【映画レビュー】「SEOBOK/ソボク(徐福)」コン・ユ&パク・ボゴム:見どころ・韓国での評判

韓国ソウル在住
ブロガーMisa
2021年4月15日から韓国で劇場公開された映画「SEOBOK/ソボク(서복:徐福)」について、見どころや韓国での評判などをネタバレ無しで紹介します。

映画「SEOBOK/ソボク」とは?

2021年4月15日から韓国で劇場公開となった映画「서복(邦題:SEOBOK/ソボク)」。公開初日に早速、劇場で観てきました!

コン・ユとパク・ボゴムという豪華すぎるキャストに、「建築学概論」のイ・ヨンジュ監督の作品ということで、公開前から韓国はもちろん、世界のファンから注目されていた作品。

撮影は2019年5月から8月にかけて行われ、2020年12月に劇場公開予定でしたが、コロナの影響で何度か公開が延期に。

一時期は劇場公開は諦めてNetflix配信か?とも思われましたが、ようやく今回劇場公開となりました。

すでに56カ国で販売されていて、日本でもクロックワークスが購入。公開日調整中とのこと。

「どんな映画か?」というと…

ポイントは”感性的な映画”であるということ。クローン人間を扱った話ということで、SF大作のような派手な展開を期待するとちょっと違う感じ。感性的であるがゆえに、人によって受け取り方や、好みがかなり分かれる映画だろうなと思います。

主役の二人の演技はさすがで、特にパク・ボゴムの新しい姿を見られる映画です。

今日は、日本でこれから観る予定の方に向けて、ネタバレ無しで作品の見どころ・韓国での評判などを紹介したいと思います。

「SEOBOK/ソボク」あらすじ・キャスト

過去の事件のトラウマで、外部と遮断された生活を送るギホン(コン・ユ)は、元・国家情報局のメンバー。

余命宣告を受けたギホンは、最後の任務として、人類初のクローン人間プロジェクトに参加することになります。

パク・ボゴムが演じるのが、クローン人間の서복(徐福)。

서복(徐福:じょふく)とは、秦の始皇帝の時代に、皇帝の命を受けて不老不死の薬を探していたという、歴史上の書物に登場する人物。

パク・ボゴムが演じるクローン人間の徐福もまさに、不老不死の存在です。

迫りくる死の恐怖に対峙するギホンと、永遠の命を持つ徐福。

映画では、派手なアクションやハラハラする展開が巻きおこるというよりも、この二人の交流を通じて「生きるとは?死ぬとは?」「人間らしさとは何なのか?」という哲学的な問いを観客たちに投げかけます。

「서복(徐福)」には、主役の二人以外にも、ドラマでおなじみの名俳優が多く出演。

서복を作り出した研究所のメンバーには、「サイコだけど大丈夫」で注目されたチャン・ヨンナム

「キングダムシリーズ」「この恋は初めてだから」パク・ビョンウン

そして、コン・ユとパク・ボゴムとならんで主演として出演するのは、面白い映画に欠かせないチョ・ウジン!

「SEOBOK/ソボク」見どころ

映画「SEOBOK/ソボク」の見どころは、やはりコン・ユとパク・ボゴムという豪華すぎる二人の共演。

感性的で哲学的な内容であるがゆえに、何気ない行動や一つ一つのセリフで観客たちにいかにメッセージを伝えられるか?が重要で、演技力が求められる作品。

特に「これはパク・ボゴムのための映画だ」と感じさせるぐらい、徐福の独特な役柄が映画の中心であり、今までの作品とは違うパク・ボゴムの演技を観ることができます。

各インタビューでの発言や、周りの人たちの話を聞いていると、とにかく突っ込みどころがないぐらい美談が多いパク・ボゴム。

コン・ユも「非の打ち所のない後輩」と発言していました。

完璧すぎる準備をして、2020年8月に入隊。韓国では今でもテレビでパク・ボゴムのCMが頻繁に流れるなど、本当に完璧すぎる準備…!)

