Netflix「未成年裁判」実話モチーフの社会派ドラマ!あらすじ・キャスト・知っておきたい背景知識

韓国在住KdramaライターMisa
Netflixオリジナルドラマ「未成年裁判」のあらすじ・キャスト・韓国での反応、作品を理解するための背景知識をネタバレなし・あり両方で解説します!

「未成年裁判」視聴後の感想

Netflixオリジナル「未成年裁判(소년심판)」は2022年2月25日から公開。キム・ヘス、キム・ムヨル、イ・ソンミン、イ・ジョンウンなどが出演。

いや〜〜、これぞ韓国ドラマ!!!という名作でした。

キャストとテーマを聞いたときから、私の好きな社会派ドラマだろうと期待していたのですが、期待以上の深くて鋭い社会派ドラマでした。最初数話観て、やっぱり軽くなかったので「これは1話ずつ丁寧に観よう」と思ったのですが、4話あたりから続きが気になって一挙観してしまいました。

エンタメ性も含めた完成度でいうと、「D.P.−脱走兵追跡官−」のほうが秀逸だったと思うのですが、社会派ドラマとしての視点の置き方、表現の仕方、メッセージ性という点で言うと、「未成年裁判」が社会派ドラマのあり方をまた一つ進化させたと言っても過言ではない気がします。

韓国でもすごく評判が良いので、百想芸術大賞でも「D.P.−脱走兵追跡官−」と並んで各賞にノミネートされるのではないでしょうか。

なお、この作品で出てくる犯罪事件の多くは、実際にあった事件をモチーフにして作られています。

今日は、記事の前半で「未成年裁判」気になってる!という方向けに、ネタバレなしの作品紹介を。

後半では、観終わった方向けに、韓国での反応、作品を理解するための背景知識、キャスト情報などをネタバレありで紹介していきたいと思います。

*「ここからネタバレあり!」というところには、表記しますので、未視聴の方は必ずご確認の上ご覧ください。

「未成年裁判」を観る前に知っておきたいこと

作品概要

監督:ホン・ジョンチャン(「ドクター異邦人」「ディア・マイ・フレンズ」)
脚本:キム・ミンソク
原題:소년심판(少年審判)
1話60分✕全10話

こちらの4人の主演俳優たちが、それぞれ未成年事件を扱う判事(裁判官)。ストーリー展開としては、1事件あたり2話前後の分量で扱われ、キム・ヘスをメインキャストとしながら、事件ごとに他の3人にもフォーカスが当たっていきます。

また「D.P.−脱走兵追跡官−」以降、Netflixオリジナルでは映画監督の作品が続きましたが、今回は久々のドラマ監督による作品。
しかも驚くべきことに、脚本を手掛けたキム・ミンソク作家は本作がデビュー作!2013年に公募展で入賞したことはありましたが、実際に作品が映像化されたのは今回が初だそうです。

韓国の未成年犯罪と法律

韓国において、未成年犯罪に関する法律は刑法と少年法の2つです。

刑事責任年齢=満14歳以上(13歳以下を未成年)
少年法の適応年齢=満10〜18歳
つまり…
満14〜18歳:犯罪の内容により刑法の適用or少年法の保護処分
満10〜13歳:少年法の保護処分
満9歳以下:犯罪を犯しても法律で裁けない

