韓国の検察・警察の関係は?「秘密の森2」を楽しむ背景知識・登場人物関係図

ソウル在住
ブロガーMisa
「秘密の森シーズン2」を視聴するために、必要な背景知識や登場人物関係図について紹介します。(ドラマのネタバレはありません)

韓国人でも難解⁉「秘密の森 シーズン2」

いよいよ、2020年10月11日から日本でも「秘密の森シーズン2」の配信が始まりました。このドラマは、私にとっても日本語字幕なしで観るには最高難易度のもので、韓国語字幕を見ながら視聴していましたが、韓国人の友人たちも同じく、韓国語字幕で見ていた人が少なくありませんでした。

この理由としては、「秘密の森」の特徴である、大量でスピードの速いセリフもさることながら、シーズン2では、さらに「背景知識の必要さ」や、「登場人物・事件の複雑さ」が加わっていたことが考えられます。

ということで、私も「これは日本語字幕があったとしても補足が必要だろうな~」と思い、今日はこの記事で「秘密の森シーズン2」を観るために助けになるであろう以下2つをご紹介しておきたいと思います。

背景知識の補足:韓国の「検察」「警察」の関係性
登場人物関係図:韓国の番組HPに掲載されたものを翻訳したもの

なお、ドラマ自体の見どころやあらすじは、こちらで紹介しています。

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韓国の「検察」「警察」の持つ権限の違い

韓国の検察が非常に強い権力を持っていることは、文大統領が「検察改革」を掲げているといったニュースなどからも、何となく知られているかもしれません。

韓国の検察の場合、捜査権と起訴権を独占しているという点が特徴として挙げられます。

日本では、刑事事件の捜査権は警察が持っていますが、韓国では、

捜査を開始する権利である「捜査開始権」
捜査の過程で、捜査の内容を指揮することのできる「捜査指揮権」
捜査を終了する権利である「捜査終結権」

のすべてを検察が持っています。

また、日本では警察が持っている「令状請求権」についても、韓国では検察が持っています。

「秘密の森 シーズン2」の中では、警察が逮捕令状を直接請求できないことにより、現場の刑事たちがどのような問題を抱えているのか?について語られるシーンがあります。

日本では、1次捜査を警察が担当し、2次捜査を検察が担当することから、両者は水平な協力関係にありますが、韓国では検察が捜査と起訴の権利を持ち、捜査指揮も行えるため、両者は上下関係にあると言えます。

ドラマを観る際は、

検察と警察の間にかなりの上下関係があること
警察側は、何としてもこのタイミングで捜査権を獲得したい
検察側は、何十年も続いた歴史の中で、自分の代で捜査権を警察に渡すなんてありえない
ただし、世の中的には検察の不祥事も続き「捜査権調整を検討すべきでは?」という雰囲気になっている

といったことを頭に入れて視聴すると良いと思います。

なお、このように、捜査と起訴に関する権限を検察が独占していることにより、検察は財閥や政治家との癒着が生まれやすく、この点は「秘密の森」以外でも様々なドラマで描かれています。

検察 VS 警察の歴史

捜査権調整の歴史

今回の「秘密の森シーズン2」では、この検察が持っている「捜査権」を、警察にも渡すように調整する「捜査権調整」というテーマが物語の中心となっています。
検察が捜査権を持つ今の構造は、1962年に作られたものですが、韓国では1999年頃、金大中政権の時代から捜査権調整というテーマが議論されてきたと言います。その後、盧武鉉大統領の時代も議論されましたが、検察が大反対し失敗。

そして、検察改革を重大テーマと掲げた文在寅政権では、2020年1月に改正された法律案が国会を通過した、という非常にタイムリーなテーマです。

2020.01.14 KBS WORLD RADIO記事より引用)
これらの改正案は、検事による捜査指揮権を廃止し、警察に1次捜査の終結権を与えるほか、検察による直接捜査の範囲が制限するなど、検察の権限を縮減させる内容となっています。
改正案をめぐって最大の争点となっていたのは警察に対する検察の捜査指揮権の廃止で、1954年に刑事訴訟法が制定されてから66年ぶりの廃止となりました。
従来の刑事訴訟法は検事を捜査権の主体として、司法警察員は検事の指揮を受ける補助として規定していましたが、改正案では検察と警察の関係は「指揮」から「協力」へと変わります。

つまり、簡単に言うと現実の世界では、検察が捜査を指揮する権利を廃止するなど、検察に集中していた権利の一部を警察に移管することで、両社は「協力関係」となるような法律改正がなされたわけです。(ドラマの中では、どこまで描かれるかはお楽しみ。)

この法案が通過した時期には、おそらく脚本はすべて書きあげられていた段階と予想しますが、作品のHPの「企画意図」にも、

このドラマを書いている2019年にも、多くの改革案が依然として議論されている。
どちらに結論が出るかわからないが、私たちはとどまらない目や耳になることができる。

と書かれてあるように、作家は、この歴史が深く、韓国の社会について重要なテーマを正面から扱い、韓国視聴者に「傍観者であるな。参加者であれ」と伝えたかったのでしょう。

法制司法委員会(法司委)

実際がそうであったように、警察と検察の関係が変わるためには、法律の改正が必要です。法律改正にあたって重要な役割となる「法制司法員会(法司委)」もドラマの中で登場するので説明しておきましょう。

国会常任委員会の一つ。法律の改正を行う際、国会の本会議に提出される前にここで審議される。今回の捜査権調整についても、法律の改正を行う場合、ここを通過することになるため、この委員会を無事に通過できるかどうがとても重要。委員長が検察出身の場合、検察寄りの判断が下される可能性が高くなる。

