「ユンストーリー」とは?
2021年の第93回アカデミー賞にて、韓国俳優として映画「ミナリ」で初の助演女優賞を受賞した、ユン・ヨジョンさん。
韓国ソウル在住ブロガーMisa映画「ミナリ」を韓国公開初日に観てきました!これから日本で観る方向けに、あらすじ・キャスト・感想をネタバレなしで紹介します。映画「ミナリ」とは?2021年3月3日から韓国で劇場公[…]
韓国時間で4月26日(月)の授賞式に先立ち、24日(土)にOCNというケーブルテレビ局で、ユン・ヨジョンさんの特集番組「ユンストーリー」が放送されました。
ユン・ヨジョンさんと過去に共演した俳優や、親交のある監督、評論家たちが出演し、ユン・ヨジョンさんの魅力を語る番組で、ソン・ヘギョなど普段なかなかバラエティに出ないような主役級の俳優たちが数多く出演。
とても興味深い内容だったので、今日はこの番組の内容をベースに、アカデミー賞授賞式でのコメント、その後の韓国向け記者会見での発言なども合わせて紹介しながら、ユン・ヨジョンさんの魅力や人柄、ターニングポイントとなった作品などを紹介していきたいと思います。
ユン・ヨジョンさんのプロフィール
まず、最初にユン・ヨジョンさんのプロフィールを簡単に紹介しておきましょう。
ユン・ヨジョンさんは、1947年生まれの現在73歳。1966年にデビューし、現在55年目の大ベテランです。
プライベートでは、1972年にチョ・ヨンナムという歌手と結婚し、一時期は引退。渡米して息子2人を生みますが、1985年に離婚して芸能界へ復帰しています。
この当時のことは、今ではあまり語られませんが、当時の記事を見ると、離婚した当初は精神的にも金銭的に苦しい状況となり、二人の息子と自分を守るのために、あらゆる作品に飛び込んだと言います。
アメリカで13年ほど暮らしていた経験から、今でも英語が流暢。その様子は、外国人を相手に食堂を運営するバラエティ「ユン食堂」シリーズでもおなじみ。
また、先日の英国アカデミー賞の助演賞を受賞した際、流暢な英語でユーモアあふれる受賞コメントをしたことでも話題になりました。
上品ぶった英国の人々が、私を良い俳優だと評価してくれて、とても幸せだ
この時の受賞コメントをみると、
イギリスには頻繁に訪問し、10年前には俳優としてケンブリッジ大学でフェローシップ課程を履修した
ともあり、アメリカ生活だけではなく、グローバルに活動してきたことがわかります。
後輩たちから見た”ユン・ヨジョン先生”
バラエティなどでもそうですが、後輩俳優たちの多くが、ユン・ヨジョンさんを”先生”と呼んでいます。
「ユンストーリー」の中では、過去の作品で共演した後輩たちが、先生の魅力について語っていました。
実は、多くの後輩たちが口にしていたワードが、「先生は厳しい方だ」というもの。これは話を聞いていると「誰よりもストイックである」ということのようです。
最近はバラエティを通じて、気さくでユーモアあふれる姿を見せているユン・ヨジョンさんですが、仕事に対する真剣さは人一倍。
個人的にも親交が深いという「チャンシルさんには福が多いね」のキム・チョヒ監督曰く
ただ、同時に皆が口を揃えて話していたのが、「だからこそ今のユン・ヨジョンがある」ということ。
「愛の不時着」の耳野郎ことキム・ヨンミンさんも、映画「チャンシルさんには福が多いね」で共演。演技が”正確である”を超えて、”的確である”であると話していました。
毎回、他の俳優が躊躇してしまうような難しい役にも果敢に挑戦し、その都度その都度、高い理解力と集中力で役柄を自分のものにしてしまう力。
ユン・ヨジョンさんは、自分の役への集中力が高く、NGが出ないことでも有名なんだそうです。
この点については、アカデミー賞授賞式後の韓国メディア向けの記者会見で「先生の演技哲学は何か?」と聞かれた際の答えにも現れていました。
私の哲学は、自分の劣等感から始まったと思います。なぜなら私は元々演劇をしていたたわけでもなく、演劇科出身でもないから。ただ、私は自分の弱いところを良く知っていたので、とにかく一生懸命セリフを覚えて、人に迷惑をかけないこと。それが最初の始まりでした。
「ユンステイ」でも、一泊宿泊していくだけの外国人の団体のお客さんの顔と名前を一生懸命覚えていたユン・ヨジョンさんの姿を思い出します。
その後は、”切実にやれば成る”ということを知りました。ただ楽に好きにやるだけでは、…もちろんそれも大事ですが、私は切実だったと思います。だって本当に演技で食べて生きて行こうとしたのだから。私にとっては、台本が聖書のようなものでした…あら、なんか賞を獲ったからって、変にかっこよく話そうとしてるみたい…、とにかく、私は沢山努力しましたよ。
映画「ファン・ジニ」で共演したソン・ヘギョ。(こういった番組に出るなんてかなり珍しいです…!)