ちなみに、日本では、2022年3月時点では、

刑事責任年齢=満14歳以上
少年法の適応年齢=20歳未満(※)
となっていますが、ちょうど2022年4月から改正少年法が施行され、18、19歳を「特定少年」として17歳未満とは異なる扱いとなる(=一部20歳以上の者と同等に扱われる部分が発生する)ようになります。
(これは選挙権が、18歳以上に変更されたことからの流れ)
このドラマでは冒頭から、「少年法の廃止を求めます」という国民請願(大統領府のHPに国民が書き込み、数が多ければ政府が回答する義務が生じるもの)が紹介されます。
韓国ではドラマで扱われたような未成年犯罪が起こるたびに、実際にこのような国民請願が何度も上がり、すでに390万人を超える国民がこれに賛同しています。
日本では、この少年法改正に大きな関心が集まっていはいない、もしくは「子どもには、厳罰より更生の機会を与えるべきなんじゃないか」という何となくの空気があるのではないでしょうか。
私自身もそうでした。「少年犯罪をどう裁くべきか?」について真剣に考えてみたことがなかったがゆえに、「厳罰化って大丈夫なの?」というなんとなくの感覚だけがあり、このドラマの冒頭の「少年法の廃止を求めます」という切り込み、そしてキム・ヘスが演じるシム判事の「私は非行少年をー」という冒頭の一言にドキッとさせられました。
しかし、このドラマは「少年法は廃止すべきだ!」という単純な視点では描かれていません。
未成年犯罪がどうして起こるのか、現状はどう裁かれているのか、今後はどうあるべきなのか?について、非常に多角的な視点から描いており、何か特定の答えや主張を表現すると言うよりは、この問題について人々がより深く考えるきっかけを与えてくれます。
それは、法律や司法という一見韓国固有の社会問題のようでありながら、私達日本人が観ても非常に参考になり、考えさせられるものです。
私はこの作品を観て、社会問題がこうやって作品で表現されることもさることながら、社会問題に対する国民の関心の高さと、そこで行われている議論の深さを垣間見たような気がしました。
また、作品として重たいテーマではあるのですが、これまでのドラマでフォーカスされがちだった事件の残虐性を強調するような描写は少なく、なぜこのような犯罪が起こってしまうのか?をより丁寧に描いており、残虐さよりも考えさせられる重みがある作品です。

脚本家・監督の想い

NetflixKoreaが公開している動画には、キム・ミンソク作家とホン・ジョンチャン監督がインタビューに答え、作品を制作するに至った経緯や想いを語っています。(ネトフリジャバンさん、こういう大事なコンテンツを日本でも公開してほしい〜涙)

日本語字幕ありませんが、眼鏡の方がホン・ジョンチャン監督、ネイビーの洋服を着た方がキム・ミンソク作家です。

内容を紹介すると、キム・ミンソク作家はこの作品を最初に企画してから監督に会うまで、約4年をかけて準備を行ったそうです。実際に、全国各地の未成年犯罪の関係者50〜60名に直接取材をしたんだとか。

最初の課題は、私達の未成年犯罪に対する認識と、実際に事件を扱う判事たちが持っている視点のギャップを埋めることだった。
加害者・被害者・判事たちそれぞれの視点で悩む時間を持った。
取材をすればするほど内容が重たくなり、「この作品は多様な視点で描かなければいけない。ある視点だけに偏ってはいけない」ということを強く意識した。
取材した裁判官や各施設の人々皆が、ドラマ化をとても歓迎してくれて、「上手く書いてください」という言葉をたくさんもらった。

また、ホン・ジョンチャン監督はこう話しています。

信念がはっきりした判事たちでさえも、葛藤し、対立する。その葛藤を深く表現するにはどうしたらいいか?が演出上で最も悩み、重要だったポイントだ。

ということで、大人が観るべき名作!まだ観ていない方は、是非ご覧になってみてください。以上、ネタバレ無しの作品紹介はここまでです。(以下は、ネタバレありになるので視聴した後に御覧ください!)

「未成年裁判」を深く理解する背景情報

モチーフとなった実際の事件たち

1〜2話:仁川小学生誘拐殺人事件(2017年)
・当時小学2年生(8歳)の女児が、行方不明の末、マンションの屋上の水道タンク室の上で切断遺体で発見される。
・犯人は高校を中退した少女A(当時16歳)。さらに、犯行から2ヶ月前にSNSで少女Aと知り合った少女B(当時18歳)が殺人を幇助。
未成年者が起こした猟奇的事件として、韓国で非常に有名な事件。ドラマ「マウス」の作家もこの事件をきっかけにサイコパスがどうやって生まれるのか?をテーマにした作品を作ったというほど、社会に衝撃を与えた事件です。
「両親に電話をかけるために電話を貸してほしい」という会話から、家に連れて行った過程などは類似していますが、被害者・犯人たちの性別を入れ替えたり、主犯と共犯の年齢を入れ替えるなど、ドラマではアレンジがされています。(実際の事件の詳細を確認すると、ドラマよりもさらに衝撃的な内容が沢山出てきます…)
実際の事件では、一審で少女Aは懲役20年、少女Bには無期懲役が言い渡され、控訴審で最終的に少女Aは懲役20年、少女Bは懲役13年が言い渡されています。
少女Aは「アスペルガー症候群で心身衰弱状態だった」と主張しましたが、この主張は受け入れられず、懲役20年+位置追跡電子足輪30年が決定しました。
6〜7話前半:淑明女子高試験紙流出事件(2018年)