ドラマ「青春の記録」に続いて、これだけ自分がメインの作品を残していくとは、またまたボゴムさすがだわ〜と思いました。

制作発表会では、共演したコン・ユも、今回の作品のパク・ボゴムについて、このように話していました。

パク・ボゴムの今までのイメージを覆す新しい姿に期待してほしい
他の作品では見せたことのないパク・ボゴムの「眼差し」がとても魅力的だった。みんなで「今後、悪役も是非、挑戦してみるべき」と話していた

ちなみに監督のインタビューによると、パク・ボゴムから電話が来て、本人も休暇をとって劇場で映画を見ることができたんだそう…!

韓国では、劇場公開と同時にTVINGというネットサービスでも視聴ができたんですが、兵役期間中にわざわざ休みをとって映画館に観に行くというのは、パク・ボゴムの役者人生にとっても、大きな意味のある作品だったのではないでしょうか。

映画「SEOBOK/ソボク」単独インタビュー掲載・韓国雑誌(韓国語)

「SEOBOK/ソボク」をコン・ユが選択した理由

私が、映画を観て確かめたかったのは、コン・ユがこの作品を選んだ理由。

「トガニ」「新感染」「82年生まれ、キム・ジヨン」など、これまでメッセージ性や社会的意義を持った作品を多く選択してきたコン・ユ。

また、将来的には、映画の企画からシナリオ、撮影まで総括するプロデューサーも目指しているそうです。

そんなコン・ユのインタビューからは、毎回明確な意思をもって作品を選んでいることが伝わってきます。

そんなコン・ユが、SFっぽい作品を選択したことが、最初はちょっと意外でした。

設定の斬新さや有名監督であるということだけで、選ぶはずがないので、きっと何か深いメッセージ性があるのだろうと思い、それが何なのか?を確かめる気持ちで、前情報をほとんど見ずに映画を見ました。

結果、この映画が伝えようとした「哲学的な問い」が、40代になったコン・ユ自身にとってもひっかかるテーマであり、観客にもそれを投げかけたかったんだろうなということを感じました。

コン・ユは、ドラマ「トッケビ」のヒットにより、俳優としても最も注目されていた時期に、この作品への出演を決めたそうですが、

監督が伝えようとするテーマの本質に惹きつけられた
ただ、哲学的な内容であるがゆえに、興行的には容易ではないと思った
最終的には、興行よりも監督の新しいチャレンジに参加したいと思って出演を決めた
と、出演を決めるまではかなり悩んだことをインタビューや制作発表会で明かしています。
一方監督も、コン・ユとパク・ボゴムを必ずキャスティングしたいという想いでキャスティングに相当な時間を掛けたそうです。
なお、出演を決めてからは、役づくりのために4ヶ月かけて減量し、死の恐怖を抱えながら孤独に生きるギホンのキャラクターを表現したコン・ユ。
前作「82年生まれ、キム・ジヨン」では反対に、会社と家を往復するだけで少しお腹がでている平凡なサラリーマン役を表現するために、毎日している運動をわざと止めて増量したそうですが、
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今回ギホンの初登場シーンでは、その時とは全然違った姿に、コン・ユの役作りの凄さを感じました。

「SEOBOK/ソボク」韓国での評判

*ここからは辛口も含みますので、見たくない方はここでページを閉じることをおすすめします。

「SEOBOK/ソボク」の韓国での評価について、NAVERでの評価を紹介しておきます。

観客評価:8.5点/10点
動員数:8.2万人(公開4日目時点)
観客評価は、9点を超えれば高評価、8点台が平均、7点以下だと低めという感じ。
ただ、この点数、公開直後はコアな俳優のファンや、アルバイトなどを使って非常に高く点数が出るため、公開直後は高く、時間が経つにつれて下がる傾向にあります。
現在、公開4日目時点でもう8.5点まで下がったということは、最終的にはギリギリ8点ぐらいに落ち着くのではないかと見ています。
(追記:日本公開時点では8.34点に落ち着いています)
まず、観客が共通して評価しているのは、やはり役者の演技。「コン・ユとパク・ボゴムの演技を観る価値はある」という声も多くみられます。
コン・ユ、パク・ボゴムのファンが二人の演技を絶賛し高い評価をつけている一方、映画好きの人達の間では、
脚本・演出へのツッコミが多く「期待したほどではなかった」「退屈だった」という声が多く見られます。

監督が9年も掛けて準備したとのことですが、それが裏目に出ているというか、今の韓国映画のトレンドからすると、時代遅れな脚本・演出だったと感じてしまう点がいくつかありました。