ユン・ヨジョンさんにとっても重要な意味を持っていた映画「ハウスメイド:하녀(2010年)」で共演したチョン・ドヨン。
チョン・ドヨンもまた、落ち込んでいるときに「あなたはチョン・ドヨンだから。大丈夫よ」と温かいメッセージをもらい、涙したことを語っていました。
そして、ユン・ヨジョンさんの演技者としての在り方、人生の先輩としての生き方、存在そのものが、多くの後輩たちに影響を与えていることも伝わってきます。
同じく映画「ハウスメイド:하녀(2010年)」で共演したイ・ジョンジェ。
「ペントハウス」にも出演する俳優ボン・テギュ。映画「浮気な家族」で共演。
ユン・ヨジョンさんのたゆまない挑戦
俳優たちへのインタビューとともに、紹介されたユン・ヨジョンさんの過去の出演作品を振り返ってみると、いかにチャレンジの連続であったかがわかります。
まず、2003年のイム・サンス監督の映画「浮気な家族(바람님 가족)」。
日本では、主にDVDレンタルで視聴可能
家族全員が浮気をするという話で、過激なシーンなども多いため、他の俳優がなかなかやりたがらないような際どい内容。
当時すでに大ベテランのユン・ヨジョンさんが、まだ若手だったイム・サンス監督のこのような内容の作品に出演したというのは、後輩の俳優たちから見ても意外なことだったようです。
映画制作の環境が変わったことを感じた。若い人材たちとも沢山出会えた。もう一度、映画に挑戦したいと思わせてくれた作品
そして、そのイム・サンス監督の作品に再度出演したのが2010年の「ハウスメイド(하녀:下女)」
この映画は、1960年のキム・ギヨン監督の映画「下女」のリメイク作品。
韓国の階級問題を扱っており、「パラサイト」のポン・ジュノ監督も大きな影響を受けたという作品です。
今、韓国を代表する、ポン・ジュノ監督、パク・チャンウク監督がともに「大きな影響を受けた」というほど、韓国映画界では偉大な存在である、キム・ギヨン監督。
私が作品を選択する基準が、60歳を過ぎて変わった。それまでは成果を計算していた。60歳を過ぎてからは、人を見て人が良ければ選択することにした。
台本を持ってきた人が信じられるのならやる。アイザック監督は、こんな人がいるのかと思うほど真っ直ぐだった。それでやることにした。
凝った技法ではなく、本物の話だったから私を揺さぶった。(ユン・ヨジョンさんインタビューより)
周りの友だちに言わせると、ユン・ヨジョンさんが一緒に仕事をして悪口を言わないのは、アイザック監督が初めてなんだとか(笑)
ということで、これまで数え切れないほどの映画に出演してきたユン・ヨジョンさんですが、特にここで取り上げた「浮気な家族」「ハウスメイド」「バッカス・レディ」は韓国でもユン・ヨジョンという俳優の凄さを語る際には欠かせない代表作として語られています。
現在日本では、dtvなどで見られるようです。
バラエティ番組で見えた新たな魅力
韓国ソウル在住ブロガーMisa大人気バラエティ「ユン食堂」の新シリーズ「ユンステイ」が韓国で放送スタートしました!これから日本で視聴する方々に向けて、初回放送の内容を中心に番組の概要や見どころを紹介します。「ユン[…]
私はナ・ヨンソクが好き。彼に言わせると私は人の好き嫌いがハッキリしているらしいけど。私が彼が好きな理由は、賢明だから。表には出さないが、後輩たちに積極的に機会を与える。そして人の話をよく聞くことができる人だ。
アカデミー賞ノミネート時の反応
なお、「ユンストーリー」では、ユン・ヨジョンさんがアカデミー賞にノミネートされたときの反応についても、語られました。
ノミネートが発表された3月15日は、なんと「パチンコ」という作品のため、カナダでの撮影から帰国し、隔離中だったというユン・ヨジョンさん。
「当然、ノミネートされるはずだ、と思っていた」と話していたのは、「ユン食堂」で共演し、もはや、ユン・ヨジョンさんの相棒という感じのイ・ソジン。