・高校の期末試験で試験問題を管理していた教務部長の二人の娘である双子の姉妹が文系・理系でそれぞれ1位の成績に。
・突然二人が良い成績をとったことから、周りの保護者から疑いの声が上がり警察の捜査へ進展。
・教務部長である父親が娘に問題を見せたことが発覚し、2020年に懲役3年の刑が確定。双子は退学となり、懲役1年執行猶予3年が確定。
・その後教員の子供は同じ学校に通えないようになった。

ちなみに、淑明女子高校というのは、江南区の中でも名門にあたる高校。この事件は「SKYキャッスル」や「メランコリア」などのドラマでもモチーフにされているほど有名な事件です。

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7話後半〜8話:大田中学生レンタカー窃盗・追突事故(2020年)
・当時中学生だった8人がソウルでレンタカーを盗み大田(テジョン)まで無免許で運転。
・警察の追跡を受け、逃走する過程でオートバイで配達をしていた大学生を死亡させた。

この事件は、加害学生たち(少年8名、少女2名)が当時13歳だったため、法的には厳重な処罰を下すことができず、まさに少年法改正・厳罰化の声が高まるきっかけとなった事件の一つです。

ドラマでも、加害者たちが事件後も反省の色無く、自分たちの写真を撮ってSNSに公開する場面がありましたが、実際の事件でも加害者たちは、この死亡事件の前にも何度か車両を盗む事件を起こしており、警察での取り調べを受けた後に、誇らしげにSNSに写真を上げるなどの行動をとっていたそうです。

実際の事件でもこのように、事件そのものの悪質性に加え、事件後も反省の色を見せない加害者たちの態度や行動が大きく批難を受けました。

最終的に8名の少年少女は、それぞれ長期少年院への送致、長期保護観察処分などになり、刑事処罰は受けなかったため、法律の改正を求める世論が高まりました。

なお、未成年の無免許運転による死亡事故は、2017年に江原道江陵市で女子高生が引き起こした事件も有名であり、この事件も参考にしたのではないかと推測されます。

9話〜10話:仁川女子学生集団性的暴行事件(2019年)
・当時14歳のA少年、15歳のB少年が同じ中学校に通う14歳の少女を呼び出し酒を飲ませた後に性的暴行をした事件
A少年が少女の裸の写真を撮影した点、B少年は未遂に終わった点などはドラマの中でもモチーフにされています。
この事件も先ほどのレンタカー事件と同じく、事件後、加害少年たちの全く罪悪感を感じていない態度が大きな批判を受けました。この事件も、実際の加害少年の証言などが生々しく残っていて、それを見るとドラマ以上に憤りを感じる事件だったことがわかります。
最終的に、A少年・B少年には短期3年、長期4年の判決が言い渡されました。
9話〜10話:龍仁アパートレンガ死亡事故(2015年)
・アパートの屋上から小学生数名がレンガを意図的に落とし、下で野良猫の小屋を作っていた大人一人が死亡、一人が頭蓋骨陥没となった事件
・加害者は当時9歳のA少年、11歳のB少年、8歳の少年
同じく9〜10話の加害少年の過去事件として取り上げられたレンガ事件。こちらも実際の事件がモチーフになっています。
少年たちは、屋上で位置を変えて複数回レンガを落としましたが、「重力の実験をしたかった」と証言。しかしこれは、「少年の親たちが介入した証言ではないか?」「本当は下に人がいることをわかって投げたのではないか?」と様々な憶測が飛び交いました。
法律上は10歳以下は、少年法の保護処分の対象にもできないため、実際に被害者にあたったレンガを投げたA少年は不起訴処分、11歳のB少年だけが裁判所少年部に引き渡されました。

これだけ実話をモチーフに出来るのはなぜか?

