「海街チャチャチャ」キャスト関連情報

最後にシン・ミナ、キム・ソノ以外のキャストに関する情報も少し紹介しておきましょう。

まずドラマのオリジナルキャラクターだったチPDを演じた、イ・サンイ。

もともとミュージカル俳優で、2017年頃からドラマ出演。今では「いい人キャラ」のイメージがありますが、2017年の「刑務所のルールブック」ではなんと悪役として登場し、2019年「椿の花咲く頃」ぐらいまでは、まだチョイ役だったのですが、その後、「一度言ってきました」「五月の青春」で頭角を現しながら、

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「海街チャチャチャ」の前に、バラエティ番組で音楽グループでデビューしたことで韓国では一気に人気が高まりました。

バラエティ出演で人気を博して、ドラマの二番手でも大ブレイクという流れは、キム・ソノが「1泊2日」に出演してから「スタートアップ:夢の扉」でブレイクした流れと重なるものがあり、今後はさらに主役級まで務めるのでは?と活躍が期待されます。

演技力がある俳優で、「五月の青春」の役柄も良かったので、最初は「結局恋に敗れる二番手」という感じがして、正直「今のイ・サンイが演じるのはもったいない軽い役柄だな〜」と思ったんですよね。でも、ヘジンに振られた後も、チPDが思った以上にポイントとなる役割を果たしたので、結果的にはよいキャスティングだったのではと思います。

続いて、「海街チャチャチャ」の助演で一番注目を集めたのはやはり、ヘジンの家の大家・刺し身屋の店主であるファジョンを演じたイ・ボンリョン。

2005年からミュージカル俳優として活躍しながら、2011年頃から映画、そしてドラマにも出演。私もまだ見ていないのですが、2017年のドラマ「明日、キミと」では主演のシン・ミナの友人役で出演しているそうです。(しかも男性主人公がイ・ジェフンなのでますます気になる…!)

ちなみに、ワタシ的に調べて一番ビックリしたのが、イ・ボンリョンの旦那さんが、あの「怪物」で強烈な演技力を見せつけてくれたイ・ギュフェ!!!びっくり〜〜〜〜〜!!!!

「怪物」では強烈な演技が話題になりました。この夫婦、一緒に演技したらすごそう(笑)

そして、ヘジンの友人ミジン役でブレイクしたのは、コン・ミンジョン。

原作映画でもミジン役の女優さんが作品をきっかけにブレイクしたそうですが、コン・ミンジョンもここまで分量のある役割で注目されたのは初めて。

映画のほうが出演作が多く、2019年の映画「82年生まれ、キム・ジヨン」では、ジヨンの姉役で出演しています。

これをきっかけに、これからドラマで大きな役が増えそうですね。

その他、カフェのマスター、チョ・ハンチョルさんは、相変わらず週末ドラマで大活躍中。

あ、ちなみに娘のジュリ役を演じたキム・ミンソちゃんは、DOSではなく、実際はIUの大ファン。

YouTubeの企画でIUの前で「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」でIUが演じたジアンの演技をやって見せて、本人を感動させたことで話題になったことがあります。本当に演技がうまくて、凄い役者さんになりそう…!

そして、ミンソちゃん含め、「賢い医師生活」出演歴のある俳優さんも多いこと。

ワン作家の売れっ子ぶり。

そしてガムニ氏も引っ張りだこ。ちなみに「海街チャチャチャ」の前から、今年はずっと連続して何かしらにでているような…無理しすぎないでね、ハルモニ〜!

ということで、「海街チャチャチャ」のコンジンの人たちは、作品のヒットのお陰で、今も色んな所で引っ張りだこで活躍中です。

「海街チャチャチャ」のロケ地

なお、「海街チャチャチャのロケ地についても知りたい!」という声も多くいただきました。ほんと、このドラマはロケ地に行ってみたくなりますよね〜!
ということで、私も舞台となったポハンのロケ地をまわってきました!

ホン班長の家の近く。ドラマの名シーンで登場した赤い灯台も!

こちらについては、11月28日にオンラインロケ地巡りイベントで詳しく紹介する予定なので、気になる方はぜひご参加ください。

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ちなみに、「海街チャチャチャ」のロケ地については、正直ネットに書いてある、住所だけ見て行くのは、結構大変。同じポハンで撮影された「椿の花咲く頃」のロケ地と比べても、ロケ地同士の距離感が遠かったり、交通手段が不便なので、ネットの情報だけでは、現地でとても苦労します。

ホン班長とチPDが登ったあの絶景スポットにも行ってきました…!

イベントでは、実際に一泊かけて行ってきた私が、効率的な周り方や、注意ポイント。そして「椿の花咲く頃」のロケ地との距離なども動画・写真でくわしく解説するので「いつか行ってみたいな」と思われている方は、是非この機会に参加してみてください!

最後に

ということで、「海街チャチャチャ」が韓国でどう観られたのか、原作との違い、キャスト情報などについてまとめてご紹介しました。

なお、記事を書く前に、ゆるくこの作品について知りたいことをTwitterで募集したら、思った以上にたくさんのコメントを頂きました。今回その中でも、私が紹介できる内容はできるだけ記事の中で触れましたが、細かいところについてはわかる範囲でコメント欄に返信させていただきますね(全部は回答できない点、ご了承ください><)

ちなみに「海街チャチャチャ」に癒やされた方で、まだ「椿の花咲く頃」を観ていない方は、是非そちらも観てみることをおすすめします。

チャチャチャと同じように個性豊かな街の人々に癒やされ、笑わされつつ、また違う感動を味わえる名作です!(私の一番のお気に入り作品)

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갯마을 차차차(海街チャチャチャ)
韓国放送:2021年8月28日〜10月17日
tvN 土・日ドラマ 21:00〜
公式HP

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*画像はtvNからお借りしました