感性的で哲学的な事自体は悪くないのですが、「生きるとは何か?」「人間らしさとは?」といったテーマについて、あまりにも唐突に直接的にセリフにしてしまっている点がとても残念。こういった深いテーマは、観る側が、何気ないセリフや演出の中から、結果的に感じ取れるほうが、深みがあるはず。

韓国国内では、評論家から「テーマ設定に深みがない」「これまでもっと深く扱われてきた”死”というテーマについて、何の新しい視点も無しに斬新なテーマかのように扱っていることが問題だ」と痛烈な批評記事が出たほど。

悩んで作品の出演を決めたコン・ユも、直近のインタビューや記者会見の発言を見る限り、映画の仕上がりについてはいくつか残念さが残ったのではないかな?と推察します。

ただ、哲学的なテーマを2時間の中で表現するのはとても難しいチャレンジではあったでしょう。
監督自身も、観客の反応を十分に理解しながら「素晴らしい俳優たちと難しいテーマにチャレンジしたことだけでも意味があった」というようなコメントを残しています。(でも、この二人を使ってチャレンジしただけとは贅沢過ぎる…)
私も、先ほど説明したようなテーマの描き方が残念だったり、全体的に監督の感覚が「建築学概論」の時からアップデートされていない感じがしてしまい、コン・ユとパク・ボゴムほどの俳優を使ってこの仕上がりはもったいない…というのが率直な感想。
あくまで、二人の演技とチャレンジを見届けるつもりで観る映画かなと思いました。

ということで、個人的なオススメ度はこちらです。(※あくまで個人の主観です)

 オススメ度:★★★☆☆(3点/5点)

「SEOBOK/ソボク」注目された新しい公開手法

映画「SEOBOK/ソボク」は、映画としては斬新なテーマだけではなく、韓国ではその公開手法についても話題になりました。

劇場公開と同日に、韓国国内のOTTサービス(Netflixのようなオンラインビデオサービス)TVINGでも公開されるという初の試みが行われたからです。

TVINGでは同日21時に公開されました(韓国国内有料会員のみ視聴可能)

これまで、劇場公開の代わりにNetflixで公開というパターン(「ザ・コール」「スペース スウィーパーズ」など)はありましたが、劇場公開とOTTを同時にというのは初めてのパターン。

これはそれだけ「徐福」がコロナ渦の劇場公開だけでは回収するのが難しいほどの制作費がかかっているということを表しています。

記事によると「SEOBOK/ソボク」の制作費は160億ウォン。

劇場公開だけで320万人を動員しなければ損益分岐点を超えることは難しいと言われていますが、コロナで未だ不安定な状況でかなり難しい数字であること。そして、この映画がいくら俳優のパワーがあるとはいえ、大衆的なテーマではないことなどを考慮し、事前にまとまった金額の回収が見込めるOTTとの同時公開を決定したのは懸命な策だったと思います。

ただ、「劇場とOTTを同時」という、互いを食い合ってしまうのではないかと懸念される新しい取り組みができたのは、TVINGが配給会社のCJ ENMの子会社であるからできたことでしょう。

コロナで動員数が一時期は7割以上減り、大打撃を受けた韓国映画界。「SEOBOK/ソボク」は、コロナ渦での映画の新しい配信方法にチャレンジしたという意味でも結果が注目されています。

「SEOBOK/ソボク」日本公開についての情報

「SEOBOK/ソボク」は2021年7月16日(金)から全国公開が決まりました!

ちなみにコン・ユとパク・ボゴムは、今年中に韓国で公開されると言われている「ワンダーランド」という映画でも共演。こちらの情報も分かり次第、Twitterでお知らせしていこうと思います。

まとめ

ということで、コン・ユ、パク・ボゴム主演の映画「서복(邦題:SEOBOK/ソボク)」について見どころ・韓国での評判などについて紹介しました。

日本でも注目度が高く、2021年後半の目玉作品になるのではと思われます。

公開されましたら、特にファンの方は、是非スクリーンで観てみてください!

서복(徐福:じょふく)
・邦題:SEOBOK/ソボク /英題:Seabok
・韓国公開日:2021年4月15日
・上映時間:114分
・日本公開:2021年7月16日(金)から全国公開
・監督:イ・ヨンジュ
*画像はすべてNEVERからお借りしました。

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