韓国のサスペンスでは、このように実話を扱った作品がとても多いです。今まさに韓国放送中の「悪の心を読む者たち」では、犯人役まで実際の犯人と似た雰囲気の役者をキャスティングし、もはやドキュメンタリーのようなリアルさで作品が作られています。

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韓国では、こういった作品の制作にあたっては、基本的に制作陣が関係者、特に被害者の家族にしっかりと作品の内容を事前説明し、事件をモチーフにすることの同意をとっています。

すべての作品がもちろん「これは実際の事件とは関係のないフィクションです」という前提なので、モチーフにすること自体に法的な規制などはなく、どこまで丁寧に許可を取るかは制作陣の意識に委ねられる部分ではあります。

ただ、実話を扱う作品は、特に映画の世界ではもう何年も前から多く作られているため、過去には遺族とトラブルになった事例もあり、そういった経験を踏まえて、制作者側でもある程度のガイドラインが設けられていると思われます。

また、「未成年裁判」のように、多くの作品が、結果的には世の中に問題を知らしめたり、同じような犯罪が起きないことを目的として作られているため、そういった作品の趣旨に賛同して協力する関係者も多いようです。

未成年犯罪は増えているのか?

韓国社会で少年法を巡る議論が熱い背景には、ここまで紹介した象徴的な事件だけでなく、実際に10〜13歳の未成年による犯罪が増えていることが挙げられます。

裁判所の統計によると、2017年には7665件だった処理件数が、2021年には1万件を越えたと言います。先程の例のような殺人・強盗・性犯罪などの凶悪犯罪は5%程度ですが、暴力事件は20%程度を占めます。

一方で、満14〜19歳の未成年による犯罪は年々減ってきていると言います。こういったことも、「刑事処罰を受けられる年齢を下げるべきだ」という議論につながっています。(ハンギョン:2022.03.05記事参照)

しかしながら、ドラマの中では「処罰を厳しくするだけでは問題の解決にならない」「未成年の保護・矯正などの環境改善も必要だ」という、現場の司法関係者たちの視点も丁寧に描かれています。

「未成年」とひとくくりにするのではなく、事件の凶悪性と一人の人間としての更生の可能性を見極めること。そして、判決のあり方だけではなく、判決のその後の環境をどう作るのか?保護者とどう対峙するのか?など、非常に多角的な視点で論点を掘り下げていて、作家がどれだけ丁寧に取材をして深く考えたのか?が伝わってくる内容に仕上がっています。

リアルな部分と仮想な部分

このように実際の事件も多くモチーフにされている「未成年裁判」ですが、ドラマの中には現実とは異なる部分も多く存在します。

まず、ドラマの中では、キム・ヘス演じるシム判事たちが所属するのは「少年刑事合意部」。ここでは少年の保護事件と少年刑事事件の両方を扱う設定になっています。

しかし、現実には少年保護事件と、満14歳以上の重大事件を扱う少年刑事事件は、別の部署で審理が行われるそうです。これはドラマの中でも表現されていましたが、同じ年齢の未成年でも、更生を目的とした判決にすべきものと、重大な処罰を下すべきものが両方存在するという観点から、現場の判事たちの意見も取り入れながら作り上げられた一つのあるべき姿を表す設定なのかもしれません。

また、ドラマの中では判事が直接犯人を探して周る場面が出てきますが、現実的には追加で調査が必要な場合は、調査官が調査を行うのが一般的とのこと。

ただ、キム・ミンソク作家は取材の中で実際は直接調査をしている熱心な判事たちも一部居るということを知り、ドラマでは直接調査する形の設定にしたのだそうです。

「未成年裁判」キャスト関連情報

実力派揃いの主演4俳優

未成年犯罪の裁判を行う判事を演じる4名の俳優は、韓国を代表する名俳優ばかり!