今回ウ・テハ率いる法制団のメンバーキム・サヒョンも、過去にこの法司委に派遣されていたという設定。しかし、この検事の派遣制度は、国会議員との癒着関係の窓口になるという指摘を受け制度自体が廃止されています。

左がキム・サヒョン

途中で必ず必要になる「登場人物関係図」

そして、背景知識ともう一つ、視聴にあたって必要になるのが「登場人物関係図」。

私は普段、ドラマを観るときこういった人物関係図はほとんど見ないタイプなのですが、今回の「秘密の森シーズン2」にあたっては、以下の理由で関係図を何度も確認しながら見ました。

登場人物自体が多く「ん?その人誰だったっけ…?」となる
登場人物の所属組織や、組織の関係性がわからなくなる
しかし、Netflixではこの関係図が提供されていないため、日本の視聴者の皆さん向けに、韓国のtvNの番組HPで提供されているものをお借りして、翻訳を付けました。
*人や組織の名前は、日本語化されるときに微妙に違うことが多いのですが、韓国語の読みや意味から日本語化しました。今は、私のように「普段、関係図見ない派」の方も、おそらく、中盤になるにつれて、この図が必要な理由がわかってくると思います(笑)

*追記:「大検察庁」⇒「最高検察庁」と訳されてるようです。

シーズン1も念のため。(★の人は、シーズン2にも登場しています)

ハンジョグループ関連補足

シーズン1最後でハンジョはどうなったんだっけ?
シーズン2で登場しているイ・ヨンジェ会長の父、イ・ユンボムは、ヨンジェの婿イ・チャンジュンによって不正行為が明らかにされ、服役をすることになります。(また、同時に腹違いの兄イ・ソンジェも服役)

イ・チャンジュン、イ・ヨンジェ夫婦(シーズン1)

ユンボムは、娘ヨンジェが「チャンジュンの動きを知らなかったはずはない=娘は自分を裏切った」という想いから、シーズン2では、イ・ソンジェという腹違いの息子を立てて、ヨンジェに対抗しているわけです。

なお、シーズン1の西部地検時代から、ハンジョグループの不正を追及していたカン・ウォンチョル。シーズン1の最終話では、ユンボムに取り調べを行うシーンもありました。

シーズン2で、東部地検に移動してからもハンジョの不正を追っており、ハンジョとは対立関係にあります。

ソンムン日報社長:キム・ビョンヒョン
ハンジョの大株主であり、イ・ヨンジェの元婚約者。意外と純粋なところがあり、ヨンジェのライバル、ソンジェと関わりながらもヨンジェに対する未練がある。(登場人物紹介より)

チョ・スンウ&ペ・ドゥナ主演「秘密の森シーズン1」の台本集①

検察・警察内の階級について

警察内の階級

ヨジンは、シーズン2の時点は「警監」という中堅の警察幹部ポジション。シーズン1の終わりで、捜査に貢献した功績が評価されて「警衛」から1階級特進しています。所属はシーズン1と同じ龍山署ですが、警察庁に派遣勤務中。

また、相棒?のチャン・ゴンはヨジンより一つ下のポジションで、同じくシーズン1の最後で昇進し、今は「警衛」になっています。

なお、チャン・ゴンと同じく12年目の「警衛」なのがチーム長。シーズン1であった不祥事のために昇進できずに、ついに階級的にはヨジンに先を越されてしまっているのです。

シーズン1とは微妙に異なるこの3人の関係性も、シーズン2の見どころの一つですね。

そして、龍山署のような各エリアの警察署のさらに上にある警察庁。そのの情報部長がチェ・ビッ。

階級は警務官という警察組織の上から4番目のポジション。そして、今回の捜査権調整を行う革新団の団長です。また、そこに参加している捜査局長は、チェ・ビッより一つ上の治安官という階級です。

一番左が捜査局長

検察内の階級

検察の出世コースは、

平検事⇒副部長検事⇒部長検事⇒次長検事⇒検事長

という形。
カン・ウォンチョルは、シーズン1当時西部地検の「部長検事」でしたが、シーズン2では東部地検の「検事長」まで特進しています。

シーズン2のキーマン、ウ・テハは部長検事です。

そして、出世など興味のないシモクは、平検事10年目(笑)

ソドンジェは、シーズン1・2共に副部長検事です。ソ・ドンジェは、なかなか部長に昇進できずに昇進に不安を抱えています。

また部長に昇進できたとしても、部長は毎年勤務地が変わるため、妻子と離れて暮らさなければならなくなります。そのため、最高検察庁のポジションを狙っており、ウ・テハに取り入ろうとしているわけです。

ちなみに、字幕にはありませんが、ウ・テハがシモクを呼ぶ時、「ファンプロ」と言ってるの聞こえますよね?どうしてファン検事ではなく”プロ”をつけて呼ぶのかと気になって調べてみたら、prosecutor(英語で検察官)のプロなんだそうです。

その他登場人物

*以下、まだ見てない方には、軽いネタバレになるので、視聴を始めた方向けです。

以下、人物相関図にありませんが、名前がよく出てきて???となる人物たちの名前と説明を記載しておきます。

まだ見始めてない方はここまでで…!(byシモク)

ナム議員:法制司法委員長
元・東豆川署長(議政府警察署・課長):甥が議政府地方警察のキム・スハン
キム・フジョン:統営事故生存者
パク・グァンス弁護士:前・大田(デジョン)地検検事長で病死

まとめ

ということで、「秘密の森 シーズン2」を見るために必要な背景知識や、登場人物関係図についてご紹介しました。
観れば観るほど、この情報が必要な理由がわかってくると思います(笑)活用していただければ嬉しいです。

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Misa執筆記事

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