Netflix「ザ・グローリー」撮影秘話・作品メッセージ/脚本家・監督・俳優トークショーレポート

韓国ソウル在住
ブロガーMisa
Netflix「ザ・グローリー」パート2公開に先駆けて行われた、脚本家・監督・俳優出演のトークイベントに参加してきた様子をお伝えしながら、撮影秘話、作品に込められた想いなどを紹介します!

「ザ・グローリー」GVセッション

Netflixオリジナル作品として2022年12月30日にパート1が公開され、世界で大きな話題となった「ザ・グローリー」。
3月10日のパート2の公開に先駆けて、韓国でGuest Visitセッションという、脚本家・監督・俳優出演のトークイベントが開催されました。

これまでこういったイベントは、観客なしもしくは媒体の記者のみの招待が多かったのですが、今回は、作品のファンを中心に会場+オンラインで海外からも参加する形で行われ、私も会場で参加してきました。

トークイベント出演者
 司会:ジェジェ
 第一部:キム・ウンスク作家、アン・ギルホ監督、ソン・ヘギョ(ドンウン役)
 第二部:チョン・ソンイル(ドヨン役)、キム・ヒオラ(サラ役)、チャ・ジュヨン(ヘジョン役)、キム・ゴンウ(ミョンオ役)
実際に、ファンの前でのトークイベントというのは、なかなかない機会のようで、大ベテランのキム・ウンスク作家も「キャリア20年目ですが、こういう場は初めてで緊張します」と話し、やや緊張した空気で始まった第一部。
司会のジェジェが「みなさん、私が”ヨンジン(연진아)”と言ったら、みんなで”私、興奮する(나  신나)”と言って歓迎しましょう〜!」と、ヨンジンの手紙のセリフを活かした粋な盛り上げで、場を和ませました。
ということで、そのイベントの内容から、撮影秘話、作品に込められた想いなど、作品をもっと楽しむための情報を紹介したいと思います。
一部、パート1内容含む/パート2のネタバレなしなので、
パート1まで観て、これからパート2をみる方
パート2まで観終わった方

向けの記事となります。

「ザ・グローリー」撮影秘話

今回、韓国国内でも「ザ・グローリー」が話題になっている理由の一つが演出。

「秘密の森」「ハピネス」「青春の記録」などで知られるアン・ギルホ監督。

作品作りで重要だと考えていたのは、季節の変化を見せたり、人物たちの感情線に合わせた演出をすること。そのために、色彩にはかなり気を使いました。
四季を作品の中に収めるため、寒い冬に夏の服装で撮影したり、その逆のパターンも多く、撮影には大変なことが多かったそうです。
ドンウンの体中にあるやけどの傷は、特殊メイクで毎回かなりの時間がかかり、


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

メイクをする時の負担はもちろん、落とす時も薬を使うので皮膚が荒れてしまったんだとか。

特に撮影に苦労したシーンとしてソン・ヘギョが挙げたのが、ドンウンがヨジョンに自分の傷を見せる6話のラストシーン。

服を脱いだ状態で4〜5時間かけて撮影したというこのシーンのために…

ダイエットを頑張って、3日前からはご飯もほとんど食べずに、前日からは水も控えていました。そんな状態だったので、撮影の前の時点で死にそうでした。

でも、それくらい大変な状態で撮影したからこそ、そのシーンが上手く仕上がったとも言えるかも知れません。

というエピソードを明かしていました。

ソン・ヘギョは別のインタビューでも、この作品のために、主食をこんにゃくご飯に変えながら、17kgも体重を減量したことを自ら明かしており、ソン・ヘギョの「演技変身」と言われたドンウン役は、相当な準備と努力で作り上げられたことがわかります。

ちなみに、この日は、ナチュラルなメイク、トレンチコートのシンプルな衣装が、まだドンウンの余韻が残っているかのような雰囲気を感じて、


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

ソン・ヘギョという俳優のこれまでのイメージが少し変わりました。

一方、第二部で登場した、加害者側を演じた俳優たちのトークでは、印象的なシーンとして、4話の体育館のシーンが話題に。


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

ドンウンと加害者たちが大人になってから初めて再会する重要なこのシーンは、ちょうど一年ほど前、撮影初期の仲良くなり始めた頃の撮影だったとか。

そのため、ヨンジンがドンウンの頬を殴る4話冒頭のシーンでは、あまりの二人の迫真の演技に周りのメンバーは、ほぼ「素のリアクションが出た」と言います。

ちなみに、実はこのシーンは、この後、ドンウンがヨンジンの頬を殴り返すところまで撮影されていたんだそう。

しかし、最終的には、そこまでやると少し強すぎるということで、ヨンジンが殴るところだけを使用。

「俳優の演技がどれも素晴らしくて、全体的にカットされたシーンがほとんどなかった」という今回の作品のなかで、数少ない編集されたカットだったというビハインドを作家が明かしてくれました。

加害者役は、成人役の俳優からオーディションを通じて選んだそうですが、有名な俳優たちも多く参加した中で監督が重視した基準は何と…

「ドラマの中のスラングを、よく表現できるかどうか」「キャラクターに合う眼差し」だったそう(笑)