キム・ミンソク作家は、未成年犯罪に対する人々の様々なスタンスを4人の判事のキャラクターに反映させて描きました。

シム・ウンソク判事(キム・ヘス)
人々が「本来このような裁判をしなければならない」と考えるような裁判を行う人物
チャ・テジュ判事(キム・ムヨル)
子どもたちのために全力を尽くす理想的な人物
カン・ウォンジュン判事(イ・ソンミン)
厳罰だけではなく矯正を中心に法改正が必要だと考える人物
ナ・グニ判事(イ・ジョンウン)
とにかく事件を迅速に処理しなければと考える人物

なお、脚本の時点ではナ・グニ判事の役は、男性の設定だったと言います。しかし、監督がこの役にピッタリあった男性の俳優が浮かばず、脚本家が性別を変えることを提案。そこで監督の頭にすぐにイ・ジョンウンが浮かび、声をかけたんだそうです。

「パラサイト」の家政婦役でも印象的だったイ・ジョンウン。演出側でキャリアを始め、ドラマで本格的にデビューしたのは2013年と遅咲きの俳優です。

今回、キム・ヘスの上司役として登場しましたが、実際は1970年生まれでキム・ヘスと同じ年です。(今年51歳!)

また、キム・ヘスとイ・ジョンウンは、今年1月から日本でも公開された映画「ひかり探して」で共演して以来、一緒に旅行をするなど非常に仲が良いことでも知られています。

ちなみに、このドラマの原題は「소년심판(少年審判:ソニョンシムパン)」となっており、シムパン=シム判事を掛けているのではないか?とも言われています。

そして、出る作品に外れがないと言われるイ・ソンミン、キム・ムヨルという演技派二人の共演も何とも豪華!

特にキム・ムヨルの穏やかさは、殺伐とした事件の中でも一種のオアシス…(笑)

「ミセン」でも有名なイ・ソンミンは、良い役も悪い役もどちらもリアリティたっぷりに演じられる名俳優!

4人とも、監督が最初に望んだ俳優がそのままキャスティングされたそうです。

イ・ソンミン出演作のオススメ映画「目撃者」

未成年を演じた成年新人俳優たち

そして「未成年裁判」がこれだけ見ごたえのある作品に仕上がったのは、主演の4人の名俳優たちに加え、未成年者を演じた俳優たちの活躍も大きいと言えるでしょう。

衝撃的な内容の事件が多いこともあり、ドラマの中の非行少年・少女を演じたのは成年の俳優たちがほとんどです。厳選なオーディションの結果選ばれた俳優たちは、無名ながらも驚くべき演技力の持ち主ばかり!

中でも一番驚いたのはこの俳優…!

ホン・ジョンチャン監督によると、最初は舞台で一度イ・ヨンを見かけたことがあり、この役を任せるつもりではなくてオーディションに呼んだんだそう。しかし、舞台で見たときとは違う、ショートカットで現れたイ・ヨンを観た瞬間、その場にいたスタッフたちみんなが「ソンウだ!(13歳の少年)」と思い、急遽任せることを決めたんだそうです。

そしてこのイ・ヨンが演じた少年と共犯の少女を演じたファン・ヒョンジョンは、なんと今回初めて演技にチャレンジした新人俳優。

役作りにあたっては、母親と一緒に、国内にあるあらゆるサイコパスに関する論文を、時には英文を翻訳しながら読んで研究を重ねたそうで、その姿勢と演技力はキム・ヘスがインタビューで称賛するほどでした。

また、レンタカー事件の主犯的な学生役は、「海街チャチャチャ」でイ・サンイの後輩の制作スタッフを演じたイ・ソクヒョン。


*tvN「海街チャチャチャ」より

このイ・ソクヒョンがむしろ唯一「海街チャチャチャ」で少し有名だったぐらいで、後の俳優たちはみんなまだまだ無名な俳優たちばかりでした。

いや〜、これだけ韓国ドラマ観てても「この演技上手い俳優誰!?」という驚きが毎回あり、作品ごとに次から次へとライジングスターが生まれるのが本当に凄い。

厳正なオーディションで、実力さえあれば起用されるという、厳しくも面白い世界だと思います。

そして、未成年以外の役で印象的だったのが4〜5話の更生施設の話で登場したセンター長を演じたヨム・ヘラン!

