今後、日本で見る方向けに、作品のあらすじ・キャスト・韓国での評判・感想などをネタバレなしで紹介します。
「声もなく」あらすじ概要
犯罪組織の下請けとして、非常にまじめで丁寧に働くチャンボク(ユ・ジェミョン)と、テイン(ユ・アイン)。遺体の処理も淡々とこなします。
ある日、いつもの犯罪組織から依頼を受けて、誘拐された11歳の少女を預かることになります。
少しだけ預かる予定が、少女はテインの家でしばらく過ごすことに…。
映画のテーマや描き方は、幅広い層に受けるようなわかりやすいストーリーというよりは、見る人に考えせるような感性的な感じで、映画祭で評価されるようなタイプの作品だと言えます。そのため、どちらかと言うと好みがわかれるタイプの作品。
私も、普段あまり感性的すぎる作品は好きではないのですが、演出の仕方が印象的で、観終わった後も不思議な余韻が残り「この監督の次の作品も観てみたい」と思いました。引き続いて、その理由を一つずつ、説明していきましょう。
「声もなく」見どころ①セリフの無い演技
「声もなく」の見どころはまず、何といっても「セリフの無い演技」。ユ・アインが演じたテインは、普段言葉を発しない人物として描かれています。
この役を演じるために、15kg増量したというユ・アイン。
ユ・アインって、財閥の御曹司や権力を持った悪役も演じられる一方で、こういう「その辺に居そうな普通っぽい人物」も超リアルに演じられるのがホントに凄い。
今回の映画の中では、ユ・アイン演じるテインは、ほぼ一言もセリフがありません。(あっても、唸り声程度)
それでも、テインというキャラクターの性格や、その時の感情が表情やしぐさで充分に伝わってくるので、セリフがないという違和感がほとんどありません。いや~、もうユ・アインって天才…!
このポスターのユ・アインの佇まいも凄い
そして、何気にテインと一緒に過ごす、チョフィという11歳の女の子を演じた子役のムン・スンアちゃんも、ユ・アインに負けない名演技を見せるのです。
チョフィも、セリフ以外の部分で見せる演技が多く、難しい役柄なのですが、この作品が2作目の新人子役と思えない素晴らしい演技…!
NAVERのレビューでも、ユ・アインの演技と共に、この新人子役の演技を絶賛する声が多くありました。
いや~、韓国映画界、子役も層が厚すぎます(笑)存在感があって、この子は大物になりそうな予感。
★ユ・アイン出演の大ヒット映画「ベテラン」
「声もなく」見どころ②注目の新人監督の演出
この「声もなく」を観終わった時、何となくポン・ジュノ監督の「パラサイト」を観たときに感じたような「映画らしい映画を観たな~」という感じがしました。
とはいえ、まだまだあそこまでの完成度ではないのですが、何気ないシーンの印象的な演出・メッセージ性など、細部に意図が込められているような演出が、観返して議論したくなるような感じ。
監督を務めたホン・ウィジョン監督については、知らなかったのですが、2017年に短編映画でデビューしたばかりで、長編はこの作品が初めてという新人監督というから驚き。
それにしても「はちどり」「82年生まれ、キム・ジヨン」など、最近、韓国映画は女性監督の活躍が目覚ましい
ただ、短編映画も釜山国際映画祭で話題になっていたそうで、映画界では期待の新人として注目されていた方のようです…!
「声もなく」は、先ほど紹介したあらすじを観ると、一見、誘拐事件の発生から解決までを追っていくストーリーのように見えます。しかし、実は事件の顛末がスリリングで観客を惹きつけるというよりは、事件に関わる人たちの善と悪の感覚、そして見ている私たちの善と悪の感覚を問うという部分がメインの映画であり、中心のメッセージです。
そういう意味で、やはり感性的な映画であり、見る人によっては「つまらない」という意見も出るかもしれません。
日常的に犯罪を手伝う二人は、まるでサラリーマンのように真面目に、誠実に仕事に取り組みます。ここでは、ユ・ジェミョンさんの演技力・キャラクター理解力も光ります。
そして、誘拐された少女チョフィと、誘拐犯となってしまったテインとの関係性。これまでの犯罪映画とは、一味違う描き方で、私たちの頭の中の「善と悪の基準」を揺さぶるような演出が随所に見られました。
実際、ホン・ウィジョン監督は、インタビューで、演出で最も重点を置いた点を「アイロニー(皮肉さ)」とし、
普段の犯罪モノで見られない無常で日常的なトーンを使って、アイロニーを極大化したかった
と語っています。元々「自分自身も育ってきた環境や価値観によって、偏見を持って相手を判断してしまう」というということを留学時代に感じ、この作品の構想を練り始めたという監督。
新人監督にも関わらず、これだけの俳優が集まったのが驚きですが、ユ・アインも始めにシナリオを読んで「(シナリオがとても良いので)このまま行ってほしい」と話したそうです。
撮影現場のオフショット
最後は、ある意味「開かれた結末」になっており、その部分がまた賛否あるのですが、個人的にはとても余韻が残って、細かなシーンの演出が、観終わった後も頭に浮かんでくるような印象的な作品でした。
大衆向けというより、映画好きな人にウケるタイプの作品かなと思います。
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「声もなく」韓国での観客評価
「声もなく」の韓国での評価について、NAVERの評価を紹介しておきます。
評論家・記者評価:7.00点/10点
動員数:29万人(公開1週間)
観客評価は、9点を超えれば高評価、8点台が平均、7点以下だと低め、という感じなので、今回は割と平均的な点数と言えます。ただ、点数の内訳をみると、やはり「人によって評価が分かれる作品」と言えます。
ただのスリラーだと思ったけど、思ったより新鮮。このような時期にこんな挑戦的な作品の登場が嬉しい。
ユ・アインの演技と、子役の演技に驚かされた
期待が高かったが、ストーリーがイマイチだった
韓国でもやはり、演技力が高く評価されているユ・アインとユ・ジェミョン。二人に加え、意外にも子役まで演技が高く評価されましたが、ストーリーや演出には好みがわかれた結果となりました。
制作発表会の時点では、すでに体重を戻して登場したユ・アイン。(撮影時より20Kg落としたそう…!)そして、二人は意外にも初共演。
ちなみに、ユ・ジェミョンさんは、この作品の後に「梨泰院クラス」を撮影したそうです。(全く正反対の役柄ですね!)
一方、評論家や記者の評価は、普段より少し高い印象。(普段は、大体6点台が普通)
「今までのお決まりの犯罪映画の斜め上を行く作品」という形で、やはり既存ジャンルで新しい描き方にチャレンジしたという点が評価されていました。
「声もなく」日本公開についての情報
現時点で、「声もなく」の日本公開予定については、具体的な情報がありません。ただ、このキャストであれば、間違いなく日本公開されると思いますが、規模的にはおそらく、シネマートさんでやる感じではないかなと思います。
日本公開に関する情報がわかりましたら、こちらもでも、お知らせしたいと思います。
★8/31追記:2021年1月21日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて順次公開が決定!
韓国版予告編はこちら(字幕なし)
まとめ
ということで、「声もなく」の概要と韓国での評価などをご紹介しました。
特に映画好き、ユ・アインファンの方には、おすすめの作品です。日本公開の際には、是非観てみてください。
・韓国公開日:2020年10月15日
・上映時間:99分
・日本公開:2021年1月21日
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