「賢い医師生活」とは?
「賢い医師生活」は2020年3月から韓国でシーズン1が放送され、2021年6月17日からシーズン2が放送される大人気ドラマ。
日本でもNetflixで視聴が可能で、シーズン2については韓国放送後の毎週配信が決定しています。
1999年に入学したソウル大学医学部の同期5人は、20年来の付き合い。それぞれ担当する科が異なるが、あるきっかけで同じ病院で一緒に働くことに。
よくある医療ドラマとは一線を画し、派手な手術シーンや権力争いなどは出てこず、医者と患者の何気ない日常を丁寧に描く。
韓国で絶大な人気を誇る「応答せよ」シリーズなどを手掛け、視聴者から圧倒的信頼を得ているシン・ウォンホPD、イ・ウジョン作家のコンビの作品。
韓国Netflixの2020年年間ランキングで、ダントツの1位を記録
日本とは全く異なる韓国Netflixのランキング
先ほど紹介ししたとおり、この「賢い医師生活」は、2020年の韓国Netflixの年間ランキングで1位を記録。2位の「秘密の森」を大きく引き離してのダントツ1位です。
1位:「賢い医師生活」1491
2位:「秘密の森」934
3位:「サイコだけど大丈夫」827
*数字はランキングをスコア化したもの(FlixPatrolより)
ちなみに、日本の場合だと…
1位:「愛の不時着」2239
2位:「鬼滅の刃」1702
3位:「梨泰院クラス」1534
となっており、
日本で1位の「愛の不時着」は、韓国だと51位(スコア79)
と、日本と韓国で人気となるドラマは大きく異なることがわかります。
こんな人に見てもらいたい「賢い医師生活」
この「賢い医師生活」はこんな方にオススメしたい作品です。
緻密に作られた脚本・演出を味わってみたい方
ドラマで「癒やし・感動」を味わってみたい方
韓国ドラマそのものはもちろん、ヒットの仕組みや制作現場の最新の取り組みなどにも興味がある方
私自身も「賢い医師生活」は、大好きな作品なのですが、実は、これまではあまり韓国ドラマ見始めの方にはオススメしてきませんでした。
というのも、この「賢い医師生活」の面白さは、ややわかりにくい部分もあり、色んなジャンルのドラマをたくさん見てきた玄人向けだと思っていたからです。
ただ、この1年間、韓国での人気作品はNetflixJAPANで配信されない状況が長らく続いた中で、久しぶりに韓国での人気シリーズ「賢い医師生活 シーズン2」が日本でも毎週配信で見られるという良い機会であること。
また、韓国ドラマ観始めの方の中にも、この作品にどっぷりハマる方がいて、「この作品に出会えてよかった!」という声を何度か頂いたこと。
さらに、作品そのもの以外に関しても、視聴者との近くて深い関係を作り上げるシン・ウォンホPDの取り組みがとても先進的で、「コンテンツビジネスの在り方」という観点でもとても興味深い作品であるため、このあたりに興味がある方にも、是非見ていただきたいなと思いました。
逆に、「恋愛モノでキュンキュンしたい!」「日本のドラマにはない斬新な設定、ドラマティックな展開を見たい!」という方には、物足りなく感じる作品かもしれません(笑)
ただ、この作品の面白さが楽しめれば、日本のNetflixランキングには現れない隠れた名作たちを味わえる楽しみが待っています。
ということで、最新の「韓国ドラマらしさ」が詰まった、「賢い医師生活」の魅力について解説していきたいと思います。
「壮大なスケール」ではなく「何気ない日常」
「賢い医師生活」では、医療ドラマでおなじみの派手な手術シーンや、大学病院内のドロドロの権力争い…といった要素は一切登場しません。
大事にしているのは、「どこにでも居そうな、普通の人たちの何気ない日常」を温かく描くこと。
これは実は「賢い医師生活」だけではなく、ここ最近韓国で深く愛される作品に共通する部分。2019年最大のヒット作品となり、韓国ドラマ史に残る名作と言える「椿の花咲く頃」でも、登場人物は皆、周りにいそうな普通の人たちでした。
シンPDも常に「普通の人たちの何気ない日常こそが、もっともユニークで人を感動させる」ということを大事にしています。
韓国では、ドラマでしかありえないような夢物語、刺激的な復讐劇、ファンタジー作品などなどが数多く作られ、「現実とは全く違うドラマの世界で代理満足をする」という楽しみ方から、今は「現実とシンクロするリアルなドラマを見て、自分自身や人生を見つめ直す」というトレンドに移り変わってきています。
これは、過去に、様々なジャンルの作品が一通り話題になったからこそ、たどり着いたトレンドなのかもしれません。
「え、それって面白いの?」と思うかもしれませんが、そんな何気ない日常を描いて視聴者の心を捉えてしまうのが、イ・ウジョン作家の脚本とシンPDの演出の凄いところ。