ソン・ヘギョが「おめでとうございます」とメールを送ったら、「私は、今、伸びた(=嬉しくて気を失いそうだ、というような表現)」と独特の感性で返事が返ってきたそう。
「ミナリ」で共演した、ハン・イェリ。「ノミネートを聞いて立ち上がって声を上げた」と言います。
アカデミー賞授賞式でのスピーチ
ユン・ヨジョンさん、アカデミー賞助演女優賞受賞㊗️🎉韓国俳優として初、アジア系俳優としては63年ぶり。「ミナリ」の制作会社を率いるブラッド・ピットがプレゼンターで発表。韓国ではケーブル局で生中継がありリアルタイムで見られました😆授賞式のコーディネートはこちら👇https://t.co/FnBCxJoY3t pic.twitter.com/Yu154FrcP2
— Misa🌺韓国ソウル在住ブロガー (@misam34) April 26, 2021
ちなみに、このときの二人のファッションも話題になりましたが、ユン・ヨジョンさんのネイビーのドレスは、ドバイのMarmar Halimというブランド。
イギリスのアカデミー賞では、ディオールのドレスだったのですが、今回はとても個性的なブランドを選択。一方、ハン・イェリの赤いドレスは、ルイ・ヴィトン。
助演女優賞の発表には、「ミナリ」を制作した会社を経営するブラッド・ピットが登場。「実は、撮影時には会ったことがなかった」というユン・ヨジョンさんは、壇上に上がるやいなや
ブラッド・ピットさん、ついにお会いできて光栄です。撮影中はどこにいらっしゃいましたか?
と、まずはブラッド・ピットに声をかけ、笑いを誘う余裕ぶり。
そして、アジア人として63年ぶりの快挙に、感謝しながらも堂々とした態度でスピーチ。
ユーモアと、同じ作品を作り上げたチームへの感謝、会場にいる他の俳優たちへの敬意をしっかり織り込んだスピーチは、昨年のポン・ジュノ監督のスピーチにも共通する部分がありました。
日本の記事だと、なかなかスピーチ全文が訳されているものがないのですが、できるだけカットせずに紹介している記事をこちらに紹介しておきます。
名女優グレン・クローズ、同じ役でアカデミー賞&ラジー賞にノミネート【第93回アカデミー賞】 #アカデミー賞 https://t.co/bjwJn8jDnp
— シネマトゥデイ (@cinematoday) March 16, 2021
ユン・ヨジョンさんと同じ年で、8回目のノミネートにもかかわらず、アカデミーでは受賞実績がないグレン・クローズ。
2001年にユン・ヨジョンさんがイギリスに行った際、彼女の演劇を見てその熱心さに感銘を受けたと言います。そんな彼女が受賞するべきだ、と考えていたことは、授賞式のスピーチからも伺えます。
グレン・クローズではなく、私が選ばれたのは、私が少しラッキーだったからだ
なお、授賞式後の記者会見で、海外メディアの記者から、「ブラッド・ピッドからどんな匂いがしたか?」と失礼な質問を受け、
匂いは嗅いでいない、私は犬ではありません。
と見事に切り替えしたユン・ヨジョンさん。韓国メディア向けには、
ブラッド・ピットには、裏で「一度、韓国においで」と言っておいたわ。私だけじゃなくて、皆ファンだから。そして「お金をもう少し出して」とも伝えた。とても(撮影)大変だったから。「必ず韓国に行く」と約束したわよ。でも、私はアメリカ人の話をあまり信じてないけどね。
と、ユン・ヨジョン節炸裂で話していました。「ミナリ」は独立映画ということで、かなり限られた制作費の中で撮影されたようですね〜。
また、授賞式にハン・イェリが参加することになった秘話についても、語っていました。
今回、コロナの影響で、ノミネートされている人が会場に連れていけるのは、一人だけと制限されていたそう。
