【映画レビュー】「タクシー運転手」脚本家の監督作!「말모이(マルモイ/言葉集め)」

こんにちは、Misaです。今日は、1月に韓国でヒットしていた映画「말모이(マルモイ/言葉集め)」について、書こうと思います。
韓国人の知り合いたちが、皆「感動した」と言っていたので観に行った映画。私も、最後気付いたら涙が出ていました。(なんだか「1987」を観に行ったときと同じ)

しかしこの映画、おそらく日本で劇場公開は難しいでしょう…。

というのも、こちら完全に日本植民地時代の話。残念ながら、なかなかこの時代の話は、日本で劇場公開はされませんよね。

ただ、本当はこういう映画こそ、日本で多くの人に知ってほしい作品。
twitterで、韓国語のゆうき先生も「この映画がすぐ観に行ける人がうらやましい」とつぶやいていました。

日本軍の弾圧を恐れながら、密かに朝鮮語の辞書を編纂しようとした人々のお話。

実際に、終戦直前の1944年に起こった「朝鮮語学会事件」という事実をベースにしています。

朝鮮語の言葉の由来や、地方ごとの言葉の違いなんかも描かれていて、韓国語学習者にとっては、とても興味深い内容ですし、もしかしたらこの人たちの努力がなければ、今、私たちが勉強している韓国語は、もっと違ったものになっていたのかもしれません。

この作品、日本でも大ヒットした「タクシー運転手」の脚本家さんが監督を務めています。

しかも、ユ・ヘジン&ユン・ゲサンが出演していて、ホント、時代や題材さえ違ったら、監督・俳優という観点では、日本でも劇場公開してヒットするような映画だと思います。

個人的には涙も出たし、見終わった後、とにかくモヤモヤして、当時のことを調べたり、韓国人の友人と感想を話し合ったりしました。

歴史認識問題もはらみ、日韓関係が悪化しているこのタイミングでは、センシティブな部分もある映画ですが、1人の日本人としてこの映画を見た感想を率直に書いてみようと思います。

概要・登場人物

舞台は1940年代の京城(今のソウル)。街には日本の軍人があふれています。この時代には、日本軍による国策として「皇民化教育」や「創氏改名」などが推進されていました。

植民地時代が長く続くうちに、朝鮮語を知らない子どもたちが増えていき、名前も日本人のような名前を名乗らされています。そんな中で、失われていく母国のアイデンティを守るべく、密かに朝鮮語の辞書を編纂しようとした人々のお話です。

言葉は民族の精神、文字は民族の生命だ

主な登場人物はまず、日本でも大人気のユ・ヘジンが演じるキム・パンス。

男で一つで子ども二人を育てています。喧嘩っ早く、威勢のいい人物。息子の学費が足りない状況の中、解雇されてしまい、仲間と共謀して泥棒を働くシーンからスタートします。

そして、そんなパンスたちに駅でバックを持ち去られてしまうのが、ユン・ゲサン演じる、朝鮮語学会代表 リュウ・ジョンファン。

天皇陛下のためのエリート軍人を育てる「京城第一中学」の校長の息子でありながら、書店の地下でこっそり朝鮮語の辞書を編纂しようと準備を進めています。

最悪の出会いをした2人ですが、ひょんな繋がりから、パンスが辞書編纂に参加することになります。

植民地時代の映画というと、やはり日本軍の悪徳さを描くような、反日的映画が多いのですが、この映画はそこよりも、「民族の精神を守るために、命がけで辞書を編纂しようとした人たち」のほうに焦点が当たっています。