一人ひとりの登場人物の小さな話がとてもリアルで、胸に染み込んでくるような感動があるとともに、中心となる5人の関係性がとても微笑ましく、人と人の関係性の温かさを感じさせてくれます。
なお、このような内容のドラマでは、刺激的な内容のドラマよりもむしろ確かな演技力が求められます。
「賢い医師生活」では、シンPD&イ・ウジョン作家が候補となる俳優たちに、直接ひとりひとり会うことにこだわってキャスティングが行われています。実際のキャラクターとシンクロ率が高く、演技・人格ともに素晴らしい俳優を選びぬくことで、最高の俳優陣で構成しているのです。
韓国の視聴者は、脚本・演技・演出の完成度を作品に求めるため、「壮大なスケール感」の作品でもそのどれかが不足しているとヒットには至りません。逆に、どこにでもありそうな素材の作品でも、脚本・演技・演出の完成度が高ければヒットすることもしばしばです。
「賢い医師生活」はまさに、そんな韓国国内でのヒットの必須条件を兼ね備えた作品と言えます。
★CULTURA「賢い医師生活」特集:内容はこちらで紹介
「わかりやすさ」ではなく「奥深い面白さ」
海外で人気の韓国ドラマを観ていると、「誰が見てもわかりやすい面白さ・魅力」があることが共通しているように思います。壮大なスケール感、洗練された衣装・美術セット、最先端のCG技術、世界的にも人気の俳優が主演であること、など。
一方、「賢い医師生活」は、そのどれも当てはまらず…、その魅力は、一見、わかりにくいかもしれません(笑)
でも、実はこの「すぐにはわかりにくい奥深い面白さ」にこそ、視聴者が熱狂しているとも言えます。
「賢い医師生活」には、くすっと笑えるようなさりげないユーモアや、気が付きにくいネタが沢山散りばめられています。これにどれだけ気がつけるかは観る人次第。
決して、誰が見ても美味しそうなステーキではないものの、噛めば噛むほど味がでるスルメのような魅力があります(笑)
また、イ・ウジョン作家とシンPDは、一見意味の無いようなセリフに深い意味をもたせたり、何気ないシーンの構図やちょっと映り込む小道具に、その後の展開を暗示させるような意味を持たせていることでも有名です。
同じ制作陣の過去の作品でそれが話題になって以降、今や、この台詞・演出の分析・解説こそが視聴者の楽しみの一つになっています。
例えばこんな映り込みにも意味が…!?
もちろん、制作陣は種明かしはしないので、もはや視聴者のたくましい想像力による、妄想な部分(笑)もあるのですが、視聴者それぞれが「自分なりの味わい方で作品を楽しむ」という深いドラマの楽しみ方できるのが「賢い医師生活」の魅力。
また、韓国人でなければわからない小ネタ(過去の流行り物、流行語を織り交ぜるなど)もふんだんに含まれています。
私はこれをブログで解説しているのですが、興味深いのが、これが日本のコアなドラマファンの方にもすごくウケていること。
ソウル在住ブロガー「賢い医師生活」を見終わった方向けに、ネタバレありで作品にちりばめられた小ネタやパロディを解説します!「賢い医師生活」にちりばめられた小ネタの数々今、この記事を読んでいらっしゃる方は、Net[…]
一見すると、意味のわからない台詞や演出は、観る側にとってストレスになりそうなものですが、韓国ドラマや韓国自体にすでに興味を持っている方々にとっては、この「ん?これってどういうこと?」というポイント自体が「もっと深く知りたい!」という興味の対象になっており、そこを理解することで、さらにこのドラマを好きになってしまう、魅力ポイントとなっているのです。
これは、よりディープな視聴者体験と言えるでしょう。
「演技力」だけじゃない俳優のポテンシャルの高さ
韓国ドラマの魅力の一つとして「確かな俳優の演技力」が挙げられますが、「賢い医師生活」では、演技だけにとどまらない俳優たちのポテンシャルの高さを垣間見れることも大きな魅力の一つです。
というのも「賢い医師生活」では、毎回、医者である5人が、趣味のバンド活動をするシーンがあります。
回ごとに、韓国で有名な名曲をバンド演奏するのですが、撮影では「弾くフリ」ではなく、実際に俳優たちが練習を重ねて演奏しています。
しかも、メインギターのチョ・ジョンソク以外は、ほとんどが楽器初心者。ドラマの撮影開始の数ヶ月前からそれぞれがプロの指導の元、練習を重ねたといいますが、その上達ぶりは、指導の先生たちも驚くほど。
加えて、ほとんどがミュージカル出身の俳優たちのため、歌もレベルが高い。
チョ・ジョンソクが歌った「アロハ」は音楽チャートでも1位を記録するほどの大ヒットに
また、本編とは別にバンド練習の過程もYou Tubeチャンネルで公開されていて、忙しい撮影の合間を縫って努力する姿には本当に感動させられます。
こうして、ドラマのキャラクターはもちろん、それを演じる俳優一人ひとりにも感情移入してしまうのです。
★「賢い医師生活」キャストインタビューが満載!
