【映画レビュー】衝撃!「1987、ある闘いの真実」で知る韓国の現代史

映画好きの韓国人から強くお勧めされていた、映画「1987、ある闘いの真実」を日本で観てきました。鑑賞後、やや放心状態で帰ったほど衝撃を受けました。

*韓国公開時のポスターをお借りしました。出典:NAVER

1987年の韓国で、実際に起こった民主化運動にまつわる事件を映画化したものです。

平日だったので、観客は50~60代の人たちが中心でしたが、エンディングでは、周りからすすり泣く声が沢山聞こえました。私も涙が止まりませんでした。

誰もが驚愕する。これは、わずか31年前の事件

というキャッチコピーの通り、韓国ではこんな残虐な事件がつい最近まで起こっていた、ということに衝撃を受けました。1987年と言えば、ソウルオリンピックの前年です。日本ではバブル景気の頃。「ノルウェイの森」が発行され、光GENJIが流行っていた頃です。

30代の私にとっては、自分が子どもの頃に、まさかお隣の韓国はこんなことになっていた、ということが信じられませんでした。そして、いままでそれを知らずにいたことも。

重いテーマではあるのですが、韓国に興味がある方には、ぜひおすすめしたい映画なので、ちょっとだけ紹介したいと思います。

30年前の韓国

ある事件をテーマに、と書きましたが、この映画は単に、とある事件だけを扱ったものではありません。たった30年前の韓国の社会が、どのような状況にあったのか?ということを強烈に描いています。

メディアの報道は、完全に政府によってコントロールされ、軍が罪のない民衆を平然と弾圧する…当時の市民たちは、言論や表現の自由が奪われていたということ。警察すらも汚職と暴力にまみれ、反逆者を洗い出すという名目のもと、罪のない市民たちに、日常的に拷問を繰り返していたこと。

どれも、映像を通して見ると、衝撃的なことばかりです。

「これ、本当に30年前の話?」「日本がバブルの頃に?」と思いながら、どんどん引き込まれていきました。

つまり、今では日本とさほど変わらないように見える韓国が、たった30年前は、まだ独裁政権であったこと、北朝鮮と変わらないような状況であったことがリアルに描かれています。

映画製作の経緯と背景

そして、印象的だったのが、パンフレットに書いてあったこの映画を作るまでの経緯でした。

「朴槿恵政権下での政策は絶対に無理だ」と言われる中で、極秘に台本がつくられ、信頼に基づく映画人たちのネットワークのもとでキャスティングが進められたのだという。

韓国では、今でもその時の政権によって、映画などのコンテンツの内容が影響を受けることが多々あります。特に、朴槿恵政権下では、弾圧するような動きもあったとのこと。

この事件も、これまで映画化の話はたくさんあったものの、投資が集まらなかったり、シナリオの段階であきらめたケースが多く、遺族の方々も公開できるとは思っていなかった、ということが書いてありました。

↓パンフレットは、時代背景や制作意図がまとめられていて読み応えあり

つまり、まだまだ今も、韓国の素晴らしいコンテンツの裏側には、日本人にはイメージしにくい政治的背景や社会問題が潜んでいるということを改めて実感しました。

だからこそ、この映画から受ける「熱量」は、半端なかった。

韓国の映画やドラマは、もはや日本のコンテンツでは感じることのできない、熱量や強いメッセージ性が魅力だなと思います。

似て非なる国

でも、長く韓国に関心を持っている私にとって、これは衝撃でもありましたが、一方で腑に落ちるというか、日々感じている疑問や違和感を、説明してくれる部分もあった気がします。

たった30年で、社会が急激に変わったことによる、ひずみのような問題が多々あること。実は変わっているようで、変わってない部分が根底にはまだ残っていること。

このブログでも、普段は韓国の素敵な場所やおいしいお店を紹介していますが、知れば知るほど、韓国と日本は似ているようで、非なる国と思う部分が多々あります。

表面上は、すごく日本と似ていたり、日本より先進的な部分もたくさんありますが、一方でその背景にある社会の構造や、直面している問題は、まさにこの映画の時代の日本と韓国ぐらい、ギャップがあると感じる時があります。