イ・ジョンウンとも共演した「椿の花咲く頃」、百想芸術大賞で助演賞を受賞した「悪霊狩猟団カウンターズ」など、最近は「ヒット作にこの人あり!の名助演。


*OCN「悪霊狩猟団カウンターズ」より

私が4話から一気にハマってしまったのも、ヨム・ヘランのせいだったのではないかというぐらい、見方によっては良い人にも悪い人にも見えるセンター長の役を見事に演じていました。

更生施設での事件では、冒頭に少女たちの証言を聞いた時点と、センター長に話を聞いた時点では、事件の見え方が180度違うという、私達のものの見方にも警鐘を鳴らすようなハッとする演出がとても秀逸でしたが、これはヨム・ヘランの演技力あってこその演出だったと思います。

共演者たち、監督・脚本家も、ヨム・ヘランの演技については絶賛していました。

キム・ヘス「最後に判事の部屋で”本当にすいませんでした”と言ったセリフ、あんなに申し訳無さが伝わる演技は初めてだった」
脚本家「"もともと病歴がある設定にするのはどうか?”という提案をしてくれた。事前に本当によく細かくキャラクターを分析して準備されたのがわかった」
なお、今回俳優たちへのインタビュー動画で、キム・ヘスがこれまで紹介したように、共演した俳優たちに対してキャリア関係なく惜しみない賞賛を口にしていたのがとても印象的でした。
キム・ヘスといえば、韓国を代表する大女優ですが、上から目線で褒めているというより「あの演技がすごく良かったのよ!」と純粋に良い演技に興奮したという感じで、こういうベテランがいるからこそ、若手が育つんだな〜と思いました。

「未成年裁判」韓国での評判

「未成年裁判」の韓国での評判は、冒頭に紹介したとおり、概ね高評価です。

韓国視聴者の声
キム・ヘスの演技が本当にすごい!最高だ!
こんなに心に響くドラマは久しぶり!
親や家庭環境がどれだけ重要かを自覚させられるドラマ。大人は必ず観なければいけない。

特に多かった声は、やはりキム・ヘスの圧倒的な演技!!演技を見る目が厳しい韓国視聴者も絶賛する声が多いです。

唯一、批判ポイントがあるとすれば、キャラクターの描写。先ほど紹介したように、4人の判事は実在する「様々な信念を持つ人達の象徴」として描かれます。そのため、やや作為的に感じられる描写があるという声もあるのです。

なお、「イカゲーム」や「地獄が呼んでいる」と比べても高く評価されている点が、メッセージの描き方。

両作品では、社会批判的なメッセージがわかりやすい形で表現されていることが、韓国視聴者からは「典型的すぎる」と批判されたポイントでした。

しかし、「未成年裁判」においては、これまで紹介したように一つ方向性に誘導するような表現ではなく、問題の原因や解決策をとにかく多角的に描くやり方で、視聴者により深い問いを投げかけています。

現実にも、今後まだまだ少年法を巡る議論が続く韓国社会において、「未成年裁判」はコンテンツとしての面白さを超えて、非常に意義深い作品だったと言えるのではないかと思います。

最後に

「未成年裁判」のあらすじ・キャスト・韓国での反応、作品を理解するための背景知識などをご紹介しました!

これだけ韓国ドラマらしい深くて鋭い作品が、新人脚本家と若手俳優たちの活躍で作られているというのがまた、韓国ドラマ界の層の厚さというか、強さを感じます。

今年の百想芸術大賞でも、多くの賞を受賞することを期待します。

소년심판(原題:少年審判)
韓国公開:2022年2月25日
邦題:未成年裁判
全10話
*画像はNetflixKRのTwitterからお借りしました。
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