「韓国ドラマの常識」を変え続けるシンPDの取り組み
「賢い医師生活」は、内容はさることながら、韓国ドラマ界を変革してきたシン・ウォンホPDの新しいチャレンジが詰まったという意味でも注目すべき作品です。
韓国ドラマの常識を変えてきたシンPD
シン・ウォンホPDは、元々公共放送KBSでバラエティを担当していましたが、ケーブル局がドラマに力を入れ始めた2011年に現在のtvNに移籍。
初めて手掛けたドラマ「応答せよ1997」が大ヒットを記録して以降、新しい感覚でそれまでのドラマ制作の常識を覆す取り組みを次々と行い、今では最も視聴者から信頼されているドラマPDの1人です。
*『응답하라1994(応答せよ1994)』(tvN/HPより)
例えば、「ドラマには人気俳優が必須」という概念を覆し、まだ無名の俳優を次々とキャスティング。映画や演劇などで知名度はなくても演技力のある俳優を発掘し、ぴったりな配役を与えてその魅力を引き出したのです。
そのため、シンPDのドラマをきっかけにスターになった俳優が数多くいます。
また、キャスティングにあたっては、端役まで必ず全員直接会い、その時点の「俳優のイメージ」よりも、「その俳優自身がどういう人なのか?」をしっかりヒアリングし、キャラクターにマッチするかどうかを見極めるんだそうです。
シンPDのキャスティングは、「キャラクターが俳優そのもの」という場合も多い。
作品後も役者とのつながりが強く、過去作のキャストがカメオ出演するのはファンにはもうおなじみ。
You Tubeチャンネルでは、実際にキャスティングされた俳優たちに一人ひとり会った時の様子も公開されていますが、本当に丁寧に一人ひとりの俳優と向き合っていることがわかります。
こちらは、数も多い助演俳優たちとの初顔合わせを収めたもの。一人ひとりに感謝するPDの熱い思いが伝わってくる感動的な内容でした。
そのような過程を経て、キャスティングされた俳優たちは、皆が口を揃えて「幸せな現場だった」と言います。そして、それがシンPDの作品から、温かさが溢れ出ている理由の一つでもあるでしょう。
視聴者からも俳優たちからも「神」と崇められるほどの存在であるシンPD。あまり自分は表に立ちたがらず、インタビューではシャイな様子ですが、どんな相手にも丁寧に謙虚に接する姿が印象的です。
「週1放送」と「シーズン制」へのチャレンジ
そんなシンPDが「賢い医師生活」で新たに取り組んだのが、「週1放送」と「シーズン制」。
特に「週1放送」は、これまで週2放送が当たり前だった韓国ドラマ界において、大きなチャレンジでした。話数も16〜20話の作品が多い中で、「賢い医師生活」は週1の全12話という形で放送されました。
週1しか放送がないことに対して、最初は、視聴者から不満の声も上がりましたが、結果的にはそれとは関係なく作品は大成功。
ここには、韓国社会全体に起きている労働環境改善の動きと、そして実際にシンPD自身も「今のままのやり方では体が持たない」という危機意識が背景にあったと言います。
しかし、いつもシンPDの思考はシンプルです。
「良い作品であれば、視聴者の皆さんはきっとどのような形でも受け入れてくれるはずだ」という視聴者への信頼
視聴者との深いコミュニケーション
なお、これらの新しい取り組みの過程において、シンPDが常に大事にしているのが視聴者とのコミュニケーションです。
本編以外でも、SNSやYouTubeを効果的に活用して、作品をより楽しんでもらうための追加コンテンツを発信したり、視聴者の声を拾い上げることを大事にしています。
例えば…
→視聴者がオンライン上で、俳優たちのバンド演奏生LIVE&トークを一緒に楽しむという最高のイベントを開催
*コロナでなければ、本当にコンサートをやっていたかもしれない
テレビ放送から、突然の告知で、YouTubeLIVEに何万人もの視聴者がアクセス。演奏はもちろん、一人でテレビを見ていたところから、オンライン上で視聴者がコメントを投稿し俳優が反応するという、視聴者と俳優の一体感が最高のイベントでした!!
シーズン1放送終了から、シーズン2開始までの約1年の間、毎週欠かさず、30分ほどのメイキング・未公開映像をYouTubeで配信
シーズン2制作発表会に先立ち、SNS上で視聴者に聞きたい質問を募集。答えられなかった質問については、別動画で俳優たちが回答し、YouTubeで配信
などなど
こちらは俳優の初顔合わせ、台本リーディングの様子。
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ƒ
まとめ
そして今、韓国ドラマについて、もっと深く知りたい方。
「賢い医師生活」の詳しい作品紹介はこちら
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*画像はtvNからお借りしました