息子は二人だから選ぶことはできないし、今までこの映画をサポートしてくれた友人のプロデューサーに声を掛けたところ、「私は何者でもない。イェリが参加したほうが、もっと美しい。私達の映画のために」という話になり、娘を演じたハン・イェリと一緒に参加することになったんだそうです。
★ハン・イェリ主演の名作ドラマ
韓国ソウル在住ブロガーMisaヒューマンドラマ好きにおすすめしたい隠れた名作!「(知っていることはあまりないけれど)家族です」の見どころを紹介します!「(知っていることはあまりないけれど)家族です」とは?20[…]
最後に、とても興味深かったのが、映画エンディングについての話。
※※ 映画のネタバレを含みますので、未視聴の方は、飛ばしてください※※
実は、韓国では観客の間で、かなり賛否が分かれたエンディング。それを意識してか、記者が「あのエンディングが惜しいと感じた…」と質問したところ、こんな秘話が飛び出しました。
ユン・ヨジョンさんによると、シナリオの段階では、最後、おばあさんがしばらくして亡くなってしまう設定だったそう。
老人ホームに子どもたちが来て、花札を一緒にしようとするけどできない。そして最後にミナリについてのナレーションが入る…そんな、韓国人の情緒に合うような展開でした。
そのエンディングが気に入ってたユン・ヨジョンさんは、アイザック監督がエンディングを変えると言った際、反対しましたが、最終的には彼が賢明であることを信じて変えることに同意したそう。
その背景には、元のシナリオでは、少し大きくなったジュニア俳優をキャスティングする必要が出てしまうため、制作費がかかってしまう、という独立映画ならではの事情があったようです。
「どのように変えたのか?」は、出来上がるまで知らされなかったそうですが、出来上がったエンディングを見て、「素晴らしく良かった」というユン・ヨジョンさん。
「刺激的な展開を好む韓国映画の観客たちにとっては、ちょっと物足りなかったかもしれない」と話しつつも、「私は監督の演出がとても好きだった」ということを強調していました。
まとめ
ということで、アカデミー賞で韓国俳優としての初のノミネート・受賞を果たしたユン・ヨジョンさんについて、特集番組・授賞式・韓国向け記者会見の様子などをまとめてご紹介しました…!
ちなみに、個人的には最近、ユン・ヨジョンさんが「ミナリ」の前に出演した映画「チャンシルさんには福が多いね」を見たのですが、すごく良かった…!
日本でも、2021年の1月にミニシアター系などで劇場公開された映画なのですが、今はもう殆ど終わってしまったのかな…?(むしろ、そろそろDVDになるのかも)
そちらも別途、記事で紹介したいと思います。皆さんも是非、この機会に気になったユン・ヨジョンさんの過去作品、見てみてください!
★『愛の不時着』を倍楽しむ100以上のネタを詰め込んだnoteを公開中
ソウル在住ブロガーMisa今年「愛の不時着」に関して調査・考察したことをすべてまとめたnoteマガジン「不時着のすべて」を公開しました。「不時着のすべて」とは?今年『愛の不時着』を観た皆さんから、ブログにたく[…]
★オススメ記事
ソウル在住ブロガーMisaAmazonプライム・ビデオで見られる韓国映画の中から、実話ベースのオススメ作品を紹介します。韓国映画ならAmazonプライム・ビデオさて、最近Netflixを通じて韓国ドラマにハマ[…]
★ナ・ヨンソクPDの番組
ソウル在住ブロガーMisaチェ・ウシク&チョン・ユミ出演のバラエティ番組「夏休み(邦題:ホームバカンス)」の概要とパク・ソジュンがゲストに来た時の様子をご紹介します!「夏休み」はあの人気PDの新番組![…]
ソウル在住ブロガーMisa人気バラエティ「三食ごはん 漁村編5」が韓国で放送スタートしました!初回ゲスト、コン・ヒョジン登場回を中心に番組の概要を紹介します。三食ごはんシリーズとは?「三食ごはん(삼시세끼)[…]
*「ユンストーリー」の画像はOCNから、映画の画像はNAVERからお借りしました。