例えば、素敵なカフェは大好きだけど、なぜこんなにカフェで若者が勉強しているのか?そうせざるを得ないのか?まで思いを巡らせていくと、韓国の若者が置かれている厳しい状況(受験戦争、就職難)が見えてきます。しかもそれをもっと掘り下げると、単に競争が激しい、ということだけではなく、そもそもの社会の構造が日本とは違う、ということに気が付きます。

長い間、関心をもっているうちに、単に「韓国のこれがカワイイ、これが素敵」という表面だけを見るのではなく、より深くその背景を理解したいと思うようになりました。

「似てるけど、実は違う」一番身近な外国、韓国を知ることは、逆に日本について考えるきっかけにもなるので、それが私が韓国に惹かれてやまない一番の理由かもしれません。

関連作品

ちなみに、この映画を観ようと思ったのは、日本で今年4月に公開された韓国映画「タクシー運転手」を観たのがきっかけでした。

こちらも同じく、民主化運動をテーマにした作品で、実話が元になっており、「1987」の7年前、1980年に起こった光州事件がテーマです。こちらも同じくらい衝撃的で、映画としてもとてもクオリティが高い作品です。

もし、「タクシー運転手」を観た方は、この「1987、ある闘いの真実」も観ると、より深く時代を理解できると思います。

現在、Amazonプライムで視聴ができます(レンタル)。

映画「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(字幕版)」Amazonプライム

ちなみに、この「1987、ある闘いの真実」は、以前に記事にした、英会話学校で一緒だった、映画マニアのキム君(30代)からも強くオススメされた作品でした。

いや~、本当に観てよかったです。私も、韓国の現代史をより深く理解したくなりました。

追記:TBSラジオ特集

9月13日に、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」という番組で、この映画の特集がありました。インターネット上で音声を聞くことできます。

「韓国映画『1987、ある闘いの真実』〜1987年、軍事政権を終わらせた韓国の民主化闘争を特集」チャン・ジュナン監督×真鍋祐子×荻上チキ ⇒ 音声配信

韓国の民主化闘争について、研究されている東京大学・東洋文化研究所教授、真鍋祐子さんをゲストに、時代背景や映画の読み解き方についてお話しされています。後半、チャン・ジュナン監督のインタビューも聞くことができます。(番組全体で約1時間ぐらい)

映画を観て、歴史や時代背景をもっと掘り下げて知りたい方にはオススメです。

まとめ

韓国に長いこと関心を持っていても、これまで私が知っていたのは、あくまで韓国ドラマブーム(冬のソナタ)以降の、韓国の表面的なことだけでした。

子どもの頃の韓国のイメージは、漠然と、日本より遅れている国、というくらいで、具体的にどんな状況だったのかはほとんど知りませんでしたが、今回紹介した2つの映画を通して、よりリアルに当時の状況を知ることができました。

ただ、どんな作品も、視点が違うと描かれ方が全く違ってくるので、これが当時の状況をすべてリアルに表しているとは言えない部分もあると思います。また、韓国に戻ったら、韓国語の本も含めて、色々調べてみたいと思いました。

というわけで、ちょっといつもと違う、ハードな内容になりましたが、韓国に興味を持っている方には、ぜひ一度観てもらいたい作品です。

観る前に歴史的知識がなくて観ても十分に理解できますし「観た後に、もっと事件の背景をちゃんと知りたくなった」という方も多いようです。

現在、Amazonプライムで視聴ができます(レンタル)。

映画「1987、ある闘いの真実」Amazonプライム

「1987、ある闘いの真実」
  • シネマート新宿他で2018/9/8~上映
  • 日本公式サイト
  • ※映画の画像は、すべて出典:NEVER

    13+
    最新情報をチェックしよう!