そのせいなのか、特にこのキム・ヒオラ(サラ役)、チャ・ジュヨン(ヘジョン役)は、実際に見ても、良い意味でドラマのキャラクターから感じた独特な雰囲気がそのまま出ていたのが印象的でした。(もちろん、あんな悪い奴ではないはずですがw)

パート1が終わってから、「生きてるのか?死んでるのか?」という周りからの連絡をたくさん受けたというキム・ゴンウ(笑)

3人の仲の良さそうな冗談交じりのやり取りは、ドラマの中のキャラクターがそのまま出てきたような不思議な感じがしました。

そして、ヨンジンの夫・ドヨン役を演じたチョン・ソンイル。

こちらも、心の内がなかなか読めないドヨン役そのままのような、独特な空気感を持った俳優さん。

ちなみに、キム・ウンスク作家の設定したハ・ドヨンのキャラクターは、一言でいうと「ナイスな◯◯野郎」だそう(←◯◯は韓国語でケーで始まる俗語…)

それが一番現れているのが、4話の雨の日の秘書と会話。助手席のワインをとるために、秘書がドヨンに一瞬傘を持ってくれるように頼むシーンです。

対応は丁寧で一見ナイスに見えますが、主人と使用人の関係において「線を超えるな」というドヨンの冷徹で、尋常とは違う感覚を絶妙に表したシーンで韓国の視聴者の間でも話題になりました。

また、チョン・ソンイル自身が印象に残ったシーンとしては、おそらく視聴者にとっても印象的だった、囲碁の公園のシーンを紹介。


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

実はこれは、ドラマのために作りあげたセット。

台本を読んだ時から、どのように表現するのか気になっていたシーンでしたが、実際のセットを見て「Netflixすごい」と思いました。まさかセットとは思わなかったです。

ちなみに、ロケ地マニアとして補足しておくと…

この場所は、ロケの撮影協力に積極的な仁川市のチョンラ湖公園(인천 청라호수공원)にセットを建てて撮影されましたが、ドラマのヒットを受けて、4月から仁川市がもう一度セットを再現して、一般市民に公開するそうです!(見に行きたいですね!)

「ザ・グローリー」に込められた想い

「ザ・グローリー」の脚本を手掛けたのは、韓国ドラマ界の大御所中の大御所である、キム・ウンスク作家。

「シークレット・ガーデン」「トッケビ」「太陽の末裔」など、主にロマンス作品で大ヒットを飛ばしてきたキム・ウンスク作家が、初めて、ロマンスがメインではない「ジャンルもの」と呼ばれる新ジャンルに挑戦したという意味でも、「ザ・グローリー」は注目されました。

実はこの点が、私もいち視聴者として、パート2を見る前に「期待」でもあり、「不安」でもあった点でした。

これまでの作品で、特に後半で評価が分かれがちだったキム・ウンスク作家の作品。

学校暴力という韓国国内でも注目度の高いテーマを扱って、パート1では注目を集めましたが、パート2では、最終的にロマンス色が強くなりすぎたりはしないか、ファンタジーが得意な作家が、ジャンルものとしての結末をどう仕上げるのか、という点は気になっていました。

しかし、イベント冒頭から「緊張している」と言いながらも

パート1の反応がすごく良いので、だんだん怖くなってきて…「パート2をどう書いたっけ?」と台本を全部見返したんです。
そしたら、本当に怖かった。
めちゃくちゃよく書けてたんです(笑)

と、ユーモアたっぷりに語るキム・ウンスク作家の様子に、その不安は期待に変わりました。

以前、制作発表会にて、「ザ・グローリー」の誕生秘話として、
お母さんは、私が誰かに死ぬほど殴られるのと、死ぬほど誰かを殴るのとでは、どっちが心が痛い?

というキム・ウンスク作家の高2になる娘の質問から着想を得たというエピソードを話していましたが、今回もこの点に言及しながら…

作品を書きながら、この質問の答えを探していましたが、もし娘が死ぬほど殴られてきたとしたら、我が家の場合は解決方法があるんです。
その理由を「加害者たちを、地獄に連れて行くだけのお金があるから」と話しながら、
でも、劇中のドンウンや、世の中のドンウンのような子たちは、そうは行かない。お金のある家に生まれた子でなければ、難しい。


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

だから、この作品でドンウンのような子たちを応援したかった。現実はドラマとは反対だから…ドンウンの復讐が成功するように描きたいと強く思ったんです。

そして、このイベントがオンラインでも中継されていることを意識し、

警察署には、学校暴力の被害者の相談を無料で受けてくれる弁護士もいます。一人で悩まないで助けを求めて下さい。

と全国のドンウンのような子どもたちに向けてもメッセージ。

さらに、「こんなインタビューの機会が、今後はもうないかも知れないから、この話は必ず伝えたいんですが…」と言いながら、このイベント最後のメッセージとして、こんな配慮も忘れませんでした。
全世界の「パク・ヨンジン」さんへ。本当にごめんなさい(笑)
(この作品のせいで)自分の名前の話をするときに、大変かもしれません。
でも、楽しんで作品を見てくれたら、嬉しいです。
終始、手元や声はやや震えて、緊張しながらも、いつも印象的なセリフを生み出すだけのユーモアとセンスが感じられたキム・ウンスク作家。
根底の自信はやはり20年のキャリアからくるものかと思いましたが…
このイベント後、パート2を最後まで観てみて、この作品については特に、作家としても良いものを書き上げたという達成感があったんだろうなと、この時の様子を改めて思い出しました。