もちろん、日本人としては胸が痛くなるような描写もたくさん続きますが、演技派俳優たちのおかげで、笑いもあり、最終的には感動的なストーリーに仕上がっています。

感想①教科書の単語でしか知らないことを映像で見る衝撃

まず、メインである辞書編纂のストーリーとは別に、映画で描かれるこの時代の人々の生活の様子だけでも、改めて考えされられるものがたくさんあります。

↓ 皇民化教育を受ける京城第一中学の生徒たち。皆、日本語で話し、日本名を名乗ります。

パンスの息子が、妹が朝鮮語ばかり使うのを見て、パンスに言います。

ひらがなぐらい知らないと、バカヤロー扱いされるんだよ

さらに驚いたのは、この時代には、朝鮮語は話せても、ハングルの読み書きができない人が結構いたということ。

↓ ハングルがわからないのに辞書を手伝うことになり、ハングルを勉強し始めるパンス。(マッチでパッチムを復習しています)

「皇民化教育」「創氏改名」…。正直なところ、教科書で単語でしか知らなかったこと。それが、当時の現地の人たちにとっては、実際にどういうことだったのか。

もちろん、映画なので、描かれているものがすべて事実そのもの、というわけではないかもしれません。しかし、こうやって映像で見て初めて、生々しい出来事として解釈できた気がしました。

この時代に起きたことについては、どうしても国同士の「歴史認識」や「責任・保障」という問題が先に立ってしまうので、それが故に、シンプルに「当時の人々苦しみや痛みをリアルに想像」してみたことがこれまでなかったということに改めて気づかされました。(「苦しいことだけじゃなかったはずだ」「戦争だから仕方ない」なんていう議論も一旦、置いておいて…)

↓ 上映が終わった後の映画館で密かに集まり、辞書編纂に尽力する人たち。しかし、ついに見つかってしまい、日本軍の弾圧にあいます。

これは、1944年に実際にあった朝鮮語学会事件をベースにしています。民族運動をしていたという理由で33名の学会員が拘束され、そのうち2名が獄中で拷問死したそうです。

しかし、映画を観終わった後に、日本語で色々と「皇民化教育」「創氏改名」について調べてみると…これまた、描かれていたものとは違う説も沢山あふれていました。(日本名を強制はしていない、姓名両方は変えてない、等々)

こういった国と国で主張の違うセンシティブなテーマについて、それぞれの国の言葉で両方の情報に触れてみると、自国での情報だけ見ていた時とは、だいぶ見える景色が違うということを体感した瞬間でした。

極端に言うと、どっちも正しいようにも見えるし、どっちも偏っているようにも見える。
しかし、本来、こうやって両方の情報を知ってから、本当の思考・理解が始まるのだと思いました。

なお、この映画で描かれている朝鮮語学会事件については、実際の事件をあくまでベースにフィクションを交えているため、ネットで「事実と異なる部分も多い」といった書き込みも見られました。

もちろん映画だけでは、事実を正しく認識できませんが、「ちゃんと知りたい」「ちゃんと知らなきゃ」と思うきっかけを与えてくれるという意味では、このような映画の果たしてくれる役割は大きいですね。

感想②「自分たちの国・民族」という意識

韓国で生活していると、「私たちの国」という言葉を毎日何回も耳にします。そして、政治や経済の問題は、日本よりもリアルに生活に直結し、これらの問題について、人々は日常的に話題にし、自分の意見をはっきり表現する人が多いなと感じます。

それを見ていると、私たち日本人って、あまり自分たちの国について議論することもないし、「私たちの国」という意識自体が薄い。「国」や「民族」より、「個人」が先に立つ日本。

劇中にも、こんなセリフがありました。

外国では、「私の国」「私の家族」「私の隣人」と言うけど、私たちは「私たちの国」「私たちの家族」「私たちの隣人」と言うじゃない。これが、私たちの民族の精神よ。

古くは長く中国からの支配も受け、日本植民地時代が約30年。これまでの歴史の長い期間において、「独立」「民主化」というテーマが重くのしかかっていた朝鮮半島。

映画を通じて見るだけでも、その時代、時代の人々の自分たちで何とかこの現実を変えたい、というエネルギーには圧倒されるものがあります。
一方で、こんなセリフも印象的でした。