「ザ・グローリー」視聴者の深すぎる分析

今回のトークイベントでは、その場に、作品のファンが集っていていた上に、司会のジェジェが、これまで韓国の視聴者の間で話題になっていた点を事前に入念にリサーチした上で進行してくれたので、

私も大好きなジェジェ(一番左)。放送局のPDでありながらタレント的な活動もしており、頭の回転の早い進行には脱帽でした!

通常の記者会見よりも、監督・脚本家・俳優たちも感心するような、ファンならではのディープな視点での質問がやりとりがされたのが印象的でした。

①作家も唸らせた「神」についての分析

パート1の内容について、韓国視聴者の間では、様々な深すぎる分析が飛び交いましたが、その中でも、キム・ウンスク作家が「鳥肌が立った」として挙げていたのが、こんな視聴者のコメント。

この作品は、”神を信じる者”と、”神を信じない者”との戦いだ
これは実際に私がそのように設定して、エンディングまで通じる大きなテーマだったんですが、ある方が的確に指摘してくれていたんです


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

ヨンジンの家は、シャーマニズム。サラの家は、キリスト教。ヘジョンの家は、仏教。
それに対して、ドンウンは神を信じないからこそ、自分の力で彼らに罰を与えようとする。

これは実際に、キム・ウンスク作家がそのような意図で作った設定だそう。

「とても鋭い指摘。私の補助作家になって欲しい(笑)」と絶賛するとともに、

「パート2の最後まで観たら、みなさんも”神は存在する”と思えると思います。私も神を信じています」と話していました。

②ドヨンとドンウンの関係性

パート1で視聴者の間で、話題になったシーンの一つが、4話のドヨンとドンウンの出会いのシーン。

囲碁の集まりの棋院にドンウンが入っていく瞬間、すれ違ったドヨンの後ろの壁には、「불조심(火の用心)」というステッカーが表示されていました。

登場人物の中でも特に大人の雰囲気で、ラブラインが生まれても不思議ではない二人だったがゆえに、これが視聴者の間で「ドヨンのドンウンに対する気持ちが燃え上がるという演出の一つだ!」と話題になったのです。


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート2 3月10日独占配信

これに対しては、アン・ギルホ監督は、

たまたまその場所にあったものでしたが、隠さずにそのまま撮影しました。おかげでとても良い反応を得たようです(笑)

と説明していました。

また、ドヨンを演じたチョン・ソンイルには

「ドンウンを見つめる時、”愛”という感情はあったのか?」

という鋭い質問もその場で投げかけられましたが…


Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1 独占配信中、パート2 3月10日独占配信

”愛”という感情にも色々種類がありますよね。
ある人に対して好奇心が生まれ、待つようになって、会いたくなって。
一緒に居ると、胸が詰まって、緊張して。
そんな瞬間を愛だといえば、愛ともいえますよね。

と、ハ・ドヨンらしい、ナイスな回答がとても印象的でした。

最後に

ということで、Netflix「ザ・グローリー」のトークショーの内容から、脚本家・監督・俳優たちの作品に込めた想いや撮影秘話についてご紹介しました!

実際に会場で観ていて、感じたのがまず、俳優とキャラクターのシンクロ率の高さ。これは過去に大ヒットした他の作品の出演陣を見た時とも、共通する要素です。

さらに、ロマンスが得意なキム・ウンスク作家と、ジャンルもので定評があるアン・ギルホ監督という、一見、得意分野が違う二人の組み合わせがとても上手くいったこと。

結果的に、脚本・演出・キャスティングの組み合わせがとても上手くいった作品だったんだろうなということを肌で感じました。

「ザ・グローリー」自体については、もう少し視聴者の反応などが出てきたタイミングで、改めてレビューしたいと思います。


\Misa書籍発売中/

自分の好みのジャンルがわかる!おすすめ90作品以上を紹介!

関連記事

韓国在住KdramaライターMisa2022年5月21日に初の書籍「韓国ドラマの知りたいこと、ぜんぶ」を発売することになりました!いつも、ブログやSNSを観ていただいている皆さん、ありがとうございます。この度[…]

「愛の不時着」「梨泰院クラス」ほかロケ地を紹介↓

関連記事

韓国在住KdramaライターMisa2022年8月10日に2冊めの書籍「韓ドラTrip!ロケ地巡り完全ガイドVOL.1」を発売することになりました!いつも、ブログやSNSを観ていただいている皆さん、ありがとうござ[…]