30年も経ったんだから、独立できるって?そんなわけないだろ。

長く続いた植民地時代、現実を受け入れるしかない、と考えた大人たちも沢山いたことでしょう。

現代史を扱った映画を観るたびに、少しずつですが、自分なりに韓国という国や韓国人について、理解が深まっていく気がします。

みどころ

というわけで、日本人としては胸が痛い部分も多くありますが、、演技派のユ・ヘジン、ユン・ゲサンのおかげで、笑いも沢山あります。

ユ・ヘジンってほんと、いい人演じさせれば(「タクシー運転手」など)、ホント人情味のあるいい人に見えるし、

柄の悪い人を演じさせれば、ホントにそうも見えるし、とにかくどんな役でもこなしてしまう素晴らしい俳優さん。

そして、今回私が印象的だったのが、久々に見たユン・ゲサン!!

今回の真面目で堅物、でも情熱を秘めた男、リュウ・ジョンファン役、めちゃハマってる!!過去の作品では、こんなに存在感感じたことがなかった(笑)彼のシブい感じが、確実にこの映画に深みを与えていますね。

ちなみに、最初見たとき「瑛太に似てる!」と思ったのは私だけでしょうか…。(笑)どうもキャストがハマってなかった韓国版「最高の離婚」。瑛太演じる「濱崎さんは彼がやればよかったのに…!」と思っちゃいました。(神経質な感じ、もうまく演じていました)

One more Korea

だいぶ前から話題になっていた「最高の離婚」のリメイク版。私は、日本版はリアルタイムで観ていて、日本のドラマでは珍しく結構…

そしてですね、キャストと言えばもう一つ。みなさん、このお二人、わかりますか…?

↓おや…?

↓おやおや…?(真ん中の彼)

ピンときた方!!!

そうです!「アルハンブラ宮殿の思い出」のソ秘書とジェイワンの開発責任者の彼(名前何だっけ?)です!!!
開発責任者の彼のほうは、髪型が違っていて一瞬わからなかったのですが、よく見てつぶらな瞳で気が付きました!

まだ「アルハンブラ宮殿の思い出」放送中に、この映画を観に行ったので、思わずにやっとしてしまいました。2人とも、これから他のドラマや映画にもたくさん出そう。

韓国での評価・反応

さて、韓国での評価・反応をまとめてみます。

NAVERの評価では、

・観客評価:9.23点/10点
・総動員数:280万人(公開後27日時点)

ということで、観客評価はとても高く、レビューにも好意的なコメントが並びます。

・楽しさや笑いもあり、感動もある映画!これはみんなにオススメしたい。
・改めて自分の国の言葉の大事さを考えさせられる。韓国人なら見るべき。
・素晴らしい俳優の演技と、韓国語を守ってくれた人々に感謝。

特徴的だったのが、この時代の映画にしては、映画レビューにも珍しく反日的なコメントが少なかったこと。

植民地時代の映画でありながら、焦点を「朝鮮語を守ろうとした人々」にあてたこと。これが、まさにこの映画がヒットした理由でしょう。苦悩の時代を描くだけではなく、そこで描かれる人々の姿を通じて、現代の自分たちも「明日から頑張ろう」と思わせてくれるそんなこの映画の温かさが共感を呼んだのだと思います。

↓ チラシのデザイン。時代の雰囲気が出てます。

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まとめ

ということで、特に韓国語学習者の方には、是非お勧めしたい映画。

こういう映画を、韓国で韓国語で観られたのはとても貴重な事。自分の目と耳で直接、現地でしか得られない情報に触れられる、というのは外国語を勉強する醍醐味ですね。

これ、どこかの配給会社さんが勇気をもって買って劇場公開したら、観に行きたい人沢山いると思うんですが、、別の意味でも話題になりそうだし、やっぱり難しいんですかね。
せめてDVDにはなってほしい…!!!(というか、Amazonプライムに入れてほしい!笑)

私も細かな部分が聞き取れなかったので、日本語字幕でももう一度見たいです。みんなで期待して待ちましょう!!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

말모이(マルモイ/言葉集め)
  • 韓国公開日:2019.01.09
  • 上映時間:135分
  • 日本公開未定

※映画の画像は、すべて出典:NEVER

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